第4話ツリ目参謀、そう私が孝明

私は陰影のウィザード、名は孝明、陰影エリアの幹部であり作戦指揮の参謀でもある。周りからはツリ目参謀、狐参謀などと揶揄されている。壁のウィザードが支配する壁エリアとは今絶賛敵対中であり、壁のウィザード殲滅の全指揮権を我らが元帥に託されている。しかし、陰影のウィザードも昨今の不況により人員不足、参謀である私も前線に駆り出される珍事に至っているのである。

「あ〜ここですねぇ〜壁のウィザードが狙っている次世代の候補生のお宅は」

このいかにも崩れそうな安アパートがターゲットの家らしい。

最近では壁のウィザード陣営も少子高齢化のせいで純血のウィザードが年々数を減らしているようで、緊急措置として、凡人から唯一ウィザードに昇格できる二十代以降の童貞、処女を血眼で探しているのである。

この日本の平和のために、そうそうに少子化で滅んでくれませんかねぇ....

「まぁとりあえずは、壁のウィザードの増殖を防ぐのが先ですねぇ、若い芽は早めに摘んでおくか、こちらに引き入れて育ててあげないと....」

懐から杖を取り出し、ここの住人、尾奈太郎宅の安アパート二階の玄関へ杖を向け呪文を唱える。

「サンダーボルト」

衝撃音とともに玄関だったものは跡形もなく消え、そこにはポッカリと自分でも意外なくらい見事な穴が空いた。

「....もろいですねぇ〜ここ築何百年なんですか?レオ○レスですらあと2、3発サンダーボルト撃たないと、こんな大きな穴空きませんよ〜」

と呟きながら二階へと続く階段を見つけ、足をかけ登り始める、しかし、10段目に足を置いた時である、かけた足は階段を突き破り、バキッという音ともに、私の体は突き破った階段の隙間へ吸い込まれ一階へ強制的にルーラされてしまった。おそらくこの時だろう、右足を思いっきり骨折してしまった。

「ふぁっ○、このボロアパートめ...」

階段から上がることを諦め、浮遊魔法でようやく、二階へ上がり穴からターゲット宅への侵入に成功した。というか、最初からそうしておけばよかったのである。

入った瞬間、童貞宅特有の微かなイカ臭さが、鼻を刺した。部屋の中を一瞬見回すと、さっき自分が空けた穴とは別に天井に大穴が空いていた、ここの住人は自室に穴でも空けて天体観測でもしているのだろうか、そんな訳がない、先客がいた。

「どうも、ご機嫌よう、おや?壁のウィザードに先を越されていましたか。」


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