転生姉妹は異世界で
L.
第1話 神様
ここどこ?
気が付けば一面の花畑。
「おねぇちゃんここどこー?」
「どこ、だろうね」
周りを見渡せば、少し行ったところに人影。
「おねぇちゃんあれなにー?」
妹も気が付いたみたいだ。
と、本当にあれは何なんだろう?
「見てみようか」
「うん!」
……人が倒れていた。
「だいじょーぶ?」
「あの、大丈夫ですか?」
声に気付いたのかその人は身体を起こした。
その次の瞬間
「ごめんなさい!!」
えと、何が?
「おにぃさんどうしたのー?」
「ほんとーにごめんなさい!!」
え?何これ?どういうこと?どういう状況?
「あの、説明して貰えますか?…理麻おいで」
「はぁーい」
「じ、実は……」
「それは私から説明しましょうか」
(わ、凄い美男美女)
いつの間にか側に来ていた二人の人。
「私達は神様です」
「かみさまー?」
「…神様が、私達に何の用ですか?」
「案外驚かねぇな」
「うぅ本当にごめんなさい。僕の不注意のせいで…」
「そうね、まず私はアテネと言います」
「アルトシュだ」
「グレイシアです」
自称神様達の名は全く知らない名前でした。
アテネさんと名乗る人は綺麗な緑の髪にそれより薄い緑の瞳の女性。印象はなんだろうマリア様?そんな感じの美人さん。
アテネさんと一緒に現れたアルトシュさんは赤い髪にルビーみたいな瞳の男性。
ちょっと吊り目気味で冷たい印象はあるけどクールな顔立ちのイケメンさん。
それでさっきから土下座して涙目のグレイシアさんはスカイブルーの髪にそれよりも濃い青の瞳の男性。中性的な顔立ちで女の人と間違えそうなくらいのイケメンさん。
うん。こんな神様知りません!
大体、神様って…ついに私の頭もおかしくなったかなぁ?
「大丈夫、お前の頭はおかしくなってない。悪いのは全部このグレイシアだ」
「ごめんなさーい!」
考えてること分かるのか…
プライバシーの侵害…
「おねぇちゃん!これファンタジー?」
え?ファンタジー?
「え、あぁそうだね」
「まほーつかえるの?!」
「う、うん?」
チラッと視線を送れば苦笑いをされた。
その隣ではまだグレイシアさんが頭を下げていた。
ここまで来るとかわいそうに思えてくる。
「それで…」
要件を催促する。
「「「………」」」
「説明を、してくれるんじゃ…」
訳が分からない上に話が進まなくて少しイライラする。
「本当に申し訳ないんだけれど、貴方とその妹さんはグレイシアのせいでその、死んでしまったのよ」
「こいつの不注意で神力による空間の歪みができてそこから力が漏れたんだ」
「そ、それによってお二人の魂が壊れてしまいまして。い、いわゆる突然死といいますか…」
なるほど、つまり巻き込まれた?
「ご、ごめんなさい!ダメな神様でごめんなさい!!」
「そういうわけなのだけれど、理解して貰えたかしら?」
「なんとなく。てことはこの後私は地獄に?」
地獄に落ちるほど悪いことはしてないけど、天国に行けるほどいい子でもない。
あぁ、この子は。
理麻は天国へ行けるはずだ。
私と違ってとてもいい子だから。
私にとっての唯一。癒やしで天使だ。
「それなのだけれどね」
「今回のコレは確実にこちらの不注意。巻き込んでしまったわけだからな」
「もう一度、人生をやり直しませんか?と」
「つまりね私達の世界に転生しない?って聞きたかったのよ」
転生?
「それは…」
「おねぇちゃん、てんせいってべつのせかいにいけるの?」
今まで黙って話を聞いていた理麻が口を開いた。
「え、うん。そうだよ」
「りまてんせい、する!!」
この子にこんなに目を輝かせて言われてしまったら断れるはずがない。
「そっか、じゃあその為の方法聞いてくるから少し大人しくできる?」
「うん!」
「「「………」」」
「聞いた通りなので宜しくお願いします」
「えぇ分かったわ」
「それで、いいんだな?」
「はい」
こうして私達は異世界転生することとなった。
「魔王とか悪魔とかと戦えとかはないんですよね?」
いわゆる勇者になって世界を救え!のやつ。
「私達の世界ではそれはないわ。それとスキルなどはこちらで保証します」
それなら…いくらかは安心かもしれない。
「好き勝手生きていいんですよね?」
「あぁ。責任はこっちにあるからな。出来る限りはこちらで責任を取る」
「それで…なんだけど。僕らの世界じゃ君らの姿は目立つから、容姿を決めていきたいと思うんだ。ご希望はありますか?」
希望か……
「妹との年の差を二つ差くらいにして欲しい…かな」
今の私達じゃ姉妹ではなく親子に見られることが多い。
それはそうだ。二十歳と六歳なんてそう見られてもおかしくない。
あと憧れるのは、魔法…もだけどやっぱり
「あとは綺麗な肌と無駄毛が生えない身体?」
「「は?」」
呆れたような顔をされた。
けどだって正直めんどくさいんだもん。
「…行く世界がどんな所か分からないですし」
「あぁ!説明してなかったですね。僕らの世界は…」
まとめると、
