第11話 真空の軌道遺跡 スペースシャトル
古代文明が生み出した遺物スフィア、それは今を生きる人々にとって超便利アイテムとして重宝されていた。飛空艇という大型のものから、消しゴムのような小さなものまで、その形や大きさは様々だ。だが大抵は、厳重な防護を固めた遺跡の中にそれは眠っている。
しかし、そんな場所に眠っているスフィアを、遺跡から発掘して生計を立てる者達がいた。
これはそんな者達、三人のトレジャーハンターの物語であった。
――軌道遺跡 スペースシャトル
トレジャーハンターキャモメ団の三人は、本日。
「私の命令を聞いて動きなさい!」
わがままな第三者に指図されて、軌道遺跡スペースシャトルに来ていた。
「ちょっと、依頼主を置いてくってどういう事!!」
エイリスという偉そうな少女が声を発する。円筒形の遺跡の内壁に添うようにして作られている階段を、息を切らしながら走っていた。……最後尾で。
「ちょっ、いま遺跡の防衛装置から逃げんのに忙しいから、後にして!」
「わー、追いかけてくるよー。こんな細くて縦長の遺跡で飛べるなんてずるいよねー」
「ぴゃっ、このライトさん声を出すたびにぴかぴか光って面白いねっ!」
前を行くミリ、ケイクは、必死に羽の付いた樽型機械のビーム攻撃から避けている。
ポロンちゃんは、おもちゃのライトで遊んだりしているので背景扱いだった。とくに構ったりはしない。
「数年前、あんたたちをあの遺跡から助けてあげたの誰だと思ってるの! 今回の依頼はっ、この上にある物を見つけて、無事に帰るまでが依頼よ! 上に行くまでに、私が死んだらどうすんのよ!」
「あーもう、うるさいつ! 過去の恩をいつまでも恩着せがましくっ! あんたが深窓の御令嬢みたいなか弱いお姫様だったら、ちゃんと守ってるわっ! 一人で何とかできるでしょっ!!」
「何とか出来ても守るってのが筋でしょうに!! 仮にも私は一国の姫君よ!!」
「守ってもらえるのが当然とか、これだからボンボンは!!」
喧嘩が尽きないエイリスとミリ。(片方は息がきれそうなのに)かなりの声量で、(片方は迎撃している最中なのに)走る速度がまったく落ちない。
「元気だよねー、二人ともー」
「ボンボンってなんだろう、お菓子の名前とかかなあ」
そんな調子で階段を走りながらエイリスとミリは、寄ってきた羽つきの樽型機会を、
「うっさい!」バキッ。
「邪魔よ!」ドカッ。
横目でにらんで拳で撃退していた。
「女の子って怖いねー」
「ふぇ、ポロンはミリちゃんとエイリスちゃん怖くないよ。仲良しで楽しそうだよっ?」
「うん、ポロンちゃんはその観察眼がある意味怖いよー」
双方向性ケンカ上等現象を発生させながら、遺跡の上部までだどりつく一同。
「で、どこにあんの。あんたの欲しい物って」
「ここじゃないわ。まだうーんと上よ。……あった。ケイクとやら、このシャトル起動させなさい。これに乗れば上に行けるわ」
エイリスの目的地はここではないようで、辺りを見回して不満そうにしている。
「とやら、だってー。ミリ達はともかく、僕は結構付き合い長いはずだよねー? 僕たちの周囲にはそういう系の子しかいないのかなー。あ、何でもないよー。りょーかいー」
ケイクがさっと指を走らせて手早く起動させ、シャトルへとと乗り込んでいく。
「もう結構な高さまで登ってきたはずでしょ? これ以上、どこいくつもりなのさ……。雲の上の幻のお城とか言うんじゃないでしょーね」
「ポロン、お空の上の世界知ってるよ! えっとね、絵本さんで読んだから知ってるの。ポロンすごいんだよっ」
上昇方向の行先に心当たりのないミリは訝しげにシャトルの天井を眺めながら、ポロンちゃんの言葉に対してすごいすごいと適当に褒めた。
そんな適当なミリに対して、きつい系女子と天然系女子が、息を合わせて耳を疑う様な事を口にした。
「そんなの決まってるじゃない! 宇宙よ!」
「それはねっ、宇宙って言うんだよ!」
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