第7話 これからのこと 妹Side


姉が大変な目にあってる中、妹は……


「このき、のぼりやすいのー」


大きな桜の木に登って遊んでいた。

上へと登れば、綺麗な羽を持った鳥の巣があった。


「とりさんのこどもなのー!かわいいー!」


元気である。とっっても元気である。

その種類の他にもたくさんの鳥の巣があった。

ここは鳥たちの住処となっているようだ。

鳥に夢中で気づかなかったが、いつの間にか結構な高さまで登っていた。

落ちたらまず助からないだろう。

まだ死にたくはない。姉ともあまり危険なこと、危ないと言われるようなことはしないと約束している。

今、側に姉はいないが約束を破って後々怒られるのは嫌なので、

あまり危なくないと思われるところまで降りることにする。


「とりさん、またねなのー」


とお別れの挨拶をして、下から姿が確認できる程度の高さまで降りる。

前よりも運動能力は上がっているみたいだ。神様のおかげだろうか?


「おにぃさん、おねぇさんはまだおやすみなのー」


木の枝から下を覗けばまだ冒険者さんたちは、すやすやと眠っていた。


一つ感違いしてはいけない。


冒険者さんたちが起きるのが遅いのではない。理麻が起きるのが早いのだ。

なぜなら、まだ辺りは薄暗くようやく夜が明けた時間。

普通の子供ならまだ夢の中の時間だ。

大人でもこの時間に起きている人はめったにいないだろう。

この時間に起きているのは見張り番の人か、徹夜明けの人たちぐらいのものだ。

起きていなくて当たり前なのである。

むしろ、なんで理麻は起きているのか知りたいぐらいである。

昨夜早く寝たと言ってもそれほど早いわけじゃない。


「おねぇちゃん、まだかなぁ」


どこかにいるだろう、姉に向かって呟く。


「まってるから、はやくきてねおねぇちゃん」


………その頃、姉はビックベア二匹を相手に戦闘…しかけて、なんだか怪しい人たちに助けてもらうというなんだかよく分からない命の危機に直面していたのであった。

そんなことは露知らず。理麻のところは平和であった。





――――――――――……


「んん…」


「あ、おきたのー!」


「ふぁ!?」


「おはようなのー」


にこにことした可愛らしい幼女が目の前にいた。なぜだろうと考えて、昨日幼女を拾ったことを思い出した。

それと、この幼女が少し、いやかなり変であることも。


慌てて、パーティーのメンバーを叩き起こす。


「いったいなぁ…もう少し優しく起こしてくれても良くない?リツ」


幼馴染であるリーに文句を言われたが、そんなものは無視だ。



――――――――――……



周りを見ているとさっき叩き起こされていた男の冒険者さんが朝ご飯の準備をしているようなので近づいていく。


「なにか、てつだうことあるー?なの」


「おっ!手伝ってくれるの?じゃあコレお願いしようかな」


笑顔で言われたので、笑顔でうなずく。


渡されたのは緑の細長い草。

見た目と匂いはネギみたい。


「コレを千切ってって鍋に入れてくれる?」


と材料を渡され、鍋の前に連れて行かれる。


「これなんてざいりょうなのー?」


「ん?これ?これはリーキだよ」


おぉ、ネギだった。

お姉ちゃんに教えてもらったけど確か、ネギって英語でリークだったよね?多分…


一人で納得しながら作業する。

隣の説明してくれた人は鼻歌混じりに作業してた。


「よし!あとは煮込めば完成だよ。手伝ってくれてありがとね!」


コクンとうなずく。


「あ、そうだ…匂いついちゃったでしょ?待ってねクリーン」


その瞬間、自分の体がキラキラと光に包まれる。匂いは取れていた。


「え?な、なにこれまほー?」


びっくりしていると、かけてくれたお兄さんもびっくりしてた。


「生活魔法だよ?知らない?」


「うん、はじめてしったの。ありがとうなのー!」


一応お礼を伝えて、あぁ生活魔法か。と納得する。

ラノベとかで、生活魔法って便利なものあったなぁと今更ながら思い出す。

攻撃魔法とかしか頭になかった。


