第13話 なぜそこまで『ラノベ作家』にこだわるのか
『理沙視点』
自室。
私はスマホを握りしめたままベッドの上を転がっていた。
せっかく連絡先を交換したんだから『メール』を送ってみたいんだけど、何を書けばいいのか? 分からなくて悩んでいるわぁ。
【夜分遅くに……】
この文章には全然トキメキがないわぁ。可愛らしさがないわぁ。女の子らしさがないわぁ。
何よりもこんなの全然!? 私らしくないよねぇ。
恋も初期段階でしっかり相手の心を繋ぎとめておくことが大切だと、聞いたことがあるわぁ。
絶対にヘンな文章は、送れないわぁ。
そんなことを思いから全文消去すると、疑問に思っていたことを書くことにした。
【あんな現場を目撃しちゃって、ビックリしたわよね、ごめんなさい。
これからもみんなの期待通りに、生きて……いかなきゃ……いけないのかなって……思ったら――――なんだか? 疲れちゃって。
言い訳にしか、聞こえないかもしれないけど。
これだけは言わせて、やっぱりアナタは私の思った通りの優しい人だったわ。
色々と私のことを気にかけてくれて、ありがとう】
覚悟を決めて送信ボタンを押すと、すぐに返事が来た。
【目撃したのが俺でラッキーだったよ。
姫川さんはやっぱり『もってるヒト』だね。
羨ましいな、その強運を分けてほしいくらいだよ。
それに俺は……姫川さんが……思っているほどの『善人』じゃないよ】
【これでもわたしは疑り深い方で、人を見る目がには自信があります。
私に近づいてくる男性の方は、私利私欲に目がくらんだ『亡者』のような人たちでした。
でもアナタは違いました。
私のことを『エロい』で見ているのが、ハッキリとわかるイヤらしい視線を向けてきました。
それがたまらなく嬉しかったのです】
【もしかしたら姫川って『天然』なのかな。
ちょっと変わっているところがあるよねえ。
個性的っていうか、想像していたのと全然違って、正直ビックリしたよ。
でも『素』の姫川さんも好きだよ】
上気した顔を枕に埋め、ジタバタと両脚をばたつかせる。
一旦、キモチを落ち着かせてから送信ボタンを押した。
【ありがとう。やっぱりアナタは優しいヒトだわ。私にはわかるもの】
たくさんメールでやり取りをした後、私は就寝についた。
私は彼の笑顔が好きだ。
そして彼の笑顔を見る方法は、至極単純だ。
金髪美少女を描けばいい。
そうすれば、彼の笑顔を間近でたくさん見ることができるわぁ。
芸術のことよくわからないけど。
私は彼の笑顔が見たいから、この学校に入学したのよぉ。
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『龍一視点』
休日の朝、窓から射し込む日の光で目が覚める。
同時に、昨日のことを思い出す――――。
まさか、姫川さんと親しくなれるなんて思ってもいなかった。
いろいろあって普通に受け止めていたけど……冷静になると『スゴイ』展開だぞ、これ。
姫川さんの期待に応えるためにも、本気で『ラノベ作家』を目指すことに決めた。
なぜそこまで『ラノベ作家』にこだわるのか、それを語るには、幼い頃の不思議な体験を話さなければならない。
あれは知人の木村に無理やり『不死身ファンタジスタ大感謝祭』に連れて日のことだあ。
近くの公園法から、歌声が聞こえていた。
とても澄んだ綺麗な歌声で思わず聞きいってしまった。
心震えるこの歌声に興味を持った、俺は声の主を捜してみることにした。
そして世にも奇妙な少女と出会った。
たぶんアレが初恋だったのかもしれない。
少女の言ってることは何一つ理解できなかったが……何故か? とても大切なことを言ってる気がした。
まるで月のような神秘的な瞳が、そのしぐざが訴えてくる、心をざわつかせる。
少女の身体的特徴は、アニメでしか見たことがないほど、鮮やかな黄金の髪に、一点の曇りも無い白磁の肌。
その肌よりさらに白い『ワンピース』に、白い靴。
そして黒い日傘を差していた。
まるでお人形のような可憐な少女だった。
ワンピースはとても質素なもので、彼女には不釣り合いだと思った。
ファンタジー映画なんかに出てくる『エルフの王女』を思わせるくらいの神々しさがあったから――――
例え、言葉が通じなくても、仲良くなるのにさほど時間はかからなかった。
言葉を交わさないでもわかりあえてる気がした。
なぜ、そんな気がしたのか? 傍で笑っていてくれたから、ずっと一緒に居てくれたから、いつもいつも、公園にいた。
約束もしていないに毎日毎日俺が来るのを待っていてくれた、それがとても嬉しかった。
彼女は俺の心に踏み込んできていた。
学校にも家にも居場所のない俺は、彼女と居るときだけ、安らげた。
彼女も同じ気持ちだと思っていた。
でも、そんなのは俺の『勘違い』だった。
一枚の紙切れを残して姿を消した。
汚い字で「さようなら」と書いてあった。
名前も知らない少女を捜す手段も無く、たっだ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
一体彼女は、何者だったのか?
何を伝えたかったのか、わからないままである。
ただ一つだけ分かっていることがある。
日本の『アニメ』や『漫画』などの『オタク文化』に、とても興味を持っていたということだ。
だから俺は……ラノベ作家を目指すことにしたのだ。
また彼女に会えるかもしれないという期待があった。
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