第13話 真空の電波遺跡 デジタル 



 古代文明が生み出した遺物スフィア、それは今を生きる人々にとって超便利アイテムとして重宝されていた。飛空艇という大型のものから、消しゴムのような小さなものまで、その形や大きさは様々だ。だが大抵は、厳重な防護を 固めた遺跡の中にそれは眠っている。

 しかし、そんな場所に眠っているスフィアを、遺跡から発掘して生計を立てる者達がいた。

 これはそんな者達、三人のトレジャーハンターの物語であった。




――電波遺跡 デジタル


 衛星遺跡サテライトからガーディアン避けに、別ルートの電波遺跡デジタルを通って、帰り道を歩くニャモメ団+1名さらに+エキストラがいた。


「昔々の古代にはー、この遺跡を使って電波を地上に送ってたみたいだよー」

「電波って何さ? そういえばわけわからん奴のことを古代の人間は電波って呼んでたって、聞いたことあるけど」

「その電波とは違うかなー。あ、でもポロンちゃんってちょっとその電波っぽいよねー」


 ケイクによっての遺跡解説を聞きながら、ミリは電波指定を受けたポロンちゃんを見やる。


「あのね、ポロンはね……。ニャモメさんていうのが好きなんだよ。郵便を運んでくれるネコさんなんだっ。羽が生えてて飛べるんだよ」


 ポロンちゃんは、エイリスが連れてきた骸骨に話しかけている。

 勝手に歩く君、というスフィアによって意識がなくとも自動的に歩いているのだ。


「まさか、骸骨のしてる装飾品がエイリスの目当てだったなんて、どんな我が儘よ……。ってか、おかしいでしょ、何でエキストラが増えてるわけ……」

「…………」


 ミリの言葉にエキストラの返事はない。どうやら歩くだけの、ただの屍のようだった。


「うん、屍なんだけどねー。でも服からして女性みたいだからー、それは失礼かなー」


 屍の着ているドレスを見て、気遣いのあるまともな発言をするケイク。


「あのね、ポロンはね。楽しく踊ったりするのが好きなんだよ。あれ、返事がないよ」


 エキストラが1名扱いされていない理由に、まったく気付いてないポロンちゃん。


「今更置いていくとか言わないでよね。我が儘で結構よ。どの道こんな所に置いておくわけにはいかないでしょ」

「ずっと、一人はさみしいって思うよっ。でも地上さんに降りたら友達いっぱいだよっ。ポロンもお友達になるねっ」


 エイリスの真意を解説するかのようなポロンちゃんの言葉だった。


「……ったく、素直にそう言えばいいものを。……ん、また停電?」

「ぴゃっ、真っ暗だよっ、ポロン見えないよっ」

「何千年も人の手が入らなかったから、どっかが錆びれちゃったみたいだねー。そして、何か誤作動っぽい音がするよー」


 停電に一同が足を止めていると機械の駆動音が響き始めた。


「寒っ、なにこれ。超寒い」

「ぴゃあああ、お肌がぶるぶるしてるよ! あ、お腕が鳥さんの肌になってる」

「室内環境を維持できなくなったみたいー。あははー、北極みたいだねー」


 真冬の様な環境になったことに、その場にいる一同は自然と身を寄せあうようになる。


「ちょっと、さっさと何とかしなさいよ! さっきといい、ほんっとうに役立たたずなんだから!!」

「何だとこら!! 依頼人だからって調子乗ってんじゃないっての! はっくしゅん!! っさっむぅ、無理。口が寒い」


 寒さがケンカを消滅させた。


「寒い寒いさんがたくさんで、冷蔵庫の中みたいだよっ。ぶるぶる。……電気が付けば少しはポカポカするかなぁ? ……んしょんしょ、電気さんついてほしいんだよっ!」


 ポロンが声に反応して光るライトを取りだして、ほんわりとした明かりをつけた。


「そんな、もんで暖かくなるわけ……。ん、温かいじゃん!! どういう事!!」

「ほんとだー。光が当たってる所があったかいー。ひょっとして、おもちゃじゃなくてスフィアなのかなー。あ、消えちゃうよー。ほらほらポロンちゃん何か喋らないとー」

「えと、ポロンたくさん喋るといいのかな? こんにちはだよっ。ぴかぴかしてるよっ。明るいんだよっ。……うーん、言葉が思いつかないよ。あ、そうだ!」


 ライトを点灯させたままにするために話しかけるポロンだが、話題が尽きたらしく代案に切り替えた。





 おかえりなさい ドアを開けて笑顔を分けよう

 長くてつらい旅だったね。でももう大丈夫だよ

 お腹がすいてたら 温かいスープがあるから

 疲れた体も辛い心も ぐっすり眠ればとれるから

 明日 まだ旅立つとしても またここに帰っておいで

 なぜなら……



 ここはあなたの故郷だから すべてを支える不動なる大地に

 あなたがまた返ってくる日まで 私はここで待ち続けましょう

 どれだけ時がたとうとも どれだけ世界が変わろうとも





 ポロンちゃんの歌声を背景に、ミリは気づいた事を言う。


「あれ、何か途中から雰囲気が違うような」

「というか、別人っぽいようなー?」


 エイリスは、これまでないがしろにされた仕返しを決行した。

 おもむろに一つ頷き、発言。


「ええ、だって今歌ってるの、その子じゃないもの」


 歩くくんで歩いている亡者を、こっそりカクカク動かしながら。


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