蒼い春
kero
第1話 春
春、今年もこの季節が巡ってきた。
僕は春という季節があまり好きではない。
気温の寒暖差が激しく、過ごしやすい陽気な日もあれば、冬を思い出すかのような肌寒さが舞い戻ってくる。そんなどっちつかずの季節が僕は好きではない。
ただこの季節には、少し特別な思い出があった。
――あれは君と付き合って一年目の春の朝、僕は君とはじめてHをした。
カーテンの隙間から微かに入る朝の光を、僕は布団を背にし君にそっと覆いかぶさった。寝起きですこし照れくさそうにする君の体に触れ、様子をうかがう。そして、君はそっと瞼を閉じ、くちびるを軽く丸めた。僕は心の中で深呼吸をし、覆いかぶさった布団を自分の首元まで下げた。
カーテンから入る微かな光の暖かさを頭越しに感じながら、君のくちびるへそっと口づけを交わした。君の頬をすこし指で触れるとうっすら瞼がちらつくのが見えた。
ひと呼吸を入れたあと、深めの口づけを交わした――
蒼い春 kero @keron-00
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