第5話 ファミリー


『キュイ!』


「ん…」


ボーっとしながら、子猫の鳴き声で起きる。


「おはよう」


ふわっと笑いかけると、頬ずりをしてくれた。


「あはは、くすぐったいよ」


朝からもふもふを堪能して、#無限収納__インベントリ__#の中を確認する。

うん、まだご飯はたくさんあるみたいだね。

神様に言いたいことは色々あるけど、これには感謝だよ。


「朝ご飯にしようか」


『キュイ!』


入っていた果実の一つを半分にし半分を子猫ちゃんが食べやすいように小さくカットする。


「はい、どうぞ」


渡せば、もぐもぐと口を動かして食べた。


(可愛すぎる…もっと色々食べさせたい!)


食べてる姿を見ながら手早く自分も食事を済ませ、昨日と同じ要領で水魔法での洗顔を済まし口を濯ぐ。


「ふぅ」


ふと、子猫ちゃんを見れば手に浮かべたままだった水球をじっと見ていた。


「お前も水浴びしたい?」


聞けばこくんと可愛らしくうなずくので思わず微笑んでしまう。


( 可愛い )


水球を両手で引き伸ばす感覚で右手から左手にかけての川を作る。

イメージとしては、#練飴__ねりあめ__#を引き伸ばすイメージだ。

こういう魔法の使い方は初めてだったのか、酷く驚いていた。


(驚いた顔すら可愛い…)


しかし、水で身体を綺麗にしたかったのかすぐに顔やら手やらを水にそっと漬かした。


『キュイ!』


(ありがとうかな?)


「どういたしまして。じゃあもう少ししたら出発しようか」


そう告げると日課のストレッチをする。

そうしていると、いつの間にか子猫も真似して身体を動かしていた。

癒やされる。

何も言わず、もふもふを堪能する。

その間、猫ちゃんはされるがままだった。


「よし、行こう」


子猫ちゃんが肩に乗ったのを確認して、身体強化で走り出す。

途中で進行方向に現れたモンスター、逃げれない状況のものだけサクサク倒して進む。

しばらくして子猫ちゃんがテシテシと肩を叩いた。


「もう近くまで来てるの?」


『キュイ!』


それなら、と身体強化を解いて歩いて向かう。

歩いて数十分すると、子猫ちゃんがそんなに大きな声が出るのか、と驚くほどの声で鳴いた。

それに反応して、鳴き声とともに同じくらいの大きさの子猫ちゃんがわらわらとたくさん集まってきた。


「良かったね、戻って来れて」


救出した子猫ちゃんを仲間のもとへ置き微笑みかけ、立ち去ろうとすると猫ちゃんファミリーに囲まれる。

子猫ちゃんは『キュイ!キュイ!』とワンピースの裾を咥えて引っ張ってくる。


「ど、どうしたの?」


困惑していると、子猫ちゃんがテシテシと地面を叩いた。


「?座れってこと?」


確認しながら座ると、一匹の猫ちゃんが何かの果物を持ってきてくれた。

かと思えば、次々と猫ちゃんたちがフルーツを持ってきてくれて、私の前にフルーツの山が出来る。


「わぁ!これくれるの?食べても…いいのかな?」


ずいずいと猫ちゃんがフルーツを私に押しつけてくるので「いただきます」と口に運ぶ。


「ん!?これ、形違うけど胡桃だ!美味しい!」


試しに食べたのは、丸い#楕円__だえん__#のそこそこ厚みのある木の実みたいなもの。

他にも色とりどり、色々な形の果物、木の実が山を成している。


「こんなにたくさん、美味しいものをありがとう」


微笑んで子猫ちゃんファミリーにお礼を伝えると、次々とこれも食べろとばかりに手の上に果実を乗っけられる。


「あはは、ありがとう。でもこんなに一気に食べれないよ?」


そう言うと、少しだけしゅんとした表情をした。

……可愛い。


「これはなんだろ?……ん!?これ、いちごだ!」


子猫ちゃんファミリーが持ってきてくれた果実や木の実はどれもとても美味しかった。


「ありがとう。今までこんなにたくさんの果実食べなかったから、とっても嬉しい。みんな優しいね」


笑顔でお礼を言うと、これまたびっくりしたのか子猫ちゃんたちが話し合いを始める。

話し合いが終わったと思えば数匹の子猫ちゃんがどこかへ走っていった。

少しして戻ってくると、これまた果実、木の実を目の前に置いていった。


「これは?更に食べ物増えたよ?」


こんなにたくさん食べたことない発言に驚いたのだろうか?

