第28話 叱咤の実況遺跡 ライブ
古代文明が生み出した遺物スフィア、それは今を生きる人々にとって超便利アイテムとして重宝されていた。飛空艇という大型のものから、消しゴムのような小さなものまで、その形や大きさは様々だ。だが大抵は、厳重な防護を固めた遺跡の中にそれは眠っている。
しかし、そんな場所に眠っているスフィアを、遺跡から発掘して生計を立てる者達がいた。
これはそんな者達、二人のトレジャーハンターの物語であった。
――実況遺跡 ライブ
「ちょっとおっ! ここから出しなさいよ、縄ときなさいよ。せっかくのレースだったのに出場できないじゃない。さっさとこないと燃やすわよ!!」
「君の場合、さっさと来ても燃やしてしまうだろうに。そういうのをなんていったかな? 確か理不尽って……」
走破遺跡レーサーとセットで作られた、実況遺跡ライブの実況室には気絶中の実況人と赤風団のルナとガルドが閉じ込められていた。
『そ、そんなに暴れないで下さい。こういう場合は監禁が長期に亘る可能性もあり、できるだけ体力を温存しておいた方が……』
ルナの中の絶人格ルピエが一言しゃべれば、ルナがぴしゃりと言い放つ。
「アンタの意見は聞いてないっ。黙んなさいルピエ」
『ご、ごめんなさい……』
「もう、レース始まっちゃってるんじゃないの、あああああもおーーーっ!」
頭をかきむしりながら奇声をあげるルナ。
「少しはおちついて静かにしたらどうだい」
ガルドはルナから離れて実況室の計器を操作している。
「だって! 今頃はレースに出て二ャモメ団のアホ連中をぶっ飛ばして、一位で走ってるはずだったのに! それが、何でっ、恨みの観客をぶっ飛ばしたいとかいう、とち狂った理由の犯罪に巻き込まれてるのよっ!!」
「たしか、男女中でよくある痴情のもつれが原因みたいなことを言ってたね。観戦に来た元恋人とそのお相手さんと、元恋人さんの友人さんと、その友人さんのお相手さんとか……、家族とか親類縁者とか、もういいからまとめてふっ飛ばしてしまえとか言ってたね」
「どんな大所帯よ!」
頭に血が上って、犯人の
「物珍しいんじゃないかい? 僕たちの仕事は一般人にはあまり縁がないからね」
「ぐあー。もー、だしてよー!!」
ルナ、聞いてない。
ガンガン、ゴンゴン。
心のままにドアを叩き続ける。
『あの、どうか冷静に……』
「うっさい!!」
『ごめんなさい……』
ルピエ、一蹴。
「やれやれ、すこしは仲良くやったらいいのにね。っと、これでいいのかな?」
「ガルドっ! あんたも少しは知恵を出し……って、何やってるのよ」
ガルドは気絶から未だ復活しない実況人を横に、実況席に座ってコンソールに指を走らせていた。
「見て分からないかい? システムにハッキングを仕掛けているんだよ。でも、これがなかなか壁が固くてね」
「アンタ、そんな事できたの?」
『あれ、出来たんんですか?』
ルナとルピエの声が疑問を発した。口調こそ違うもののまったく同じ顔で。
「キミと出会う前は、一人で活動してたからね」
「そんな大昔の事どうでもいいわよ。それよりどうなの? 出来そう?」
「大昔で片づけられてしまったよ。……まあ、五分五分といったところか……。……え?」
バヂッッ
コンソールのパネルキーを弾いていたガルドは瞬間、何かに驚いた後、発生した電撃に弾き飛ばされた。
「ガルドッ!?」
『違法なルートでの侵入を感知しました。これより室内にいると思わしき侵入者を排除します。違法なルートでの侵入を―――……』
どこからか警報音と共に、そんな合成音声が流れだす。
「ど、どうしよう……。ちょっと、しっかりしてよ」
慌ててガルドに駆け寄ったルナは、突発的な事態に直面して思考停止しているようだった。
「ガルド……。大丈夫なの。ねえってば」
室内には警報が鳴り響いて、侵入者を排除するための仕掛けが作動しているらしく、機械の駆動音が発生する。
「ガルド……。どうしよう……。こんな時、どうしたら……」
『っ……! しっかりしてください、今動けるのはあなただけなんですよ!』
「ルピエ……」
『今っこでガルドさんを助けられるのは、あなただけなんです』
しばし、部屋の中が警報と機会の駆動音だけになり、
「……そうね、ありがと」
後は
そのルナの呟き一つ、そして威勢のいい啖呵一つだけが発せられた。
「何が起こるかわかんないけど、こんな所さっさと脱出して、あの犯人を消し炭にしてやるわ! この赤風団にケンカ売ったこと後悔させてやるんだから!」
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