俺は過去を探りたい!!

 夏休み明けから一週間ちょっとが経った九月七日。お祭りの開催日である来週の日曜まで九日を切った。

 主人公になれるかは分からないけど、少なくとも今の予定では立身出世を果たすことになっているのでカレンダーには『主人公になる日』と書いてある。異議は認めん。

 もうすでに心臓がバクバクいっているけど、相変わらず孤立している城崎の姿を見れば縮こまっている訳にはいかなかった。

 今からでも(整形以外で)やれることを探さねば。

 ということで放課後、俺は久しぶりに部室を訪れていた。城崎のことがあってから、怖くて近づけなかったのだ。

 城崎の帰宅は確認しているのに、ドアノブを握る手が震える。


「ふぅ……」


 深呼吸をひとつ。

 意を決して木製のドアを開けると、そこには椅子に腰かけ一人で本を読む――お姉ちゃん先輩がいた。

 お姉ちゃん先輩は俺を確認するやいなや


「うわぁぁあん! 帰ってきたのね~!」

 

 と、泣きながら俺に突貫、カバディで言えば一点もののタックルを成功させた。

 ハグされるのとは違って、上からかけられる乳圧はまた趣深いものだった。

 このまま溺死したくもあったが、主人公になるまでは死ぬまいと決意し、俺は俺の男の部分が元気になる前にするっと抜け出した。

 先輩、そんな悲しい顔しないでくださいよ。

 ひとまず落ち着くようにいって、俺らは机を挟んで正面に向かい合った。


「久しぶりねぇ……大丈夫だった?」


 ティッシュで鼻をかむ先輩。目は赤く充血していた。


「すいません……ひとりにしてしまって……」


 そんな先輩に、俺は額を机につけて謝罪した。

 先輩は今まで、活動日にはずっと一人で部室にいたそうだ。形ばかりの顧問から聞いた話だ。

 先輩がそこにいてくれたのに、俺は……。


「いいのよ、別に。こうして来てくれたんだから~。今日は何の用かしら?」


 お姉ちゃん先輩はいつものように朗らかに笑って言った。とても気が休まる笑顔だった。


「えーとですね、いい加減決着をつけようと思って。城崎との関係に」


 俺は思い切っていった。


「だから、そのためにも情報収集をと」


 俺はある程度、城崎のことを理解しているつもりだ。でも何かを間違えたからこそ彼女は離れていったんだと思う。

 だからこそ、過去の城崎のことを知りたいんだ。今の城崎を作り出した、その原因を。

「……いい目をしてるわね……」


 先輩は、しみじみと、優しい眼差しで俺を包むと、


「分かったわ。ちょっと長くなるけど、いい?」


 俺は黙って頷く。

 そして、お姉ちゃん先輩から見た、城崎の過去が語られることになった。

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