むかし見た夢に張り合って

幼いころ

眠りにつくときに話してもらったお話

それは小さな胸を躍らせた

わたしの足はまだ短くて頼りなく

どこにも行くことはできなかったけれど

心に夢を描くことはできた


大人になって

寝物語をしてあげてよい年になって

膨らんだ胸には何がおさまったのか

わたしの足は随分と伸びて力強く

どこにでも行くことができるようになったけれど

消え去った夢と共に毎日を生きている


かつて夢見る少女だったわたしは

夜にしか夢を見ない大人になった

少女のとき見た夢の続きを見ようと思って

どんな夢を見ていたのか思い出せず

もう一度もう一度と望んでも

そもそもそれはただ一度しか起こらない


だから

新しい夢を描こう

彼女に負けないような夢を

大ぶりの筆で描かれた原色の夢に張り合って

繊細な筆で淡色の夢を

より美しく描こう

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