第18話 凶悪の分身遺跡 ドッペルゲンガー



 古代文明が生み出した遺物スフィア、それは今を生きる人々にとって超便利アイテムとして重宝されていた。飛空艇という大型のものから、消しゴムのような小さなものまで、その形や大きさは様々だ。だが大抵は、厳重な防護を固めた遺跡の中にそれは眠っている。

 しかし、そんな場所に眠っているスフィアを、遺跡から発掘して生計を立てる者達がいた。

 これはそんな者達、三人のトレジャーハンターの物語であった。






――分身遺跡 ドッペルゲンガー


「ポロンだよ~」「遊ぼー」「わーい」「挨拶するよっ」「きゃー」

 

遺跡に潜って数分後、さっそくトラップにかかったらしいポロンちゃんがトラップにかかっていた。


「まさか、分身するスフィアがあるなんて、なんつー凶悪な」

「情報屋さんの情報を聞く限りー、もっと別の恐ろしいことが起こると思ってたけどなー」


 情報屋のアゲハの言葉を基に分身遺跡ドッペルゲンガ―にやってきた二ャモメ団なのだが、たくさんになったポロンちゃんを前にして、ミリとケイク二人は途方に暮れていた。


「ポロンだよー」「遊ぼー」「わーい」「遊ぶのー」「きゃっきゃっ」「ぴゃう」

「ええい、うるさあい! アンド、うっとおしい!」

「これはこれで恐ろしいねー」


 増えすぎたポロンはそれぞれが自由なことを喋ったり、動き回ったりしていてカオスだ。非常にカオスしていた。


「遊ぼー」「楽しー」「わー」「きゃー」

「とっても楽しそうだねー」

「楽しいのはポロンちゃんだけじゃんっ。ええいっ、動くな喋るな走るな騒ぐな! お座り! ステイ!」


 八つ当たり気味にミリが叫んでみれば、意外にも指示に従う動きがあった。


「ぴゃうっ、ごめんなさい。ポロン、しょんぼり」「しょんぼりー」「ごめんなさいー」「ごめんねっ」

「分身してもポロンちゃんのまんまなんだねー。人が変わったり、正気失ったりっていう話はなんだったんろうねー。分身したら人格変わるとか、じゃなかったのかなー?」


 涙目でウルウル、プルプルしているポロンちゃんを見てケイクは首をかしげた。


「演技には、見えないしね。どうせあのいい加減な情報屋の事だから、そこらへんは適当なんでしょ。まったく、はぁ……」

「あっ、ミリちゃんため息ついちゃだめ、幸せがにげちゃう。ポロンが幸せになるお歌歌ってあげるねっ」

「え、いやいらな……」

「しああわーせー、るるらるーたっくさんー」「たっくさんー」「みつけましょー」


 制止は間に合わない。

 どうなる?

 むろんこうなる。


「さがしましょー」「みんないっしょにー」「るりらるー」「わー」


 大合唱が始まった。


「ぐああああっ、真面目に全力の大声で歌わないでっ、それ凶器だからっ。殺される、仲間の歌で殺される!!」

「あれー」「なんで逃げるのー」「まってよー」「ミリちゃんー」「ケイク君ー」

「ぐわあああ、スフィアはどこにあんのさあっ!! すぐっ、今すぐ壊さないと命が危ない!! 主に仲間によって!!」


 耳を塞いで逃走し始めた二人を追いかける大量のポロンちゃん。

 何人もの同じ顔が追いかけてくる背後を見て、


「これは、凶悪だわ!」

「うん、凶悪だねー。というよりホラーかなー」


 二人はそんな感想を漏らす。

 

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