第2話 異世界転生。
そして気がつくと…
「…ここどこ?」
見渡す限り木。 森…だろうか?
記憶はある。
ここに神様が転生させてくれたんだろう。
まず落ち着こうと深呼吸。
すぅーはぁー
すぅーはぁー
うん。清々しい森の香り。落ち着くなぁ。
ってそんなこと言ってる場合じゃない。
「それで、妹はどこ?」
どうしてこんな所にいるのかは分からないけれど、記憶にある神様は妹と一緒にどこかへ送り出してくれた筈だ。
それがこの場所なのかは分からない。
しかし妹が側にいないのは可笑しい。
「…どこに、いるの?」
見渡す限り、周りは木。
地面は草や土。所々に小枝も落ちてる。
背丈の高めの草にツルの塊みたいなのもある。
それにしたって、木が高い。
どれくらいあるんだろう…
20メートルくらいはあるのかも。
薄暗くはあるけど、昼と夜の区別は付きそう。
夜は真っ暗で何も見えなくなりそうだけど。
こんな場所にいる意味も、隣にいない妹も全てが分からないことだらけだけど、とりあえず妹を探すために歩き出す。
一歩踏み出した途端、転んだ。
「いたい…」
身体を起こし、その場に座り込む。
そして衝撃的な事実に気付いた。
「…なんでちっちゃくなってるの?」
どう見てもモミジのような小さな手。
小さい足。身長もチビっ子サイズ。
着ているものも身に覚えのないもの。
膝丈のワンピースにショートブーツ。
こんなに小さくしてとは言ってないです、
神様。
再び歩き出そうとして…
また転んだ。
「…いたい…動きにくい」
なんと言うか、思うように身体が動かせない。まずはこの身体に慣れないといけないらしい。このままでは妹を探すどころか何メートルか歩くのさえ大変そうだ。
「…大怪我しそう」
この身体に慣れるため簡単なストレッチをすることにした。
自分の身体を把握するのと身体を動かす目的には最適だろう。
なんとなく動きがスムーズになったところで終わりにし、
深呼吸をする。
歩くくらいなら問題ないだろう。
まだ、複雑な動きは難しいだろうが。
「……出発、する」
しばらく歩いても妹どころか人の気配さえしない。
「ここ…近くに人、住んでるのかな」
行けども行けども森。
木漏れ日は優しく温かく、気味の悪い森とかではなさそう。
それは良かった。けど……
「流石にこれは辛いよね」
いくら異世界ものの本やRPGが好きだと言っても、本当にそこで生活したかったかと言われれば、そんなこと恐れ入る。
培った情報があるから、そこまで酷いことにはならないと思うけど……そう信じたい。
幼女になって妹を探しに森を散策なんて願ってない。
大体、こんな森の中に人がいるのだろうか。
誰もいなかったら、ここで死んじゃうなぁ。
転生してまですぐに死んじゃうのは嫌だなぁ。
そこまで考えて、考えるのをやめた。
今こんなことを考えてもどうにもならない。
迷子になるのは嫌だしそれに困るので木に印をつけながら歩けそうな道を選んで進む。
どこか開けた場所に出ないかなと考えていると…
――ガサガサガサッ
「…え」
音の方へ目を向ければ…
自分の身長より明らかに数倍は大きいサイズの虫がいた。
黒い身体に鋭い爪…カマ、かもしれないが。
攻撃されたら確実に死ぬ。
というか…
「…気持ち悪い」
虫がダメな上に、こんな幼女の姿じゃ戦えないどころか逃げることさえままならない。無理無理無理、と思うのも関係なしに目の前にいる虫は
ギリギリ、ギャーギャー鳴いていた。
しばらく硬直状態が続いたあと、今まで鳴いていただけだった虫が襲いかかってきた。
思わず、逃げる。
反射的に逃げる。
今まで足が動かなかったのが嘘のような、
全力疾走。
「……あれ?」
さっきまでしていた鳴き声もしない。
恐る恐る振り返ると、いつの間にか振り切っていたようです。
「…よかった。まだ死にたくないもんね」
正直、関わりたくない。
小説とかだと、異世界転生者はかっこよく剣とか、魔法とか使ってチート並みにモンスターとか魔物を瞬殺するけどね。
RPGだとモンスターとか魔物倒すと、核とか素材以外は消えちゃうけど、この世界はどうなんだろう?
倒してもいないのにそんなことを考える辺りずいぶんと楽観的だなぁと自分に呆れる。
消えないとなるとアンデットになったりして危険だから回収するか土に埋めるとか火で燃やすとかするのがベターだって書いてあったのを思い出した。
「でも、今の私には関係ないよね…」
そういえば、神様に特殊スキルとして
生きたままのモンスターとかも入れられるのかな?
実験してみたいなぁと思いながら、また歩き出す。
と、ここで自分もチート並みの魔法が使えることを思い出す。
今度、モンスターに出会ったら使ってみようか。
「……それより妹が危ないよねぇ」
ブツブツと呟きながらも木に印をつけ歩く。
早く見つけないと襲われてしまっているかもしれない。
――― ウガァァァ!
「…今度は何」
またもやガサガサ音と獣の鳴き声がどんどんと近づいて来る。
こんなにもすぐに違うモンスターに遭遇するとは誰が思うだろうか。
もしかしたら、さっきの逃げてきたモンスターかもしれないなぁ、なんて頭の片隅で考えながら。
「…勘弁して」
と思うのだった。
いくらなんでもこういうのは怖い。
逃げたいのにさっきのように足がすくんで動けない。
「こんな恐怖の再現はいらないよ…」
現れたのは大きい一メートルくらいの野犬?らしきものが三匹。
その後ろにリーダーらしき更に大きいのが
一匹。
「これ、レッドウルフとかだったら笑う」
変に冷静と混乱がごちゃまぜになったまま
対峙する。しかしどうしろというのだろう。
こんなに多い数倒せるわけがない。
「どっちみち逃げれないし…夢ならやってみる?…」
魔法が使えるのなら、もしかするともしかするかもしれない。
いや、使えるはずなんだけど。
本当に使えるのかは疑わしいものである。
しかし死にたくないので、覚悟を決め敵を見据える。
「き、切り裂け、ウィンド」
ゴォーと空気が鳴り三匹の首が飛んだ。
いけるかもしれない……
「おぉ…」
しかし、そう上手く行く筈もなく…
「え、避けるの?」
殺すのはあまりしたくないが……
殺らなきゃ殺られる。
勝てば生きる、負ければ死ぬ。
戦わなければ勝てない。
「切り裂け、ウィンド」
半ばヤケになって撃ちまくる。
流石にやりすぎたようで周囲は土煙が舞いコホコホと若干むせた。
「わー、すごいグローい」
どうしよう、と思ったが
思った通り、残骸はなかったもののように綺麗に消えていった。
しかし血の匂いが濃い。
気持ち悪くなりそうだ。
「…ダメ元でやる」
地面に散乱したちが蒸発するようなそんな感じのイメージ…
「ラーニグル」
次の瞬間、血の跡は跡形もなく消えていた。
誰もここで戦闘があったなど気づかないだろう。
「よかった」
安全を考えて、ここから早く離れることにする。
しかし血の散乱はいただけない。
別に血が嫌なわけじゃないけれど匂いはキツイのでやめてほしい。
「…凄い、魔法使えた」
魔法が使えることは知っていたが、まさか本当に使えるとは思っていなかった。
魔物との戦闘はもうやりたくないが、魔法はもっと使ってみたい。
そんなことよりも。
「……すごく、疲れた」
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