第8話

変わりそうにない現状に、どんどん過ぎて行く時間。でも、長く感じる。夏は終わったけど、今年はまだ9月の下旬だ。


極力、私は変わろうとはしている。嫌なら嫌って言えるし、好きならそれらしく動く。


スマホが鳴った。セキヤくんからのメールだ。


『今日の寮飯で豆乳が出てきて学校の美意識の高さに笑った』


そっか、前にセキヤくんのお母さんに会った時、セキヤくんは地元から離れた学校に通ってるって話を聞いた。それも高校じゃなくて高専。やっぱりセキヤくんは頭良いんだな。


『生徒たちを美化しようとしている』

『ニキビ削減本当らしいからなぁ』

『生徒たちのニキビ根絶が目的なのかも』

『そりゃあいい笑笑』

『生徒第一でいい学校じゃないですか』


もっともな私の心の声だ。


『どこの学校もそうじゃない?』


....。まあ、普通に暮らしてきた人には分かりっこないよね。


『いや、学校なんて大抵はくそ』


おまけに具体的な意思表示のためにスタンプも送っといた。


『そんなもんなのかな〜。どうしてそう思うんだい?』

『小学校から高校まで全部くそだったので....,』

『今もその、悩みの種っていうか、そんな風なのが消えてないってこと?』


今も?


今もっていう言い方が引っかかるな。セキヤくんは私が不登校だったことに意識的だったのかな....。


『うーん、まあそんな感じですかね。メンタルがゲキよわなんで....』


気分が悪くなってきた....。寝よう。明日は土曜日だし学校もないし、部活のマネージャーの仕事もない。



よし、昨日は早く寝たから朝しっかり起きられた。せっかくだから、好きなお絵描きで時間を過ごそう。


相変わらず、セキヤくんは律儀に返信をくれる。そういえば連絡が来て一ヶ月は経ったかな。あれから毎日、トークしてる。セキヤくんは私と同じくらい既読つくのが遅いから、付き合いやすい相手ではある。


『そうなのか。俺でいいなら聞くよ〜。なんかごめんね』

『セキヤくんが謝る事じゃないから大丈夫!!』


っと。まあ、相談相手は既にいるんだけど。今日の私は絵描きに没頭するのだ。



もう夕方か....。本当に好きな時間だけはとてつもなく早く流れる。


セキヤくんからのメールも来ている。


『とりあえず、味方は多い方が良いよね』

『そうだね』


味方、ね。


今日はこれ以上、セキヤくんからのメールは来なかった。

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