第10話〜助言者〜
あぁ....。最低だ、私。
きっとカケル君は私のことを思って寄り添ってくれたのに....。そんな“優しさ”を素直に受け取れめられなかった。
家に帰ってママに今日あったことを話して、心にある程度の落ち着きがついたらメールでカケル君に謝ったけど、まだ返信はない....。嫌われちゃったかな。
はぁ、これじゃあ私はどこへ行ってもうまくいかないな。
意気消沈しきって冷えた肌には熱すぎる涙が頬を伝っていた。
そうやって一人、ベッドの中でシクシク泣いていると、メールがきた。
「カケル君!?」
っと、思ったらセキヤくんだった。
『そうだね笑 でさ、俺のトークに“ポエム”綴らない?聞きますよ....』
そうだった。今日のことがあまりにも酷過ぎて、意思表示の感じでメールのプロフィールの一言コメントに
『あー....。もう嫌なことがありすぎてポエムいっぱい書ける』
って書き込んだんだ私。
カケル君除いて、セキヤくんだけが反応してくれている....。ってそこ気にする所じゃないか....。
いやでも、セキヤくんってこんなに積極的な“男子”だったっけ....。心底、驚いていて、涙も引っ込んでしまった。
やだ私、セキヤくんを異性って意識してしまってる....。別にそんなんじゃないし。
『綴っちゃっていいですか....。ちょっと....。』
『全然、大丈夫だから。綴って』
ありがとう、セキヤくん。綴らせてもらいますね。
『なんていうか、学校でいざこざがありすぎてそのせいで全てが上手くいかなくて、私がメンヘラなのが一番悪いんだけど、それで大切な人を嫌な気分にさせちゃったり、迷惑ばかりかけて、もうほんと地獄』
思い返せば、ストーカー女のことをメンヘラとか私言ってたけど、そういう私もメンヘラ気質があるかもしれない。
ハイダさんとか、カケル君に依存し過ぎてる気がする。特に、ハイダさんには、いっぱい迷惑、かけてしまった....。
学校で落ち込んだ時、ハイダさんに会いに行ったらいなかった時があって、そんなどうしようもないことをハイダさんに突き立てて、怒って八つ当たりしてしまったことがあった。それ考えれば、私、依存し過ぎだなあ....。
依存もそうだし、今日みたいなことが、ハイダさんともいっぱいあった。ほんとうに辛い。
『八つ当たりみたいな感じになったり、急に悲しくなったり、泣いちゃったりして、ほんとにそろそろ愛想がつかされそう。どれもこれも学校っていうか、異常な女2人のせい』
独裁者と、ストーカー女。
『ほんとに人間怖いし、将来のことを聞かれても何も答えられないし私はただ、大事な人たちと今を楽しみたいだけなのに、どうしてこんな目に遭うのかなって....』
はぁ、長文、引かれたかな....。
『くそメンヘラ長文ごめん....』
『そんなに、自分を卑下しないでね。俺は何も悪くないと思うし。その2人って、なんかちょっかいかけてくるってこと?』
『そんな感じだね。一人はただのストーカーみたいな子で、学校ではもちろん、メールブロックしてまで避けているのにまだしつこい。もう一人はイキってる女で私たちを見下してるような感じで影でヒソヒソされたり』
『周囲の人はそれを把握してる?』
世の中、把握して解決してくれるような善人ばかりなら、どれほど楽だったか。
『把握はしてるんだけど、私たちの方に「大人の対応をしなさい」「我慢して」
みたいなことばかり言ってきて、ストーカー女には何回か指導が入ってるけど、改善されなくて』
『我慢できないから訴えてるのにな。』
『うん』
『君を守る友達とか近くにいるの?』
『ありがたいことにいるんだけど、依存しがちになってしまってて....。その人にも大変なこととか、辛いことあるのに私の分まで背負わせてしまってる感じが嫌でやめたいんだけど、やめられなくて自己嫌悪的な』
実際、カケル君はイジメられていたもそうだけど、家庭内環境がどうやら悪いらしい。いつも笑顔でクラスのみんなからは人気があるけど、それ以上にもっと規模が大きい黒い部分を隠し持っていた。
それを感じてしまうと、ものすごく、悲しくなる。
カケル君の裂けた口からそれを聞かされた日は、私はいい家庭に生まれたことに感謝しなきゃなって強く思った日になった。
数分、セキヤくんの返信を待つ。
妙に長かった沈黙が、通知音でブツッと断たれた。
『お互い、共有すればいいと思う。その、辛いことをね』
私は最近、セキヤくんには驚かされる。
あんなにモジモジしてて、ただ相手の思ったことに乗っかるだけの人だったセキヤくんが、はっきり自分の意見を言うだなんて....。
そりゃ三年くらいは経ってるから、変わらない方がおかしいのかな....。
“ほとんど変わってなかった”は間違いだったかな。
そして、セキヤくんからのメールは静かな熱烈さを纏っている気がした。ただの文字だというのに。
『助け合えば、お互い楽じゃない?』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます