Chapter 10.











「……今日も一日、歌い続けちゃったな。どれだけ練習しても全然足りないみたいだ」


 ホームステイ先の夫婦が用意してくれた夕食を終えると、加賀谷は二階にある自分の部屋へと階段を上った。

 ドアを開けて部屋へ入ると、窓際にある机の上へと目をやる。

 真っ直ぐに机に歩み寄るとその上の手紙を手に取りやさしく微笑んだ。


「悠一、頑張ってるみたいだね……」


 もう既に封が切られている手紙を中から取り出し、愛しそうに見つめる。それは三日前に届いた氷川からの手紙だった。

 加賀谷は手紙が届いたその日から、少しでも時間があると手紙を繰り返し読んでいた。


「薬師丸教授って面白そうな人なんだね……ふふ、逢ってみたいよ」


 加賀谷はにっこり笑うと椅子に腰掛け、引き出しから黄色い羊皮紙を取り出し、机の上のインクつぼにペン先を浸すと、氷川への返事を書き始めた。





――悠一へ


 手紙、ありがとう。悠一、頑張ってるみたいだね。

 悠一がやりたかった事、ゆっくりでも一歩ずつ確実に前進するといいね。

 いや、悠一だから……苦労も苦労と思わない、そんな悠一だから、必ず成功するよ。

 僕も応援してるから、悠一の思うがままに、信じた道を進んで。

 何時も悠一らしく……もし、迷ったり、悩んだりしたら「初めの一歩」を踏み出した時の事、思い出して。初心に帰って。

 でも……悠一ならきっと出来る、僕はそう信じてるから。


 そちらではもう、梅雨に入る頃かな。

 こっちでも四季は有るけど日本の夏のような蒸し暑さは無く、過ごしやすいらしいです。

 でも温度差が有るので、夏でも夜は長袖を羽織らないと寒い日もあるとか。

 日中、三十度を越える夏日でも乾燥しているのでさらっとしてて気持ちいいらしいです。

……でも喉には良くないので、水分はこまめに取るよう、注意されました。

 現地の人たちはワインやビールを水の換わりに飲んでますが、僕には無理です。

 酔ってたりしたらレッスンなんて受けられないもの。

 今日も良い天気で、レッスンを受けている音楽学校まで思わず鼻唄を唄ってたら、道行く周りの人に注目されちゃって。

 何時の間にか本気で歌ってたみたいで。

 ……ここは何もかもが大きいです。

 街の規模も、建造物も、そして人のこころも。

 街を歩いているだけでその街の歴史が、芸術が、人柄が、自然と身体に入り込んでくるようで。

 特に音楽が凄いです。

 街の生活に溶け込んでいて、色んなところから音楽が溢れてて。

 もう、自然とこころが嬉しくて、楽しくて、気持ちまで大らかな、あたたかい想いで満ち溢れてくるようです。

 ……本当に、此処に来れて良かった。

 これもみんな悠一のおかげ。

 もし、あの時、悠一が僕に声を掛けてくれなかったら……

 悠一が僕を見つけてくれたから、今、こうして僕が存在してる。

 今の僕には悠一が無くてはならない存在になってて。


 本当にありがとう。

 そしてこころから伝えたい。

 愛してる。ずっと。

 遠く離れた異国の地で、僕は君を想う。

 どんなに離れてたって想いは変わらない。

 そして悠一とひとつであると想ってる。

 僕の想いは君へ、君の想いは僕へ。

 何時も繋がってるから。


 そうだ、悠一、あんまり無理はしないでね。

 一つの事に集中すると食事もまともに取らなくなるからね。

 悠一の健康だけが心配です。


 愛する君へ。 加賀谷吉彦より。





 書き終えるとペンを戻し、やわらかい眼差しで手紙の文面を読み返す。


「……本当は凄く逢いたいよ、この腕に抱き締めたい……」


 座ったまま右手で左腕の上腕を掴む。

 あの日、深く刻み込んだぬくもりと確かめ合った熱が身体と脳裏に鮮明に蘇る。


「悠一……」


 加賀谷は書き終えた黄色い便箋にそっと想いを込めてくちづけた。熱くやさしく。

 まるでそれが氷川そのもので有るかのように。

 名残惜しそうに唇を離すと、壊れ物を扱うかのように大切に封筒に入れ、赤い蝋で封をした。


「明日の朝、一番で出してこなくちゃ」


 伸びをするように立ち上がるとそのまま机の前の観音開きの窓を左右へ大きく開く。

 ふと、空を見上げるとレンガ造りの街並みに、明るく丸い月が浮かんでいた。


「この月の光は悠一のところまで届いてるんだよね」


 加賀谷は月越しに遠く氷川を想い、月を見上げていた。

 夜風はやさしく加賀谷の髪を揺らす。

 加賀谷は何時までも何時までも月を眺めていた。




















「すいません、悠一様がお邪魔していませんか?」



 もうすぐ梅雨が明けそうな、きつい日差しの午後。

 眩しい夏の光を受け、木々の緑が一層色濃く生い茂る。

 開け放たれた窓からは、外の芝のむせ返る様な葉の匂いが微かな風に乗って部屋へ流れ込んできた。


 そっと研究室のドアを開ける。皆川は部屋の主を目で探した。

 データ分析のため、沢山の書類と写真の山に囲まれた薬師丸がその隙間から隣の部屋を指差す。


「悪いねー、次期社長さんにデータ整理させてもうて」


 山と積まれたそのデータは、薬師丸の話によるとあれば有るほど良いらしく、日本中に有る観測所から定期的に薬師丸のところへ送られてくるものの一部だった。


「こ、これで『一部』ですか……」


 呆れ顔で皆川が額の汗をハンカチで拭いながらため息をつく。


「うん、まあ『天気予報』なんてもんは所詮今までのデータからの予測に過ぎへんし。 去年の今時分はこうやった、ああやった、みたいなのが少しでも多くあるに越した事ないんや。 多ければ多いほど細かく分析出来るさかいに」


 話す口調はいたって穏やかな薬師丸だが、その眼差しは熱く真剣そのものだった。


「そ、そんなものなんですか……」


 その真剣な態度に押されながら皆川は書類の隙間をぬって隣の部屋へと移った。

 隣の部屋も薬師丸のいる部屋となんら変わらない量の書類で溢れかえっている。

 その中に真剣に書類を見つめる氷川がいた。テーブルに書類を積み、椅子に深く腰掛け、ひとつひとつ丁寧に分類していく。


「悠一様……」


 声を掛けるのも躊躇ためらってしまうほどの真剣さで書類を見入っている。外は蒸せる様な湿度なのに、この部屋の中は緊張感が漂っていて凛としている。近寄りがたい氷川の雰囲気に皆川は声がつかえてしまった。

