第4話 子猫


森の中です。

歩いても歩いても森です。

もう暗くなるというのに妹は見つかりません。


それにしても疲れたよ。

何がって、体力ではなく気力が。


体力は幼女の身体からは想像できないくらいの体力で、体力はむしろ余裕。


ウルフとの戦闘で思った以上に精神力が持っていかれたらしい。

というより、戦闘から時間が経って精神的に疲れを感じる。


異世界って、案外辛いものがあるね。

全然、ファンタジーじゃないよ。

いや、ファンタジーなんだけどね…


妹は見つからないので、ここで夜を越すことになる。


さっきみたいにモンスターに襲われたくないけれども、もう疲れ果ててしまっていたので比較的安全そうな木の近くに丸まって横になる。


「おや、すみぃ……」




―――――……


辺りも明るくなり、ようやく目覚める。


「……ふぁ?」


……森。

ココは森の中…

夜にモンスターに襲われるのは嫌だけど、疲れ果てて木の近くで寝たんだった。

それだけ思い出すとストレッチを始めた。

また、転ぶのはいたいから嫌です。


いっちに、さんしー

ごーろく、しちはち


うん、身体がポカポカしてきた。

これで少しは動きやすくなったのではないだろうか。


うーん、まずは妹を見つけないといけないよね。

多分近くにいるでしょ?多分……


これからの行動の確認が終わったその時、近くで何かが威嚇する鳴き声が聞こえた。

気配遮断を使い、警戒しながらその場所に向かう。

うん、チート能力超便利!

見ると、ゴブリンが小動物を虐めていた。

手毬のように投げて遊んでいる。


「何あれ…酷すぎでしょ」


怒りでふるふるしていると、殺気が漏れていたのかゴブリンがこっちに気づいた。

何かをギャーギャー叫んでいるが、全く持って怖くない。叫んでる内容は大方「何だあの子供!俺らに殺気をぶつけてきたぞ!」あたりだろうか?


問答無用で、風魔法をお見舞いする。

子猫に似た可愛い小動物を掴んでいた腕を切り落とす。

切り落とされたことでゴブリンが悲鳴を上げたからか、近くにいたらしいゴブリンのお仲間が出てきた。

やられた仲間を見て激怒状態だ。

怒ってるのはこっちだっての。

子猫ちゃんを救出するべく身体強化で突っ込む。

それを見たゴブリンお仲間が子猫ちゃんを掴もうとしたから、どちらも風魔法を空気砲みたいに放って吹っ飛ばす。

救出した子猫ちゃんは傷だらけでかなり弱っていた。

ポケットにそっと入れる。


「ちょっと、ここにいてね」


弱っていて辛いだろうにキュウと小さく返事をしてくれた。

さて、


「君らはどうしてやろうか?」


吹っ飛ばされていたゴブリンの片方がさっきまでとは違う空気を纏っていた。

かと思えば、顔の側を何かが通り過ぎる。

後ろにあった木に穴が空いていた。


「へぇ、魔法使うんだ」


それなら容赦とか手加減とかいらないよね?

もとよりするつもりもなかったけど。

妹が生き物好きだから、あんまり虐殺みたいなのはしたくなかったんだよ。けど、これなら心置きなく#殺れる__やれる__#よね?


「許さないよ?死を持って償うといい。でも血なまぐさいのは嫌いだから…」


一番苦しむ方法で殺してあげるね?

と、ゴブリンの頭に水魔法を纏わせ溺死させる。


ゴブリンはしばらくバタバタと苦しんだ後、あっけなくパタリと倒れて死んだ。

その死体をこれまでもやっていたように手をかざして消すと、ポケットの中の子猫が無事か確認する。


最初より弱っていて虫の息だが、生きてはいる。


「早く手当してあげないと…」


とりあえず、手当をするのと身体を洗ってあげたいので、比較的安全であろうさっきまでいた場所に戻る。


「ヒール」


回復魔法で出血を止める。少しだけ血の気が戻ったことを確認して他に傷がないことを確認する。土がついてかわいそうだったので、風魔法で払ってあげる。

手で触ると傷つけそうで怖かったんですよ。

呼吸はだいぶ普通に戻ってきていたので、なにか食べさせようとするが、そういえば食べるものがないことに気づく。

…………神様なにか#無限収納__インベントリ__#の中に入れてくれてるかしら?

