泣きたくなるとき

美しいものを見聞きすると

泣きたいような気分になる

美が確かにあるということ

美を感じられる自分であるということ

そういう奇跡に心の奥が震わされて

その震えになんにもできなくなる

ただ泣きたい気分になる


何も持っていないと思っていたわたしが

たった一つ確実に所有しているもの

美しさを解する心

なんだそれがあったら十分じゃないか

他になんにも必要ない


今ひそかに企む

自前で美を作り出せないものかと

その美が自分のものではない別の魂を震わせて

震えた魂が新たな美を作り出そうとする

美を求める魂の振動の連鎖

やがて世界を震わせるにいたる

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