 部屋の入り口で立ち尽くす皆川に気付いたのか、ふっと空気が緩むと氷川の方から声を掛けてきた。


「お? 響どうした? 何か用事があったんだろう?」


 真剣な氷川に見とれていた皆川は声を掛けられてやっと我に返る。


「あっ……実は先ほど悠一様宛てにお手紙が……」


 そこまで言いかけて氷川が遮るように叫んだ。


「加賀谷からか!?」


 先ほどまでの真剣な眼差しから一転して熱くやさしい眼差しに変わる。その氷川の笑顔はまるで日が射した様に明るく輝いていた。


「はい、これです……」


――なんて顔、するんだろう……


 胸がきゅうっと締め付けられる気がして皆川は目を伏せた。

 氷川は立ち上がって皆川の手から手紙を受け取ると傍にあった定規を使って封を切った。

 逸る気持ちを抑えるかのように、ひとつ深く息を整えると僅かに震える手で中から手紙を取り出した。

 熱いまなざしで文面を辿る。まるでその便箋が加賀谷自身で有るかのように。


「加賀谷……元気そうで良かった……」


 呟くその声は愛しさに満ちていた。氷川を包む空気が穏やかに、そして果てしなくやさしくなる。

 それを見ていた皆川の顔が曇った。


――なんでこんなに胸が苦しいんだろう? 悠一があんなに嬉しそうなのに……。


 その場にいると胸が張り裂けそうな気がした皆川はほとんど無意識に背を向けた。

 氷川に黙って部屋を出る。


「わ!?」


 俯いて歩いていた所為で前を見ていなかった皆川はドアの外にいた薬師丸と鉢合わせになった。

 驚いた皆川にそっと耳打ちするように薬師丸が問いかける。


「……なぁ、アレ、恋人からの手紙かなんかとちゃうの?」


 薬師丸はドアの陰から一部始終を見ていたらしく、興味津々とばかりに詰め寄ってくる。


「ど、どうしてそんな事が分かるんですか!?」


 言い当てられて驚く皆川ににっこりと笑って答えた。


「見てみいや、あんなにやさしい顔、ボクと仕事してる時は絶対せえへんて!」


 まるで自分の事の様ににこにこと嬉しそうに笑う薬師丸に皆川はため息をついた。


「ええ……今、日本にはいなくて、海外に留学に行ってるんです」


「そっか、離れ離れとはそりゃ難儀やな」


 悪い事を訊いたと薬師丸が謝った。


「それにしても……」


 何かを思いついたのか、にっこりと笑う。


「ボクも逢いとうなったなぁ……そや、ちょっと外でお茶でも飲まへん?」


 言うが早いか薬師丸は部屋にいる氷川を外で打ち合わせをしようと誘い出した。

 

















