第45話 終焉の王宮遺跡 プラズマリミット
遺跡を攻略し、ガーディアンを倒して文明の遺物スフィアをゲットする。それがトレジャーハンターのするべき仕事である。
しかし、今そのトレジャーハンター達の腕を試すかのように、世界の危機が訪れようとしていた……。
――王宮遺跡 プラズマリミット
「何で、レジーナが……?」
ミリは茫然と呟いた。
疑問は尽きなかったが放っておけない問題の解決の為、ニャモメ団の三人は王座の奥から超プラズマ砲のある部屋に移動していた。
気絶させたレジーナそっくりの仮面の少女も、縄でくくってフルボッコしといた悪人も一応連れてきている。
「時限式になってるねー。あ、タイマーついてるー。あと三分? 標準はエイリスの王宮かあー。これ間に合うかなー」
ケイクはさっそく解析機にプラズマ砲をかけて、予想外の時間の少なさに珍しく額に汗を浮かべている。
「救いようのないやつだと思ってたけど、本当に撃つつもりだったとは……。急いでよかった、マジで」
「悪人さん、もうこんな事やめよっ。たくさん人が悲しくなっちゃうよっ。こんなのよくないよ!」
そんな悪人にも声を尽してやるのはやっぱりポロンちゃんだ。
「誰が、止めてやるものかっ。私の偉大さが分からないクズ共はみんな死ねばいいのだ。ああ、もうすぐ私を馬鹿にしてきた者共の哀れな姿を見ることができる。それは、さぞかし愉快な光景なんだろうなあ」
今やうるさい人質の悪人は、聞く耳持たず言いたいことだけ言っている。
「そんなのただの逆恨みじゃん。どっか遠くの世界に言ってないで、さっさとこの破壊兵器の壊し方言えっての。ケイク、どう? それ一応スフィアなんでしょ?」
「一応ねー。でも駄目だよー。手こずってるー。古代王宮にあるだけはあるよー。この生体認証ってとこがどうしても誤魔化せないんだー」
超プラズマ砲を解析機にかけているものの、ケイクの手は中々はかどらなかった。
「はははっ、無駄無駄。お前らにできる事ではない!! 必要なのはクローン共三人分の指紋だ。 今から用意できるか!? 無理だろう。なぜならなぁっ、この部屋の扉は一度閉めたらもう明かないんだよっ!! あーはっはっはっはっ!!」
固く閉ざされた扉を見つめながら悪人は高笑いを響かせる。
「だあぁっ、うるさいってばっ! あーもうっ時間がないっ。クローンって何!? どうすりゃいいのさ!」
悩んでいる間にも時間は一秒一秒進んでいく。リミットが近づいていた。
「きっとリトライの時もこんな感じだったんだろうねー。手がないことはないよー。ミリ、ポロンちゃん、あとレジーナも。……ごめんね」
「へぇ!? 何さ急に」「ケイク君?」
いつもの形だけ謝罪ではない、本当にそう思っているだろう謝罪の言葉に、ミリもポロンちゃんも驚いて目を丸くする。
「クローンってのは、人工的に作られた生命の事だよー。ホムンクルスで作られた命の事ー。ちょっとこっちに来て―。そうそう、で、このパネルに指をつけてー、うんはい、おっけー」
ピピっ『認証されました』 ピピッ「認証されました」
「えっ、なにこれ。ちょっとどういう事なのさ」
「ふぇ、ポロン達がパネルさんに指くっつけたら画面が変わったよ?」
「レジーナと言わない約束してたんだけどね。ミリ達は見なかっただろうけど、脱走する時に寄った部屋の一室に、証拠があったからねー」
その部屋には
子供の浮かんでる培養カプセルがあり、そこに名前の付いたプレートがそれぞれ一つごとにあった。レジーナの文通には、ミリ達は遺跡内で研究員達からは番号で呼ばれていたという。初めはミリやポロンちゃんたちがオリジナルだと思っていたが、それが意味する答えは全く逆だった。
「エイリスにも依頼されてたんだけどねー。本物の子達の方はもう助けられなかったよー」
「そういう事なの?」
「ふぇ、どういう事だろ……?」
驚愕の事実を前にしてミリが絶句、ポロンちゃんはいつも通り首を稼げている。
そこまではおとなしく聞いていた悪人が。声高に嘲笑する。
「クローンを連れてこずに三人で入ってきた時は、お前らガキ共の注意力のなさに笑いをこらえるのに苦労したよ! 仮面の意味にも気づいてなかったとは!! だが、貴様らにできるのはそこまでだ!! あと一人の認証どうするつもりだ?」
「そうだ、考えるのは後。びっくりしすぎて何が何だか分かんないしっ。レジーナっ! って、本当のレジーナは死んだはずだし……。この子もホムンクルスってやつなのか」
