第15話 俺の素直な気持ち
雄ちゃんはジッと前を見てなにか考えてた。
その
「七海は自分の気持ちでちゃんと考えてから、自分の言葉で返事をまずソイツに返しなよ。俺の気持ちはそれから」
「うん、そうだよね」
なんか雄ちゃんってこういうこと言うんだなあと感心していた。
名木さんに誠実な気持ちを込めてちゃんと断ろう。名木さんには申し訳ないけれど、今は雄ちゃんと向き合ってみたい。
雄ちゃんはそれからは関係ない話をしだした。
新しく来た中途採用の人が今度一緒にバーベキューをしたいと言って来てメンバー集めをしなくちゃならないとか。
愛車のVOXYがそろそろ車検だなあとか。
席が空くまでしばらく待っていたけど、雄ちゃんが話を次から次へと楽しそうに話してくれる。
私の仕事の話にも、ちゃんと耳を傾けて聞いてくれる。
待ち時間も雄ちゃんといると全然退屈しなかった。
やがて二人用のテーブル席に案内されてると雄ちゃんはちょっと困ったような顔で笑って「ごめん。お揃いのジャージで良かった? ペアルック着たラブラブカップル風かも」と言った。
(ペアルック! ラブラブカップル〜!? ひゃあっ、雄ちゃんと恋人同士?)
どうしよう。
私、まだ自分の気持ちが分からない。
「だ、大丈夫だよ。私、ちょっと舞い上がってて……。自分がね、ジャージを着てるの忘れてた〜」
たしかにラーメン屋さんとはいえお洒落な造りだからジャージで来る感じではないかもしれないが、そんなに恥ずかしくはなかったの。
雄ちゃんに借りたジャージだから特別な気がした。
「ふふっ。七海は舞い上がってんの? 次来る時はお互いジャージじゃない格好で来ようか?」
「うん」
カフェのような茶色い可愛い制服の店員さんが来て、お水とメニューを持って来てくれた。
メニューを開きながら正面に座る雄ちゃんは顔を隠しながらボソッと言った。
「魅力があるよ」
「んっ?」
「七海は魅力があるよ。一緒にいたいなと思ってる。それが俺の素直な気持ち」
私は恥ずかしくなってメニューを開いて少し顔をうずめた。
雄ちゃんの言葉に私の心のなかがギュッ! となった。
ドキンとした。
どこか止まっていた心の部分が動き出して、ゆっくりと走り出した気がした。
私の胸が高鳴り始めている。
笑顔が素敵――、雄ちゃんが笑うと優しいお日様みたいだ。ポカポカあったかくなる。
明るくて柔らかい気持ちになるんだ。
雄ちゃんの存在が、私のなかでどんどん大きくなっていくようだった。
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