 梅雨明け前のむせ返るような暑さの昼下がり。

 薬師丸を先頭に、氷川と皆川はとあるカフェへと連れてこられた。


「ほら、ここ。実はボクの恋人が働いてるねん」


「……え? ここって……」


 氷川とと皆川は顔を見合わせた。それもそのはず。

 そこは見慣れたウッドデッキにプランターの花々。

 白いパラソルのついたテーブルに同じ白の椅子。

 紛れも無く氷川と加賀谷がアルバイトをしていた『Clouds and wind (クラウドアンドウィンド)』だった。


「さあ、早く、入りぃや!」


 薬師丸は先頭を切って店の扉を開けた。

 からんからん、とドアベルが鳴る。

 その音に反射的に真野が声を掛ける。


「いらっしゃいませー……って、おお! 久しぶりだな!」


 カウンターでコーヒーを淹れていた真野が手はそのままで、顔を上げると嬉しそうに笑顔で迎えた。


「……え? 知り合いなん?」


 不思議そうな薬師丸に蒼ざめた皆川がどもりながら訊いた。


「ま、まさか…!? こ、こ、恋人って!?」


 目を丸くしてきょとんとした薬師丸が突然目を細めて大声で笑い出した。


「ちゃうちゃう!! ボクの恋人は……」


 そう言うが早いか薬師丸はピアノへと駆け寄った。


「この人がそうですー!」


 くるりと氷川と皆川に振り向き、ピアノを弾いていた千葉の肩にぽんと手を置く。


「はぃ~? あっ!! やっくん!? なんで此処に!? こ、来ないでって言ってたでしょ!!」


 あの頓狂とんきょうな声が店中に響き渡る。驚いて顔を見上げる千葉に薬師丸はさも嬉しそうに答えた。


「だってー! 逢いたくなったんやもん」


 にこにこと人懐っこい笑顔で当たり前の様に言う。それを見て呆れるように千葉が返した。


「何言ってるのー!? 朝まで一緒だったじゃない……」


「おっほん!」


「はいっ!?」


 突然の咳払いに同時に振り返る。ふたりの会話を割って真野が入ってきた。


「悪いんだが千葉くんは仕事中なんでね。私語は謹んでもらえるかな?」


 びくっと肩をすくめる千葉に対して、薬師丸は全く気にもせずさも嬉しそうに喋りだした。


「あ、初めましてー。ボク、薬師丸慎一郎と言います、気象学を大学で教えとります、他にも色んな研究開発を……」


 最後まで聞かずに感心したように真野が訊ねた。


「ほー、大学教授!? 随分若く見えますが……」


 頭坊主に手をやって得意の笑顔で答える。


「えへへ。得してますねん」


 笑顔の薬師丸に、照れている千葉。渋い顔の真野に、目を皿の様にした皆川。

 そんな全員の顔を一通りながめて氷川は思わず噴出した。


「くくくっ……あ、すいません、つい……」


 顔を横に向けて可笑しいのを堪えようと口の前に手の甲を向けて緩む口元を隠す。

 笑いたくなるのを何とか抑えて、改めて千葉に挨拶をした。


「どうも、お久しぶりです。……でも、四ヶ月も経ってないんですけどね」


 苦笑いをしながら氷川が千葉や真野に軽く頭を下げる。それに倣って皆川も軽く会釈をした。


「……ええ? ボク以外みんな顔見知りなん?」


 少しだけ疎外感を感じて不服そうな薬師丸に千葉が説明する。


「うん、そーなの。氷川くん、ここで春までアルバイトしてたのー。……でも、なんでやっくんと氷川くんが一緒なの?」


 その質問に氷川が答えた。


 今、薬師丸の協力を得て氷川世界貿易が気象予報への発展の為に資金を投資している事。

 海軍と提携を結び、気象予報レーダーを開発中である事。

 その氷川世界貿易側の責任者が氷川自身で、今日は数ヵ月後に迫った海上実演と検証のための予定などを決める打ち合わせをしようかと考えていて、薬師丸が良い所があると連れてこられたのが……ここ、だった事。


 一通り聞いた所で千葉が感心したようにピアノの前に座ったまま氷川を見上げた。


「へえー、スゴイなー。……ちょっと見ない間にえらくかっこよくなっちゃって! もう、一人前って感じ?」


「えっ? い、一人前なんて……全然、まだまだです。もっと頑張らなきゃ!」


 思ってもみなかった言葉に一瞬顔を赤くした氷川だったが、すぐに表情を引き締める。

そのやりとりを見ていた皆川がふと気付いたように、何気なくぼそっと呟いた。


「……千葉さんは全然変わってませんね」


「そりゃないよー! 日々、ピアノの腕前は精進してるのよー?」


 そうやね、と薬師丸が座ってる千葉の肩を後ろから抱き締める。

 人の目も気にせず、臆面も無く愛を分かち合うふたりを眩しそうに氷川は眺めていた。


――本当に仲がいいんだな、このふたり。……俺も加賀谷が戻ってきたら、こんな風に仲良く出来る、かな……?