「うん、この悪人が普通の人間を傍に置いておくようには見えないしねー」
「えーと、そっくりの別人さんってことかなあ。そっくりさんは世界に三人いるって言ってたもんね」
ポロンちゃんがややずれた理解をしてたが、対応は後だ。
「ええと、アンタ。力を貸してよ。ちょとこっちに来てって。あんたの力が必要なんだよ!」
レジーナそっくりのホムンクルスの少女を起こすが、耳を貸さない様子だった。
「アンタが力を貸してくれないと、大勢の人が死んじゃうんだってば。分かってよ!」
「マスターのメイレイは、ゼッタイ……」
「あんな奴の命令なんて、どうでもいいでしょ!!」
「マスターのメイレイはゼッタイ……」
「ああっ、もうっ。この頑固者!」
ホムンクルスの少女は同じ様な事を言うだけだった。説得は通じず、まるで埒が明かない。
「残り二分……。僕はとりあえず自力で認証を突破できるかやってみるよー」
一分時間を使った事でケイクは決断して、再び解析機の方へ戻っていく。
「ポロンよく分からないけど。レジーナちゃんのそっくりちゃんは、悪い事したいって思ってるのかな?」
「したいとか、したくないとかじゃなくて……あいつの言う事を聞くのが一番いい事だって思い込んでるんだよ。あの遺跡に閉じ込められていた頃のあたしたちが、顔も見た事もない誰かの役に立つように仕向けられてたみたいに……。ああ、このやり口そっくりじゃん。ウチ等のあれもアンタがやったんでしょ?」
ミリはムカつく感じに調子に乗ってる悪人の方に視線をやって言った。
「手足となる道具に善悪の判断力なんて必要ないだろう。私こそが絶対なのだから。だから、クズな人間どもを攫って私がわざわざ使える道具にしてやったのだ。感謝すれこそ避難される筋合いはないな」
悪人は否定もせずに、ミリやポロンちゃん達が送ることになった遺跡での日々について、裏で意図を引いていたの認めた。
言い方は最悪だったが。
「うんと……。じゃあ、ポロン言うよ。あの人の言う事聞いちゃダメっ。あの人は間違ってるから駄目なんだよ!」
「いやあの、ポロンちゃん。そんなんで、こいつが聞く耳持つわけ……」
「マチガウ、ナゼ?」
「持った!?」
ポロンちゃんすごい! が、只今のミリの感想だった。
「だってね、たくさんの人を困らせてるから。皆みんな、あの人のせいでたくさんえーんえーん、って泣いちゃったんだよ」
「ナク……?」
「心がね、この辺がいたくなっちゃう。誰かを泣かせる人は間違ってる事してるんだってポロン思うよ」
「そっか、善悪の判断ができないんだったら教えればいいのか……」
「ワタシも、マスターのメイレイ、するトキ、ココロがイタイ。これは、ナイテル?」
「そうだよ。だからもう、言う事聞くのやめよっ」
ポロンちゃんの言葉にホムンクルスの少女が頷きかけたとき、
「く、道具風情がっ! 誑かされおって、廃棄処分にしてやる。使えない道具に価値などないっ!!」
「廃棄処分って何さ! 他の子もそうやってずっと脅して言う事聞かせてきたってワケ? その子は道具なんかじゃない! アンタの物差しで人の価値を決められてたまるかつ! アンタなんかに預けておけない。皆うちの団にスカウトして持ってくから! そんな所にいるより、広い世界に連れてったほうが絶対良いっ!!」
「ヒロイ、セカイ……。ミタイ。私……キカイ。トメル」
レジーナは決断し、強く頷いた。
「レジーナ!」「レジーナちゃん」
「馬鹿なっ、何故だ……。何故だあっ!! 私の世界がっ、あと一歩だったのに……」
離れた所で作業していたケイクが悲鳴のような声を出す悪人に、言葉を返す。
「少なくとも世界は、君の物にはならないよ。自分のことしか考えてない人のには、ねー」
「ポロン、難しい事は分からないけど。これだけは分かるよっ! この世界には皆が、エイリスちゃんとか、アゲハちゃんとか赤風さんとか、サクヤさんとか、たくさんの人が生きてるんだよっ。だから、世界が毎日よいしょっよいしょって動いてるのは、皆がよいしょって頑張ってるからだと思うっ!!」
そして、ポロンちゃんが続き、ミリが最後に勝利宣言を言い放つ。
「最初から分かってたし。一人で生きてるつもりのアンタに、ウチ等が負けるわけないじゃん、ってさ」
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