その世界の名はエルヴンガルド。
国々で対立やいざこざはあれど、比較的平和である。
剣と魔法のファンタジー世界。
力に自信がある人は冒険者になることが多い。
人類種である人間の他に獣人種、魔族という種族もいる。
魔物や魔獣といったモンスターも生息する。
神様は六人。
絶対神アテネ・水の神グレイシア・火の神アルトシュ・光の神ルス・風の神クレリア・土の神ボーデン。
「改めてご希望はありますか?」
「さっき言ったのでお願いします」
「「………」」
沈黙されちゃった。
「他にはないの?」
「あとは…子供がいいです」
色々と伸びしろがありそう。
「他には?」
「他は…一から作るってことなら、神様がお母さんお父さんな訳ですよね?なら神様たちの特徴を持った感じが良いです」
「「お父さん…」」
「お母さん…」
「あ。嫌だったら大丈夫で「「「嫌じゃない!」」」す…」
「そ、そうですか。なら神様たちの特徴を貰いたいです。あ、でも銀髪も…」
私が悩んでいる間に、神様たちが相談を始める。
「それなら、私の緑の瞳に青のかかった銀髪でどうかしら?妹さんは赤のかかった銀髪で」
「絶対神からは取れませんよ向こうで緑の瞳なんて殺されにいくようなものじゃないですか」
「そう、なんですか?」
それは遠慮願いたい。
「うっ、そうだったわね。なら二人の特徴を二人に分ければいいわ。そうね青の瞳に青のかかった銀髪、妹さんは赤の瞳に赤のかかった銀髪」
「それでお願いします」
「他の容姿はどうする?」
「あとは特に…人に避けられるほどのブサイクでなければいいです。第一印象で嫌われなければ良いので適当で大丈夫」
私が言うと三人で相談をし始めた。
「おねぇちゃんおわったー?」
「まだ、みたい。もう少し待ってて?ごめんね理麻」
「はぁーい」
放置されること五分。
やっと終わったらしい。
「じゃあ変えるぞ」
「あ、はい。理麻おいで」
「はぁーい!」
理麻が側に来たことを確認したと同時に光に包まれる。
光が消えた頃に自分の身体を確認する。
「本当に子供になってる」
理麻を見れば赤のかかった銀髪になってるので問題ないだろう。
「わぁ!すごーい!」
「ありがとーかみさま!」
「ありがとうございます」
「いえいえー、じゃあ次はスキルですね」
「すきるー?」
「理麻はどんなことしたい?」
「えーとねー。まほーつかいたい!あとはー…もふもふしたい!」
「動物もふもふしたいの?」
「そう!」
「なら魔法と動物に好かれるスキルかしら?」
「お前は?」
「回復魔法と、あとは色々作ってみたいですね」
「錬金術と鍛冶か。少し時間がかかるな」
「あ、
「それなら上位の時間停止と看破にしましょうよ。看破なら相手に悟られず鑑定できるし隠蔽されてても見破れるじゃない」
「あとは耐性とその他のスキルだな」
「その他スキル…あ、記憶の引き継ぎとネット検索できるようにして欲しいんですけど…」
無理かな?
「どうなの?アテネ」
「そうねぇ、いいんじゃない?」
「だと、他にはあるか?」
「ありがとうございます。他には特に思い付かないので…神様たちで選んで貰えますか?」
また三人の相談が始まった。
今回は待ち時間が長くなりそう…
「理麻座って待ってよっか」
「うん」
暇潰しに理麻と二人で花冠を作り始める。
一つ作り終わり、神様たちを見るが終わりそうもない。
二つ目を作り、また神様たちを見るがまだ終わらない。
結局、花冠六つと理麻が頑張って作った花の腕輪が三つ完成した頃に漸く話し合いが終わった。
「お待たせしました!決まりましたよ」
満面の笑みでグレイシアに言われる。
「子供でスキルを沢山持ってると鑑定された時困るからな、隠蔽のスキルをつけた。鑑定では見抜けない。子供の平均より少し高いぐらいに設定してある」
「歳を重ねるごとに自動的に変わるようになってるの。意図的に自分で解除しない限り特殊な奴以外にはバレないわ」
アテネがアルトシュの説明を引き継ぎ説明してくれた。
「わぁ!ありがとうございます」
「ありゃーと!」
安全を考えてくれた三人に笑顔でお礼を言う。
「魔法の使い方、エルヴンガルドの情報は刷り込ませてある」
「それじゃ、そろそろ………「あ、待って!」
アルトシュが話し始めたのを遮る。
「これ、あげるのー」
渡したのはさっき作った花冠と花の腕輪。
「花冠は神様と他の神様にです」
はい!と笑顔で渡したけれど、三人とも呆然としている。
「かってにおはなつんでつくったらダメだった?」
そっか。神様の庭のものには触らないほうが良かったか…
「僕たちに…ありがとうございます」
「ありがとう」
「ありがとな」
喜んで貰えたみたいでよかった。
「いーえなのー!」
「それでは、送りますね。教会に来てもらえればまたお話出来るので!」
「はい」
「またねーなの!」
足元に魔法陣のようなものが現れ光に包まれる。
眩しさに目を瞑った。
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