第15話 青春とは、何気ない日常のなかにあるものだって

 翌日。


 放課後の空き教室。


 机の上にはノートとテキストが広げられていた。


 昨日に引きづづき、学校で出された課題を姫川さんと一緒に、片付けているところだ。


 校内で最も名の知られた女子、姫川理沙は今日もカワイイな♥


 背はそれほど高くないが、胸はムダにデカい。


 制服の冬服を着ていてもハッキリとわかるほどだ。


「踏み切りと少女って絵になるよな。

 踏み切りと少女をモチーフにした漫画を読んで、俺は痛感したわけだよ。

 青春とは、何気ない日常のなかにあるものだって。

 ダンボールを使って土手すべりしてる女の子って、カワイイよな。

 鞄のショールダーストラップを肩に掛けた巨乳美少女って、めっちゃくっちゃエロいよな。

 特に斜め掛けは最高だな。

 あれこそ、まさに日常的な光景から生み出された奇跡の産物だよな」


 そんなことを思いながらも俺は、パイスラッシュについて熱く語る。


 すると姫川さんは、ムカついてるみたいに片方の眉をツリ上げて睨んできた。


「そうかしら? 私は断然、田舎の古びた『バス停』で佇む文学少女の方が、絵になると思うわぁ。

 お手製のブックカバーをつけた本を片手に読む姿に、勝るものはないわぁ」


 窓から射し込む眩い西日に目を細めつつ、俺は肩をすくめた。

 

「姫川さんの言い分もわからなくもないけどさあ。

 田舎のバス停って『エッチな』イメージが強いんだよな。

 雨で濡れた美少女が登場するエッチな本って多いよな」


「エロっと言えば『鉛筆や消しゴムを拾うフリをして』スカートの中を覗く行為は、犯罪行為です。

 また靴に『鏡』をつけて、スカートの中を覗く行為も、もちろん犯罪です。

 それから『ペットボトルロケット』を使って、スカートの中を覗く行為も犯罪です」


 今までにないほどその瞳に好奇心を宿し、どこか挑発的だった。


「今どきのそんな古典的なことをするバカが存在するのか?

 スマホで盗撮の方するほうが比較的簡単で、安全性も高いと思うのは俺だけか?」


 俺は頭の後ろで手を組んで、椅子の背もたれに体重を預ける。


「龍一は全然わかっていないわ、変質者の思考というモノをさあ。

 ドクターフィッシュが流行ったことからも分かると、思うんだけど、スカートから覗く『生足』って言うのは、男性を惹きつける魅力があるのよぉ。

 スマホを使った盗撮は、一般的すぎてつまらないから却下よぉ」


 小さな唇は意志の強さを感じさせるように強く結ばれ、熱く燃える炎のように頬を赤く染め、彼女は怒りを表していた。


「なら床をピカピカに磨いて、スカートの中を覗くというアイディアなら、どうだ。

 これなら『生のパンツ』見放題だろう」


「そうねぇ、私ならもう一捻り加えて『土足厳禁』するわねぇ。

 そうしたら、生足も見れてお得でしょ」


 彼女らしい傍若無人な物言いだった。

 彼女は『生足』好きだった。


「それにやっぱり『お約束』って大切だと思うわけよ。

 夕日の射す幻想的な踊り場で好きな女性とばったり、しかも換気用の窓から入る風でスカートがめくれるシュチュエーションって萌えるよわねぇ」

 

