第12話 真空の衛星遺跡 サテライト
古代文明が生み出した遺物スフィア、それは今を生きる人々にとって超便利アイテムとして重宝されていた。飛空艇という大型のものから、消しゴムのような小さなものまで、その形や大きさは様々だ。だが大抵は、厳重な防護を固めた遺跡の中にそれは眠っている。
しかし、そんな場所に眠っているスフィアを、遺跡から発掘して生計を立てる者達がいた。
これはそんな者達、三人のトレジャーハンターの物語であった。
――衛星遺跡 サテライト
飛びだすびっくり文明、スペースシャトルに乗り込んだ二ャモメ団の三人+エイリスは真空に浮かぶ衛星遺跡サテライトに来ていた。
「宇宙来たっ!」
「来たー、ねー……」
「わぁっ、丸くて青くて綺麗なのが見えるよ。あれ何だろうねっ、ミリちゃん、ケイク君」
ガラスの向こうに広がる真空の闇に、二ャモメ団二人は空いた口が塞がらないようだった。
「阿保みたいな顔してないで、さっさと進むわよ!」
「誰がアホだっての。あんたには、前人未到の遺跡に来た感動とかないワケ! トレジャーハンターがこんなとこまで来るの史上初なんだから」
三人に冷静な声をかけて、さっさと先に急ぐエイリスに、ケンカ継続中のミリがくってかかる。
「都会に出てきた田舎者じゃないんだから、そんな事でいちいち騒いだりしないわよ。だいたい、それを言うなら前文明の古代人はどうなるの」
「超ハイパーな文明持ってたそいつらと、文明衰退後のあたし等を比べんなっての! 宇宙なんて存在、空想の産物だと思ってたのに。どっからこんな遺跡の情報仕入れてきたのさ」
ケーブルむき出しで機能優先な見た目のした通路を、感慨深い様子で進んでいく。
「まー、お姫様だからねー。プリンセス的なパワーでも使ったんじゃないかなー。具体的に言えば、権力とかー?」
「ふぇ? ケイク君、けんりょく、ってどんな道具なんだろ。情報さんが沢山集まるんだよね。この間見たパソコンっていう四角いのみたいなのかなぁ」
「そんな感じー。おっと、こっちにもいるんだねガーディアンー」
侵入者発見とばかりに、やってきた二ャモメ+1名をターゲットロックする、樽型ロボット。
「ふん、あんた達の行動パターンなんて、下の遺跡で解析済みなんだから。どっからでも……って、おぅわっ! 何か速っ!」
弓を構えて余裕のミリは、樽型ロボットが移動する予想外なスピードに驚いていた。
「背中にエンジンがあるねー。ここ、特に重要な所らしいし、突進してザシュって早く終わらせたいんじゃないかなー。もぐもぐ……」
「やっかいなっ! ええい、このくそっ! だーっ、戦闘中に物を食べるなっ、殺れ!」
解説終了のケイクも、一応とばかり短剣で参戦するが、本当に一応だった。
「ぴゃ、たくさんのロボットさんがビュンビュン飛んでるよっ! ポロン達にびっくりしたのかなぁ?」
今回はある意味そうかもしれない事を発言したポロンちゃん。
「この遺跡の攻略報告は来てないわ。何千年と人が寄り付かなかったみたいよ。こんなに群がられっちゃって、良かったわね。大歓迎じゃないの」
「そんなのいらんわっ! もっと、丁重な持て成しを要求する!」
「でも、侵入者が親切にされたら、逆に怪しいよねー」
後ろに隠れて他人事のエイリスに、当然ミリは額に青筋だ。
「この、飛び回んなっ! ハエか、アンタ等はっ!!」
「あー、ミリ、そこの配線傷つけるとー……」
ミリが苛立ちまみれに放った矢が、むき出しのコードを断ち切った。照明が消える。
「うわっ!」「あちゃー」「ぴゃあっ、ポロンびっくり!」「ちょっと! 何やってるのよ!!」
悲鳴を上げた各自。
「ふぁ、どうしたんだろ。真っ暗になっちゃったよ?」
「こんな時攻撃されたら……やばいんじゃ……って、あれ?」
「こないねー。あ、分かったー。視認できないと攻撃してこないタイプなんだよー」
襲撃に身構えるが、攻撃が来ないことに一同はほっと息をついた。
今まで後ろで隠れていたエイリスがここぞとばかり行動する。
「まったく何をやってるのよ……あんた達。ついてきなさい、地図は頭に入ってるから。私の声がする方に進めばいいわ」
まるで、自らが二ャモメ団のリーダーであるかのような頼もしい行動をとる。
「よく分かんないけどエイリスちゃん格好いいねっ。あ、そういえばライトさんがあったんだ」
「あははー、何か僕たち依頼人に助けられてるー」
「屈辱! あぁっ、だけど、ポロンちゃんそれつけちゃダメだから! 皮肉だけど今の状況、そのっままにしといてっ!!」
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