第44話 イルカ号の羽ばたき



 ニャモメ団の三人が乗り込んでいる間、今まで数々の遺跡に三人を送り届けてきたイルカ号は、王宮遺跡の上空にて待機している所だった


「まあ、あの三人の事だから何とかなるでしょうけど」


 その艦内でイルカ号に乗り込んだエイリスは、通信機からきこえてくる騒がしい戦闘音を聞いていた。


「ニャモメ団のみなさん頑張って下さい。王宮がやられたら私のお得意さんがいなくなっちゃうっ」


 同じく同乗していた情報屋のアゲハは、眼下で戦っている三人組の勝利を祈っている所だ。


「うちの子達なら心配いりませんよー、お姫様に情報屋さん。これでもいろんな修羅場を潜り抜けてきたんですから」


 そんな二人に声をかけるのは、この飛空艇イルカ号の操舵手であるセツナだ。


「私は別に心配なんてしてないわよ」

「うんうん、ツンデレさんは皆そう言うのよねー。これぞ生ツンデレ。やっぱ生はいいわねぇ」

「だから本当にそう思って。ああもう、調子が狂うわね。あのやかまし三人組に付きあってるだけの性格ではあるわ」


 その三人組にはいつも偉そうにしているエイリスだが、セツナの相手は勝手が違うのかやりにくそうにしていた。


「だけど、すごいですなね。姫様の国は真っ先にあの人の要求を突っぱねて……」


 そのエイリスにアゲハは賞賛の眼差しを送る。


「ああいう連中は嫌いだもの。それに、大したことない奴に下げる頭は持ってないの」

「お姫様はやっぱり違うなあ……。ミリさん達はどうしてこんなすごい人にタメ口ではなせるんだろう」


 真下で発生している殺伐な空間とは対照的にほのぼのしていると、そのうち状況に変化が出た。

 通信機から聞こえてくる音が激しくなった。


「最奥の王座までいったけれど、なかなか苦戦してるみたいね」

「ミニプラズマ砲って武器のせいですよね。何とかしてあげられればいいんですけど」


 普段のめちゃくちゃな付き合い方はあるが、エイリスとアゲハはそれなりに相手を心配しているようだった。


「よっし、じゃあ突撃しちゃいましょう! セツナさん、可愛い団員の為に一肌脱いじゃうわよ!」

「はぁ? 何をいってるのよ。行くって言ったって今からじゃ……」

「そうです。それに、セツナさんは遺跡に潜ったことないんですよね……?」

「ないわ! でも大丈夫! このまま下に向けてドーンってするだけだから!」


 セツナさんはテンションアゲアゲで、イルカ号の操舵をし始める。

 イルカ号はだんだん傾いていき……。


「ま、まさか。ちょっと、そのドーンって……」

「ちょっ……団員が団員なら操舵手も操舵手ですよっ!!」


 エイリスとアゲハは慌てて周りの物につかまる。


「イルカ号突撃!」


 直後二人分の悲鳴と共に、イルカ号は真下の王宮遺跡へとモぞ道理突撃していった。

 だがそのおかげでイルカ号は、敵の足元をすくい、危機に瀕していたニャモメ団の作戦の足元を救ったのだった。


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