 加賀谷の性格から言って、人前じゃこんな事、しないか……。


 加賀谷の笑顔を思い描く。思わず、ふっと笑みが零れた。


「ああっそうや!」


「やっくん何よ、突然!?」


「ねえ、ハジメくん、ボクがあげたカメラ、ちゃんと手入れしてくれとる?」


 覗き込むように千葉の目を見てにっこり微笑む。


「……へ? あ、あぁ!? カ、カメラね! も、勿論!」


 急に挙動不審になり、明らかに千葉の視線が空を泳ぐ。


「今の季節、レンズにカビが生えるから、ちゃんと手入れしとかんとあかんで!?」


 にっこり笑う笑顔には何処と無く得体の知れない威圧感が僅かににじみ出ていた。千葉の顔色が蒼ざめる。

 そんな千葉の様子を知ってか知らずか氷川は思い出したように訊ねた。


「あ、そうか、あのカメラ、薬師丸教授のものでしたか!」


「あれ? 知っとるん?」


「ええ、一度撮って貰いました」


「ふーん……たった一度、なんやね?」


 ちらりと千葉を見る。


「あんなに欲しがってたから……ハジメくんやったしタダであげたんやで。……今からでも遅うないから身体で返して貰おうかな?」


 びくりと肩をすくめる。ゆっくりと薬師丸の顔を見て千葉はふにゃっと力の抜けた笑顔をむけた。


「ごめんっ!! ソレだけは勘弁して! やっくん容赦ないから、あくる朝立てなくなるのよ、許してー!」


 両手を合わせて拝み倒す。

 薬師丸はそんな千葉を上から見下ろすように見てにっこりと笑った。

 顔は笑ってはいたが、その笑顔から出る声は真面目そのものだった。


「ちゃんと使わなあかんで? 使ってないとダメになるんやで? ええかハジメくん?」


「うん、うん、大好きなやっくんの言う事、ちゃんと聞くよ? オレ」


 顔中の筋肉全てを緩めて笑う千葉の笑顔は誰が見ても怒る気力を喪失させるのに充分すぎる程だった。


「ちゃんと約束してや! ハジメくんの事、嫌いになるで!?」


「ええーっ! 約束する、する!! 約束するから、そんな事言わないでよー!」


 薬師丸はぽんぽんと千葉の頭を軽く叩きうんうんと頷いた後、何時もの人懐っこい笑顔に戻った。


「……いい加減にしろ、お前ら何しに来てんだ!?」


 とうとう真野が付き合いきれずに釘を刺す。


 ああ、こりゃすいません、と薬師丸が例の笑顔で応える。

 千葉は慌ててピアノに向きなおし、やさしい調べを奏で始める。

 薬師丸は改めて氷川とテーブルについた。

 ひとり残った皆川はぼうっとその場に立ちすくんでいる。


――男同士でも……なんだか羨ましい、な。 想いが通じ合ってる……愛し合うって……いいな。


 ふと氷川の顔を見つめる。自分の信じた道を進む男の、その横顔は皆川には酷く眩しく映った。


「おい、響、資料は?」


 見つめていた氷川のその視線が自分を捕らえた。


「はっ!? あ、ハイ、ここに……」


 思わず口から心臓が飛び出そうな、そんな動悸が急に胸を打つ。

 慌ててかばんから書類を出そうとふたを開いたとたん、書類を床にばら撒いてしまった。


「ああっ! すいません、申し訳ありません……」


 それを見て氷川は椅子から降りて書類を拾うのを手伝う。

 最後の一枚を拾おうとした時、皆川の頭と氷川の頭が軽くぶつかった。


「あっ! いて……ごめん、響、大丈夫か?」


「……っ!?」


 目の前に氷川の顔が飛び込んで来た。見慣れたはずの幼馴染の顔。

 しかしその距離で見る氷川のやさしい眼差しに皆川の胸がとくんと高鳴る。

 顔に血が上ってくるのを感じながら皆川は無意識のうちに顔をそむけた。


「……大丈夫、です」


 赤くなっているであろう自分の顔を氷川に見られまいと下を俯き、呟いた。

 氷川はそんな皆川には特に気付かず、にっこり笑うとすぐに立ち上がって席に着いた。


――どうかしたのかな……なんで今更悠一に……こんな……どきどきするんだろ? ヘンだよ、俺……


 どこからともなく、ざわつく胸の中。

 そのとき、開け放たれた窓から不意に風が頬を撫でていく。

 さわやかなその風は、皆川の胸の中をも駆け抜けていった。


 氷川の顔をまともに見れず、視線を逸らしながら隣の席に着く。

 皆川の心中を知る事も無く、氷川は薬師丸と打ち合わせに集中して行った。










 その日の夕方、薬師丸は関東地方が梅雨明けをしただろうと気象庁に報告した。


 今まで一番暑い夏が、氷川にとってはとてつもなく長い夏が今、始まったばかりだった。




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