元々多かった食べ物が更に増えた。

これも食べろとさっきより強く勧めてくる。


「ふふっ、ありがとう。でもこんなに食べれないから、みんなで食べよう?ね?」


一人だけ食事してるのも寂しいし、第一みんなで食べた方が美味しい。

楽しく食事をしていると、空が暗くなっていることに気づく。


「もう、真っ暗になっちゃった…」


ボソ、と口に出すと子猫ちゃんがクイクイと袖を引っ張る。

連れて行かれた先は一本の木。


「あ!今日はここで寝ろってこと?」


子猫ちゃんに問うとコクコクとうなずいてくれる。


「ありがとう」


他の子猫ちゃんたちも休むらしくみんな手を振ってどこかへ移動していく。

口を濯いで、休もうと木にジャンプして移動すると、子猫ちゃんも一緒についてきた。


「一緒に寝てくれるの?ありがとう」


子猫ちゃんは昨日と同じように私の太ももの上で丸まって一緒に寝てくれた。


「おやすみ、子猫ちゃん」


子猫ちゃんに挨拶をして自分も目を閉じる。


今日もまたよく眠れていい夢が見れそうと眠りについた。





・・・・・・・・・・・・



テシテシ、


「んー?」


柔らかいものに頬を叩かれて目が覚める。

目の前にはドアップの子猫ちゃん。


「おはよ」


ボーっとしながらも挨拶を返す。

そういえば昨日は子猫ちゃんファミリーの住処にある木の上で寝たんだっけ。

と回らない頭で考えながら、顔を洗うべく水魔法を発動させる。

子猫ちゃんもやりたそうに見えたのでこの前と同じようにしてあげる。

頭が覚醒したところで、ストっと木の上から下りた。


いつの間にか子猫ちゃんファミリーも集合していたようで、昨日ほどではないものの果物、木の実の小山が出来ていた。


「今日もありがとう。みんなで朝ご飯にしようか」


子猫ちゃんたちと「いただきます」をして朝ご飯を食べ始める。

もらってばかりなのは悪いなぁと思い、#無限収納__インベントリ__#から果実を出そうとする。

…出そうとしたら猫ちゃんが怒ったように止めてきた。


(え?あげちゃダメってこと?)


首をかしげ、じっと猫ちゃんを見てると私の意図を理解したのか身振り手振りで答えてくれた。

うん、言おうとしてることはなんとなく分かった。

果実をしまい直し、猫ちゃんファミリーが撮って来てくれたフルーツや木の実をお腹いっぱい食べる。


「みんなありがとう!お腹いっぱいになったよ、美味しかったけど全部は食べ切れなかったの…ごめんなさい」


食べ終わると「ごちそうさま」をして、集めて来てくれた猫ちゃんたちに全部食べ切れなかったことを謝罪する。

猫ちゃんたちは「気にしないでー」と言わんばかりに擦り寄ってきてくれた。

可愛い…

猫ちゃんたちの優しさにもふもふを堪能していると、猫ちゃんがテシテシと背中を叩いてきた。

見れば、残ったフルーツた木の実の小山の前で手をかざすポーズ?をしている。


「#無限収納__インベントリ__#にしまえってこと?」


確認をすれば、コクコクと可愛らしくうなずいてくれる。けれど、猫ちゃんたちの大事な食事だろうし…と躊躇われる。

本当にいいの?と念を押すように聞けば、怒ったように地面をテシテシと叩いて「早くやれ」と催促してくる。


「分かった」


手をかざして、フルーツや木の実を#無限収納__インベントリ__#にしまう。

猫ちゃんは大変ご満足だった。


猫ちゃんファミリーから少し離れて、ストレッチを始める。

私の隣で猫ちゃんもストレッチをし始めると、他の猫ちゃんたちも間隔を開けながら列になって同じ動作を真似していた。


もふもふたちのストレッチは大変可愛らしい。

今日もストレッチをしながら癒やされてストレッチを終了する。


一息ついたところで、考える。

ここにこのままいても、猫ちゃんファミリーのご迷惑になるだろうし、何より申し訳ない。

ここでの生活は居心地がいいけど、私は妹を探しに行かないといけない。

となると、確実にここから離れる必要がある。

ので、少し寂しいがここを離れることにする。


「みんな本当にありがとう。集めてくれた木の実とフルーツすごく美味しかった。みんなと会えたのも嬉しかった。また会えたらいいね、元気でね!」


猫ちゃんには個別に挨拶しようとするが、肝心の猫ちゃんは何食わぬ顔で私の肩の上に登り、笑顔で猫ちゃんファミリーに手を振っている。


「え?せっかくみんなと会えたのにいいの?」


確認すると、「いいのー」みたいなふわふわした雰囲気を出して、答えを返される。


「そっか…ありがと」


猫ちゃんがいいのならいいんだろう。そう自分を納得させて、猫ちゃんを肩に乗せたまま出発する。


「みんなまたね!」


最後に大きく手を振ってお別れをした。

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