 金色の髪を神経質にいじりながら、イラつきを隠せない声で吐き捨て。


 さらに言葉を続ける。


「あとは黒板消しの掃除中で無防備になっているところを狙ってのスカートめくりや、ブラのホック外しも鉄板よねぇ。

 ミニスカートを履いた可愛らしい女の子が四つん這いになって、雑巾掛けしている姿なんかも萌えるわよねぇ」 


「掃除って、意外と『パンチラ』の宝庫だよな。

 ダクトの中を狭い場所を掃除する時にパンチライベントが発生することが多いし、ハシゴを使って高いところ掃除する時もパンチライベントが発生するもんな」


「言われてみると確かにそうね。まさに『あるあるネタ』ねぇ。

 まあ、雨の日に発生するパンチライベントも大好きよ。

 水溜りに映り込んだスカートの中とかねぇ」


「もしかしてイラストレーター志望って、変態的な思考の持ち主が多いのかな」


「どうかしら? 私の周りには多いけど『統計調査』はしたことがないから、わからないわねぇ。

 でも小説家志望も、結構な変わり者が多いって聞くわよ」


「確かに多いな。

 否定できないぐらいな多いな。

 クリエイティブな仕事を志しているヒト多くは、心に闇を抱えているだな。

 反社会的な人間の巣窟じゃないか」


「まっとうな人間は、淘汰されていく『運命』なのかもしれないわねぇ。

 生き残るのは変人・奇人のバケモノだけなのかもしれないわねぇ。

 それだけ厳しい世界なんだわ。

 私たちが目指している世界わぁ……」


「なるほどな……めっちゃくっちゃイヤな世界だな。

 ところで、話は変わるんだけどさ。

 ゴム性の服って、なんであんなにも『エロい』だろうな。

 別に俺は『ラバーフェチ』じゃないんだけど。

 その魅力に取り憑かれちゃってさあ」


「それは私も思っていたことなのよね。

 ラバースーツの特徴と言えば『空気や水を通さない』性質とゴム独特の伸縮性により肌に密着し。適度な『拘束感』と『圧迫感』を与えてくれるところよね。

 また、ゴムの越しの愛撫というのも格別キモチがいいのよね。

 下着越しで愛撫されるのとは、また違って……うふぅ……」


「少し想像しただけで『鼻血』が出そうになった。

 ヤバイな。それはかなりヤバイな。

 ますます興味が湧いてきた。

 ラバースーツって、外見だけでも、かなりエロいのに、そんな話を聞かされたらますます欲しくなっちゃったよ」


「やっぱり龍一って、ただの変態よね。

 念のために言っておくけど。

 私は『絶対に着ない』わよ」


 きっぱりと拒絶の意思を示すと、高圧的な目を向けて迫ってくるが、ここで退くという選択肢はない。


「ええ!? なんでだよ。興味はあるんだろう」


「だってぇ……は、恥ずかしいだもん……バカっ!?」


 下を向いたまま何やらボソボソと呟いているため、顔がよく見えないけど。


 その恥らっている姿が、また可愛らしくて。


「はぁ~。勿体ないな」


「わかったわよ。一回だけなら、着てあげてもイイわよ」


「マジか? やった!?」


「本当に調子がいいだから」


++++++++++++++++++++++++


「着替えたわよ。これで満足かしら?」


 ピッと人差しを立てて、理沙は偉そう大きく膨らんだ胸を張った。


 体の線がハッキリと出るところが、露出度の高い服装とは『違う』エロさを醸し出しているな。


 ラバースーツは、予想以上にエロい服だった。


 一瞬で自分の顔が真っ赤に染まっていくのが分かった。


 鼻息が荒くなり、心臓もバクバクしっぱなしで、なんかもういろいろとヤバイ、ヤバ過ぎるだろう。


「やっぱり姫川さんは、何を着ても似合うな。

 ビューティフルで、エロ可愛くて、爪先から首元まで全身を包んでいる姿は、艶めかしくて、色気が溢れ出しているな」


「もう龍一たら、私のことを褒め殺すつもりなの。

 でもやっぱり、ジロジロ見られるのは、あわわ……」


 姫川さんは恥ずかしそうに胸元をさっと隠した。


「相変わらず姫川さんは、照れ屋さんだな」


「バカ、バカ、バカっ!?」


 相変わらずキレのあるツッコミだぜ。


 軽やかな体重移動。


 腕の動きは緩やかながら決して隙のない「型」。


 正拳突きって、俺じゃなかったら、確実に死人が出てたよ。


 情け容赦ない無慈悲な攻撃だぜ。


「龍一が恥ずかしいことばかり、言うからでしょ」


 これ以上ないくらいに顔を赤くして、上目づかいで見詰めてきた。

 

「龍一は、本当にデリカシーが足りないのよ。バカっ!?

 不用意な態度や一言うで女の子ってぇ、すんごくぅ傷つく生き物なのよぉ」


 そして羞恥を匂わす言葉を、忘れないところも流石だ。


「姫川さんは、恥ずかしがり屋さんだもんな」


 今回の拷問は『激辛料理を無理やり食べさせられる』という名の我慢大会だった。


 暖房をガンガンつけ室温は35℃を越え、もう暑くてカラダ中から汗が噴き出し、さらに激辛料理まで食べさせられて……もういろいろと大変だったな。


 女の子が口にするべきではない『単語』のオンパレードだったし……れいのごとく、俺の汗の匂いを嗅ぎながら美麗なイラストを描いてくれたよ。


 姫川さんが描く金髪美少女は、ストライクゾーンど真ん中で、お金を払ってでも見る価値がある素晴らしいイラストなんだよな。 


 ボキャブラリー が少なすぎて、この感動を上手く伝えることができないのが、残念で仕方がない。


 そして恋愛プレイは、今だに続いていた。


 

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