踏みつけた靴のかかと

ふと後ろを振り向くと

見慣れない少女がひとり

じっとわたしを見ていた

怪しんで見返すと

「忘れちゃったの?」

怒っているように、寂しそうに

近づこうとしたわたしから

彼女はターンして駆け出して

べたん

地面に派手に転んだ

「ちゃんと靴を履いていないからよ」

そんな言葉がふっと出て

どこかで聞いたことのある響きに

いつのことだったろうなんて考えていると

いらだたしげに靴を脱いだ彼女

裸足になって

よーいどん

ぐんぐんとまるで空を飛ぶように

その姿があまりにも

力強くて

まぶしくて

目を落とせば

靴の中にキレイにおさまったわたしの足

裸足になる勇気はもうなくて

走ることだって困難だ

彼女みたいに美しくなることなんてできないけれど

「忘れちゃったの?」

その声をまだ聞くことはできる

わたしは彼女に背を向けて

脱げない靴で一歩一歩

ただそれだけでいいんだって

自分に言い聞かせて歩き出す

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