エンディング ~そして踏み出す新たな一歩~



 世界の危機は救われた、トレジャーハンター達によって。





 三人目の認証を終え、カウントが止まる。それを見てニャモメ団の三人は肩の力をぬいた。


「だから、ウチ等はトレジャーハンターだってのに、どーしてこーゆう事に関わらせるかな……」

「これはもー、ニャモメ団がそういう運命の元に生まれてきちゃったとしか思うしかないよー」

「良かったねっ。皆泣かなくてすんだんだねっ。でもちょっとポロン疲れちゃったよ」


 ほっとした様子で、沈黙した超プラズマ砲を前にして息をつく。

 ……めでたしめでたし、後はもう何も心配することはない。

 みたいな感じでニャモメ団はそりゃあもうまったりしていた。

 鹿威しとかをBGMで流しちゃってもいいかもしれない、そんなくらいに。

 ―――こーん……。


「これで勝ったと思うなガキ共がぁあああっ!」


 悪人がレジーナの落としたミニプラズマ砲を手にして、標準をこちらに定める。


「いつの間に縄解いて……てかやばっ」


 慌てて回避行動を取ろうとするが心配は無用だった。

 なぜなら


「千夜流秘伝、水面月みなもづき!!」


 外側からサクヤが扉をぶった切り。


「焼き尽くせ! ファイアー!!」


 ルナが火炎を放射したからだ。


「ふむ、間に合って何よりだ。危ない所だったな」

「まったく、ツメが甘いわよ!」


 サクヤとルナの二人(と内面的にルピエも)に続いて、ガルドや、新米達がどやどやと最奥に入ってくる。

 遅まきながら彼らもたどり着いたようだった。

 ニャモメ団の方を見て、状況を尋ねる。


「で、終わったの?」

「……まあ、だいたいは。でも恨みがあるんならこの際だし晴らしておけば? エイリスのとこ送ったら、サイバンとかトリシラベとかで出来なくなるだろうし」

「何よ、全部いいとこ持ってっちゃったの。せっかく雑魚ざこ片づけたのに。……まあ、いいわ。殴る余地があるみたい……「ふごばっ。ごげぶっ」……だしっ!「へごぶっ」」


 セリフを言い終える前に殴っていた。不意打ちで防御行動を許さない方針だったらしい。

 悪人が殴打されるBGMを背景にして、今度は新米トレジャーハンターの二人組が話しかける。


「あっ、あの、サイン下さい!」

「って言いながら何で手ぇだしてんだ。それは握手だろ」


 その顔を知らないニャモメ団の反応は


「誰?」「どちら様かなー。あの時は、助かったけどー」「ポロン達どこかで会ったかな? でも思いだせないよ」


 当然こんな感じだ。


「走破遺跡では命の恩人になっていただいて、ありがたく思ってますがそうですっ! とっても嬉しくて光栄ですん」

「色々口調が怪しいぞ。人を前にして緊張する柄かよ」

「むっ、チカさんひどいです。私だって憧れの人を前にしたら緊張の百や二百ぐらしますよ! そんなんだからチカさんは女の子の気持ちが分からないんです!!」

「はぁ、お前にだけは言われたくねーし。普段、おれがどんだけ苦労してお前についてるか……」


 ニャモメ団を置いて二人だけの痴話ゲンカが展開される。


「……ふぇ、ケンカは駄目だよ! ポロン止めな……きゅうっ」

「あーいいから、痴話ゲンカってのは止めなくてもいい喧嘩なんだよ」

「生暖かい視線で見守ってあげようねー」


 サイン云々の話は後にして、一人でぼーっとしているレジーナも元へ向かう。


「さーて、危ない山を一つ越えた所で、新しいメンバーを勧誘しにいきますか」





 三ヶ月後 鏡面遺跡ミラーハウス


「ファイヤー、ファイヤー、ファイヤー!! ……ふう、手ごたえないわね全然」

「ニャモメ団が姿を見せないからって、荒れる気持ちは分かるけどれどね。少しは自重したらどうだい?」


 世界の命運をかけた戦いから約三ヶ月後。赤風団の二人、ルナとガルドはいつもと変わらずに遺跡を攻略する日々を送っていた。

 鏡張りの遺跡で、鏡人形を燃やしながら会話を続ける。


「何言ってんのよ、そんなワケないでしょ! ただ、どうしてんのかなーとは、思うけど!」

「やれやれ、素直じゃないね。それはともかくどうだろうか。ここは一つ別の土地にでも行って気分転換でもしてみないかい? 君も力が有り余っているみたいだし」

「人を怪力みたいにいわないでよ。でも……うーん、確かにあらかたこの辺の遺跡は攻略しちゃったし……」


 ガルドの提案に遺跡攻略の先を考えて悩むルナ。そこにルピエが話しかける。


『私はいいと思います。実力も三ヶ月前と比べて大分あがってますし、それに……』


 ルピエは、ガルドと鏡に映ったルナと同じ自分の姿を見て続ける。


『どんな所にいっても私たちなら、きっとなんとかできますよ』

「……そうね。そうと今決まればさっそく行動よ! 一気に最奥までいって、スフィアぶんどったら、準備しなくちゃ!」

「やれやれ、最近も騒がしかったけれど、また前みたいな感じの騒がしい日々になりそうだ……」





 半年後 妖精遺跡フェアリー


「はぁ、またか。フィナの奴どこに行ったんだよ。あいつはどこ行ってもじっとしてられないな……。サクヤと組んでた頃よりはマシだけど。そういやあいつ、何やってんだろうな。東国に行って侍してくるとかワケ分かんねー事言ってたし」