ということで#無限収納__インベントリ__#を調べる。


「んー、あ!これなら食べれそうだね」


#無限収納__インベントリ__#から果実を取り出し、ナイフで小さくカットして口の前に差し出す。


「食べれる?…無理にでも食べて?」


子猫は困惑した顔をしていたが、匂いをすんすんと嗅ぐとパクッと食べてくれた。

食べたのを確認して、更に何欠片か食べさせる。

食べさせ終わる頃には、顔色も良くなっていた。


「良かった、大分元気になったみたいだね」


ほっとしていると、起き上がって頬ずりしてくれた。


(な、何この可愛い生き物!! )


「っ、かーわいい!」


子猫を優しく抱き上げ、毛並みをもふもふする。

子猫も気持ちいいようで、手にすりすりしてきた。

しばらくもふもふを堪能して、理解しているかは分からないが子猫に尋ねる。


「お前はどこから来たの?お家に返してあげるね」


そう言うと、嬉しそうにキュウ!と鳴いた。


「じゃあ家族も心配してるだろうから今日中に出発しようか。出かける準備するからちょっと待ってて」


「送り届けたら、妹を探さないと。その後で街を探そう。森がずっと続くなんてことないだろうし…」


今は多分お昼すぎくらい。


「身体強化で走れば今までより効率よく進めそうだね」


『キュイ!』


「ふふっ、お前は私の言葉が分かるみたいだね」


肩に乗った子猫を見て微笑む。


「お前の家はどこら辺なの?」


と、聞けばこっちだと方向を示す。

走りながら途中で進行方向は合ってるのか確認しながら走る。


進行方向に現れたモンスターのみ、逃げれない状況な場合だけを倒しながら、走り続ける。

どれほど走っただろうか?

途中休憩をはさみながら、子猫ちゃんに方向を確認するが、こっちだよと方向を指すのみ。


「大分進んできたけど、お前の家はここからかなり遠いの?」


もう夕方の時刻だ。

暗くなれば周りが見えなくなるので進めない。

そろそろ休む場所を探さないと行けないだろう。


「今日はこれ以上進めないから、休むための太い枝を歩きながら探したいんだけど、それでもいい?」


昨日は地面で寝てしまったが、木の上が遥かに安全な気がするのだ。

モンスターのうじゃうじゃいる森の中で安全も何もないようなきもするが。


確認を取ると、「それならこっちだよ」とばかりに方向を示される。


「こっち?」


『キュイ!』


指示通りにしばらく進むと、凄く年代を感じる大きな木があった。

おそらく、全長は50メートル以上。

木の周りは開けていた。

一番上を見上げるも、首が痛くなりそうなので断念する。


「子猫ちゃん、これ、私流石に登れないかなぁ」


近くに渡るのに良さそうな木もない。

子猫に問いかけると、木の近くによって行って木の近くにある少し背の低い木までジャンプしてその勢いをそのままにもう一度大きな木の方へジャンプして枝に着地する。


「あぁ、なるほど。二段ジャンプってことね」


できるかな?と思ったが、大丈夫と言わんばかりにじっと見ているのでやってみる。

何回か失敗したが、コツが掴めた気がする。


「次は出来そう」


タンっとジャンプ。


「出来た!」


見守ってくれていた子猫ちゃんがすりすりとよってきてくれた。


「ふふっありがと。お前のおかげだよ」


気づけば、周りはもうすっかり日が暮れていた。

枝の上で子猫ちゃんと果実を分けて食べる。

水魔法で小さい水球を出して口を濯ぐ。


「それじゃあ、そろそろ寝ようか」


枝に座り幹に寄りかかって寝る体制になる。子猫ちゃんは私の太ももの上に丸まっていた。


子猫ちゃんの体温を感じながら眠りにつく。

子猫ちゃんがいることで、いつもより暖かくすんなり眠りにつく。


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