夢を見る話
景色が見えました。
どうやらなんだか夏のような、冬のような、それでいて春のような、そんな白い場所で寝ていたようです。
ここで、不思議なことに気付きました。今のわたしはからだを持っていなかったのです。頭も、目も、胴も、脚もありません。今いるであろう場所もそう考えると、今のわたしには目がないわけですから、ただわたしの意識がこんな場所にいるんだと思っているだけなのかもしれません。
わたしは、辺りを見渡そうとしましたが、視界はどうやっても動きませんでした。それは動かす身体が無いので当然の事なのですが、しかしこのときわたしは、からだがないことが猛烈に悔しくなりました。ここはたいへん明るく、空気は澄んで、それでいて穏やかなので、それをじかに肌で感じ取れないというのはまるで、手塩にかけて育てた猟犬を、狩りに出さずにそのまま殺してしまうことのように虚しく感じられたのです。
わたしは天国の一歩手前、綺麗な花畑あたりにでもいるのかなぁ、と思ったのですが、それならここには花の一本もあって然るべきなのです。ですがここには白い光しかありません。ここはどこなんだろうと考えていると、不意に視界が遠ざかりました。どうやら後ろにむかって進んでいるようです。
わたしは慌てました。よくわからないままに慌てて、自分がなぜこんなにもこの場所に執着しているのか気づかぬまま、為す術もなく後ろに飛ばされていきました。最後にわたしの視界に収まろうとしたものは────
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!!!!────!!! !!! !!!
起こされた。訳もなく湧いた怒りをこの忌々しいアバズレ女の嬌声だか悲鳴みたいな頭にキンキン響く音を発するクソ野郎に叩きつける。ざまぁみろ、動かなくなった。
しかし時間が迫っていることは間違いないようで、執拗にこちらに焦燥感を植え付けようとしてくる。あれ程の苛立ちをぶつけられてなおこちらに現実を投げつけてくるこの発条仕掛けを壁まで投げ飛ばして、私は準備を始めた。
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