第8章 課外授業はチャンスの場
そうして、一週間が経った。
自分自身の駄目な所を見つめるという厳しくも辛いぼっち修行をこなしたフェネリーは、少々メンタル部分がヤバい感じになったりしたが、どうにか耐え抜いていた。
(こんなので本当に大丈夫なのかなぁ。戦う前に戦いが終わっちゃいそうな気力だよぅ)
時刻は早朝。
この日でクゥの指導通りにあらかじめ定めていた一週間後の期間が過ぎた。
終了日であるこの日に備え、十分にぼっち力を鍛えたフェネリーなのだが、その内心は不安しかなかった。
だが、フェネリーは自分の内心がどう荒れ狂おうと、世界というものは変わらずに回り続けるという事を知っている。
とりあえず平常時の様に行動するしかないと思った彼女は、目が覚めて学校に一番乗りしてしまったので、図書室でおねむだったパジャマ姿のクゥに挨拶。
クゥに心配事を愚痴ったり、逆にうるさいと怒られたりしながら、そのまま時間を過ごして気を紛らわせ、その後見送られ学校の校庭に集合した。
この日の授業は特別な物だ。
校内で行うものではない。
課外授業といって学校の外で行う種類の物だった。
なので、フェネリー達生徒は校庭に集まった後は、学校の外に出て別の場所に移動しなければならない。
親しんだ校舎から離れる事に若干の不安を抱くフェネリーだったが、やはりそんな事はおかまいなしに世界は回り続ける。
(うまくいきますように。うまくいきますように)
成果が出る事を祈りながら、フェネリーという超落ちこぼれ一名を加えた集団は、そうして定刻通りに目的地へ出発したのだった。
(頑張った成果がでますように頑張た成果がでますように頑張った成果が……以下略)
ひたすら心の中でフェネリーはお願い事を呟きながら、精神統一状態で歩く。
きっかり一時間が経過。
フェネリー達は課外授業をこなす場所……森の中までやって来た。
教師の監督はあるものの授業内容は結構ハード。基本的には自信それぞれの力のみで行う事になる。
目的地に着いた生徒達は、あらかじめ決めていた班員達と共に、自力でご飯を作ったりテントを立てて寝床を作ったりして、自分達で生き抜く為の活動をしなければならない。キャンプのちょっと厳しい版のようなものだった。
そういうわけで、教師からの簡単な注意事項が言い渡された後、さっそく授業が始まった。
「エルル、こっちに炎お願い」
「いいよ、ミルタはこっちに水をよろしくね」
「うん」
数分もせずに、生徒達はてきぱきと動き始める。
魔技の使える他の生徒達は、見る見るうちに自分の役割を見つけてこなしていくのだが……。
ご存知の通りフェネリーに使える魔技はない。
なので、役目がまわってこなかった。
「えっとえっと、ボクに出来る事は……」
フェネリーは自分も何かせねばとウロウロするのだが、そんな様子に目ざとく気がついたらしいイジメっ子達がやってくる。
フレディを先頭にした数人のグループが。
「あら、フェネリーじゃない。まだ何もやってないの? ほーんとトロいんだから」
「あはは。しょうがないわよ。落ちこぼれなんだから」
「能無しにできる事なんかないわよねー」
「うぅ……」
ここのところフェネリーは教師達にべったりだったので、その間イジメられなかったイジメっ子達のフラストレーションが爆発したのだろう。
(わぁぁぁ……やっぱり、来たぁ)
それは、反動と言うものだった。
イジメっ子達は、堰を切ったように今まで以上に様々な事を喋り出した。
いつも以上に異様で辛辣で、内容が細かい。
だが、普段だったら成すすべもなく泣かされてしまう所なのだが、今日のフェネリーは違った。
ほんの少しだけ、耐えてみようと思っていたのだ。
(ボクだって、これくらい! もう、前のボクじゃないんだ)
少しの期間とは言え、クゥに鍛えられて精神面が強くなったフェネリーは、以前の様に即刻泣き出すと言う事はしなくなったのだ。
そうして、心構えを強くしているフェネリーだったが、幸いにも偶然の女神が奇跡を起こすかの如く微笑んだ様だった。
「あ、大変!」
見上げれば視界にhあ重い雲が増えている空模様。
その様子に気が付いたフェネリーは慌てて走って、もう時期天気が変わり雨になると言う事を班員達に伝えたのだった。
(せっかく頑張って準備してたのに、駄目になっちゃったら悲しいもんね)
急いで用意していた炊事の道具をや屋根のある場所に移動すれば、その途端に大ぶりの雨が降って来る。
間一髪だった。
班員達は空を見たりフェネリーを見たりしながら、しきりに驚きを示した。
「すごーい、何で分かったの」
「天気が分かるなんて、どうして?」
「えへへ。昔から空はよく見てたから、どんな風に変わるか分かる様になったんだ」
友達がいなかったのでそれしかやる事が無かったとはさすがに言わなかった。
あと、この一週間鍛えていたぼっち力が、空を見たり自然の中で遊んでたり、人と関わらない事だったので、その影響もあった。
さすがにフェネリーにとってそんな事までは、話せない内容だったが、これでクゥの言っていた事は的外れではなかった事が証明されたのだった。
「あーあ、どうしよう、せっかく用意したおかず駄目になっちゃった」
そんな風に話していると、避難が間に合わなかった他の生徒達が、雨に濡れてしまったご飯の材料を手にして肩を落としていた。
フェネリーははっとして、その生徒に話しかける。
「あ、あのね。ご飯は駄目かもしれないけど、他に食べれる物知ってるよ。森になってる果物とか詳しいから」
「え、本当、すごーい。物知りなんだね」
言われた言葉を数秒遅れて理解したフェネリーは、逆に驚いた。
(物知り! 初めてそんな事言われたよ! 逆にこっちがすごーいだよ!!)
そう、それは彼女にとっては初めての事だったからだ。
「たぶん通り雨でもうちょっとしたら晴れると思うから、その時にどんなのが食べられるものか、良かったら教えるよ」
「ありがとう。すっごく助かるよ」
勇気を出してその次も話しかけたのだが、無視でも罵倒でもない返事が返ってきた事にフェネェリーはほっと胸を撫で下ろす。
「ふ、ふん。魔法が出来ないクセにそんな事が出来た所で」
負け惜しみの声がどこからか聞こえてきたが、フェネリーは反論する事はしなかった。
他の人にはできない事が出来るようになったフェネリーだが、結局皆よりも能力が劣っている事は変わらないのだと、フェネリー自信が思っているからだ。
(うう、ここで調子に乗れたらいいけど、ボクの自信の無さが筋金入りなのは、他でもないボク自信がよく知ってからなぁ)
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