第14話 待ってる間に
ここのラーメン屋さん、すごく人気みたい。
お昼前なのに満席で混んでいたので、雄ちゃんと私は店内の木のベンチで順番待ちをすることになる。
順番を待ってるのって、私たちを入れて五組ほど居るかなあ。
「けっこう待つかな。七海は待つの長くても大丈夫?」
「うん、大丈夫。平気だよ」
「良かった。そこに座ろうか」
私は促されて少し
ちょこっとだけ離れてあんまりくっつかないように。
でもわずかに身じろぐだけで雄ちゃんの体温が伝わってきそう。
「なに? 七海は緊張してんの? 俺に」
すかさず雄ちゃんがからかうように、しかもニンマリしながら言ってきたので私は頬が熱くなった。
雄ちゃんはずっといたずらな笑いを浮かべ、ニヤニヤしながらこちらを見る。
雄ちゃんにまさかこんな気持ちになるとは。不覚の致すところと申しますか、なんと言いますか。
自分でも思いもよらない展開にドギマギしちゃう。
「それっていい反応だよね。俺のこと意識してくれてるってことでしょ?」
「えっ? ああ……、う〜んっと」
まあ、そうなりますかね……。
かあっと頬が熱くなる。
いつもみたいに気軽に雄ちゃんと話せない。
まるで付き合いたてか、慣れない人との初デートの時みたい。恥ずかしがりやさんな感じに緊張でいっぱいになる。
ずっとただの男友達だった雄ちゃんとキスしたら、私の気持ちはこんなんなってしまった。
ドキドキ、ドキドキしちゃってる!
真っ直ぐにじいっと私の目を見つめてくる雄ちゃんからの視線が、優しくて甘さを含んでて恥ずかしい。
熱っぽいっていうの? かな。
私は認めたくなかったが、改めて横に座る雄ちゃんの顔を見ているとそうだろうなと思ってる。
「意識してる? 私」
「プッ。顔が強張ってるぞ」
雄ちゃんは吹き出していた。
そしてまた私の頬を優しくつまんだ。
私は急に雄ちゃんに触られていることが恥ずかしくなっていた。
「で、メールにはなんて返すの?」
「えっ? メール? ああ。……そうだよね」
そっか目の前の雄ちゃんとのことばかり考えていたから、まだ名木さんへのメールの返信まで頭が回っていなかった。ごめんなさい、名木さん。
雄ちゃんはジッと私の心を見透かすんじゃないかというほど見つめてきていた。
「なんにしても早めに返信してあげなよ。俺がその人の立場だったら反応がないのは悲しいな。七海はわざと焦らしているわけじゃないって分かってっけど」
もっともだと、そうだよなと思った。
へんに期待させても申し訳ないもんね。ラーメンを食べたら、心を落ち着けて名木さんにしっかり考えてちゃんと心を込めてメールを返そう。
私は手元の使い慣れた自分のハンドバッグをいじりながら、雄ちゃんの方は見れずに言ってみた。
「雄ちゃんはどうしたらいいと思う? なんて返せばいいかなと思って」
「ああ。そうだな……。って、あのさあ……もしかして七海は俺の気持ちが知りたいの?」
そうか。私は雄ちゃんがどう思ってるのか確認したいのかも。
ヤキモチとか……
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