「あっ、チカさんっ! 駄目じゃないですか、こんな所ではぐれちゃ!」


 半年前の王宮遺跡の攻略にほんのちょっと貢献したレアな経歴持ち主、トレジャーハンターシロネ団の二人、ギィチカとラルフィナは妖精遺跡フェアリーに来ていた。

 入るが早々に行方不明となったフィナが、いなくなった時と同様に勝手に合流して来て、眉間の皺が顔面デフォルトになりつつあるチカにため息をつかせている。


「はぐれたのはお前だ。ったく、いっつもいっつもいっつも……。お前の頭についてる耳は飾りか!?」

「止めて下さい、暴力反対です。フィナはそんな風に育てた覚え、ありませんよ!」

「そっくりそのまま返してやらあ! まったく手間のかかる……」


 耳を引っ張ったりかばったりの騒動をひとしきりした後息をつく。


「それでチカさん。フィナは遺跡の奥に行って、スフィアさんを見つけてきたんで来たんですよ! 褒めてください! これで憧れのニャモメ団さんに一歩前進です!!」

「お、マジかよ。お前にしちゃ、大収穫じゃねぇかよ」


 いつもなら迷惑かけ倒しで終わるフィナだが今回は違った。思わずチカの眉間の皺もとれる。が。


「ですから、些細な失敗は大目に見てくださると、嬉しいな……と」

「あ?」


 一気に雲行きが怪しくなった。

 フィナの後ろで今までずっと隠れていた存在が前にでてくる。

 妖精が背中につけているような、羽がついてる。

 その妖精っぽい見た目の少女はチカを見て一言


「パパー、ママをいじめちゃ駄目っ!!」

「お、ま、え、は、また面倒事を―――っ!」


 チカの眉間にそれはそれは深い皺が刻まれた。





 一年後 北国ミルキー・スレイ


 トレジャーハンター達が多く活動する千年王国より、寒風吹きすさぶ北の地……。


「ひぃぃぃっ、誰かっ、助けてくれー」「きゃああああ!」 


 その国は、混沌としていた。

 古代文明の残した負の遺産、暴走するガーディアンに人々は成す術もなく蹂躙されるのみだった。


 そんな、命を散らせるばかり人々の前に、

 そんな国の中に、一人の若者が空から降りたった。

 優し気な面立ちをした少女だ。


「大丈夫ですか、怪我……手当しますよ」


 慈愛の眼差しと気遣いに満ちた言葉を受けて、地に倒れて絶望していた人々は涙した。


「奇跡だ」「天使だ……天の使いだ」

「えっと、私は普通の人間……だよ? 造り的には」


 絶望の中に舞い降りた、少女天使は困った様な顔で、助けを求めるように視線を空へ向ける。すると、


  ―――どしゃっ。


 追加で三人の少年少女たちが降りてきた。

 いや、落ちてきた。


「ちょおおおぉっ。エイリスの奴ぅ! 本当に飛空艇から蹴り落としやがった!!」

「よっと。まー、一応いちおう即死するような高度じゃなかったしー、いーじゃんー」

「ぴゃ、鼻のあたま擦りむいちゃった。痛いの痛いのとんでけーってしなきゃ、痛いの痛いの……。あ、ミリちゃんにもやってあげるね。え、痛くないの? ……そっかポロンも我慢するっ! ポロン強い子になる!!」


 シリアス濃度濃い目の空気を、ぶち割るようにしニャモメ団の三人が追加で登場。

 そして先に降り立っていた少女に向いて、要救助者の扱いを頼む。


「レジ……じゃなくてヒメカ! その人達の手当て適当にやっといて。……ってそこ、神様みたいに拝まないっ!困惑してんでしょ。そこも……っ。ああ、もういいや。で、あれが噂のガーディアン? アゲハの情報どおりじゃん」

「すごいねー、他の国の情報なのに今回はあってたねー。遺跡じゃないところでほんとに人襲ってるよー。びっくりー」

「ぴゃ、大変だよっ。他の人達も痛い痛いになっちゃう、早く止めてってお願いしなきゃ」


 そしてガーディアンに対峙し、それぞれの武器を構え交戦体制をとる(ポロンちゃん除いて)。


「まったく、何度も言うけどウチ等はトレジャーハンターだってのに……」

「でも放っておかないから、巻き込まれちゃうんだよねー」

「ポロン、困ってる人がいたら助けたいって思う。だって、助けたいってポロン思うからっ」


 もう勘弁的にミリが呟くのを無視する形で、ガーディアンがこちらへと目標を変えて襲い掛かってくる。


「皆、気を付けてね」


 レジーナのホムンクルスである、ヒメカの声を背にニャモメ団の三人は慣れた様子でトラブルの渦に全力で体ごと突っ込んでいった。


「まったく! アンタ等をさっさと片付けて近くの遺跡荒らしに行かせてもらうからっ!」


 それが彼らの歩む道の、最初の一歩。

 新たなメンバーを加えた、新生ニャモメ団の初活動だった


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