二十分くらいして、朝ご飯が完成した。

二人の女の冒険者さんの間でご飯を食べた。


「いたーきます!」


食べ終わって、そのまま「話がある」とリーダーの人に言われた。


「まずは自己紹介だな」


静かに話を聞く。


「俺らは、ゴールドランクのパーティーで、パーティー名は「両翼」…俺はそのリーダーのリヴィだ」


綺麗な黒髪に鮮やかな蒼の瞳。目つきはちょっと怖いけど、イケメンに入ると思う。


「僕はリンネ。このパーティーの料理担当だね。スープ美味しかった?」


とっても美味しかったことを伝えると、とても喜んでくれた。


「そっか、よかった。よろしくね」


焦げ茶のふわふわした柔らかそうな髪に色素の薄い綺麗な茶色の瞳。これまたイケメン。


「私はスイ。よろしくね」


薄い紫の髪に、ピンクと紫を混ぜ合わせたような色の瞳ですごくスタイルがいい。

落ち着いた雰囲気の綺麗なお姉さん。


「私はリツ。リー…リンネとは幼馴染なの。よろしくね」


最後の人は、金髪に柔らかい赤の瞳。

笑顔が素敵なお姉さん。明るい性格みたい。


みんなに会ったらお姉ちゃんがすごく喜びそうだね!


「よろしくなのー」


両翼のパーティーのみなさんは、自分の名前を聞こうとはしなかった。


「それでなんだが…俺たちはここに、ある依頼で来ているんだ。複数のパーティーで手分けして素材を集める依頼だ」


「それで聞きたいんだけど、どうしてここにいるのか分かる?もしくは近くの街に親がいるかとか」


リヴィさんの言葉を引き継いでリンネさんが聞いてきた。

ので、知ってることを答える。

ために、考える。

のだが、よく、分からない。

転生のことは言っちゃだめな気がする。

ここに姉がいれば、もっと楽だったのに。


「よく、わからないの」


うん。事実だから許して?


そう答えると、両翼の人たち全員が難しい顔をした。


「じゃあ、とりあえず今後のことは街についてから考えるとして…」


「私たちはある素材を調達して、今日を含めて四日後に他のパーティーと合流しないといけないの」


「それまでは俺たちと行動してもらうことになるんだが、ここまで理解できたか?」


コクンとうなずいて理解したことを示す。

そして、教えてほしいことを聞く。


「スキルとか、なまえとかってどうやったらわかるー?」


またしてもびっくりされた。


「ステータスって言ってみろ」


「ステータス?」


お、サ行は苦手で上手く喋れないのにステータスはちゃんと言えた。

そんなことを考えてたら、目の前に半透明の板が出てきた。


「なにか出てきたか?」


「でてきたのー」


「それがステータスボードだ」


なるほど、名前はティアって言うみたいだね。

その下の名字っぽいのはハテナになってるし、なんならほとんどハテナだけど。


「なまえティアっていうのー!いまわかったのー」


名前は分かったので、自己紹介をする。

大分遅いけど。


「そう、可愛い名前ね。よろしくティア」


「はいなのー!」


みんなと挨拶をする。


「それでだけど。素材は採れても採れなくても四日後には合流するからね。街に帰るのがそれ以上遅れることはないよ」


補足としてリツさんが教えてくれた。

それにしても足手まといにしかならないだろう子供を街まで連れて行ってくれるとは、どれだけ良い人たちなのだろう。

…優しい。


「ありがとなのー!」


「ちょっと待って、この子の「お姉さん」のことを忘れてない?どうするの?」


「それも街に行ってから考えよう。素材を探しているときに見つけられればいいが、そう簡単にはいかないだろう?」


「………そうね。そう、しましょうか」


「ありがとなの」


そこまで考えてくれるなんて、本当に優しい人たちだと思った。


話し合いが終わり、出発のための準備を手伝う。あっという間に終わった。


「それじゃ出発するか」


スイさんと手を繋いでみんなについていくのだった。

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