第52話「蹂躙開始」

 堀に隔てられた国王とナセル。

 それは容易には越えられぬ人工の障害だ。


 古今東西、城を護ることにことほど特化したものはないだろう。

 巨大な溝を堀り巡らせて、水を張る。


 それだけだ。

 だが、それだけが実に攻めてにとって厳しいものだ。


 埋める資材を持ち込み、水へ投じても不安定。しかも城壁から狙われては満足に作業もできない。


 地下から攻めても水圧が坑道を押し潰す。


 そして、攻城櫓は堀を越えられない。


 結局人力で強引に埋め戻すか、丸太で橋を作るくらいしか突破手段はない。


 ならば、ドイツ軍は?

 王都で最強戦力となったドイツ軍はどうやって突破する?!


 空を舞うフォッケウルフ。

 王都を蹂躙するパンター戦車。

 完全に機械化された擲弾兵たち!


 そして、

 怒りと復讐に燃えるドイツ軍召喚士──ナセル・バージニア!


「さぁ! フィナーレを飾ろう!」


 王都蹂躙、

 お次は王城破壊ッッ!!


 勇者とアリシアをぶっ殺す前の復讐のオードブルは国王で最後だ!

 


 堀が邪魔をする?

 城壁から狙われる?


 ならば、破壊しよう。

 ならば、越えてみせよう。


 俺のドイツ軍に敵などない!!



 さぁぁて……────仕上げと行こうか!



 ゆけッ!!


 砲兵が耕し、

 戦闘爆撃機が鋤きこみ、

 装甲擲弾兵が前進する!!


 ならば、お次はおか艨艟もうどう────戦車だ!


「まずは城門を、まっ平らにしてやれッ!」

了解ヤボォル


 パンター戦車の乗員は軽く答えると、砲塔を操作。

 クゥィィィィィン……と、パンター戦車の主砲である長砲身75mm砲がゆっくりとその先端を城門に向ける。


 狙いは三つ、

 跳ね橋を引き上げる鎖を収納していた左右の塔と、正門上にある防御設備だ。


 多くの城兵が残っているとも思えないが、万が一堀を突破してもあの防御設備から石やら煮えた油を注がれるのは目に見えている。

 実際、僅かに存在する敗残の城兵が、健気に弓矢を構えてドイツ軍を狙う──……。


「やれ! ふっとばせぇぇぇ!」


了解ヤー! ──目標ズィエル敵正門防御ファタァディゴンサ施設ンラァグ!!』


 クィィィィン────ぴたり。


弾種モニション──榴弾グラナァト

 ガシャキ、ゴン!!

装填よしラーデン オケィ!!』


 装填手が榴弾を砲尾に押し込んで、尾栓を閉塞。装填手用の安全スイッチを押して装填完了を告げる。


撃ちますズゥ シースン!』

とっと撃てぇぇぇぇシュネル フォィァア!!」



 ──ドゥゥゥゥンン!! ボォォォン!!!



 発射と同時に着弾!

 ほとんど目と鼻の先だ。外すわけがない。


 パンター戦車の長砲身75mm砲から発射された徹甲榴弾は、魔法防御が施されているはずの城壁を易々と破壊。


 微かに城兵の悲鳴が聞こえた気がしたものの、爆発にかき消されてしまった。


 さらに、ぶっ飛んだ城壁の一部が音を立てて堀に崩れ落ちていき、防御施設は着弾と同時に崩壊し、ガラガラガラララ────!! と、跡形もなく崩れさった。


「震えろ! 怯えろ! 生まれてきたことを後悔しろ!──そして、叫び、泣いて、喚いて、許しを乞え!」


 はぁーーーーはっはっはっ!!


 みろよ!

 あのざまを!!


 あれが勇者の国でもっとも堅固で、強く、偉大な城だとさ!


 正門上の防御設備は一発で大破!

 朦々とした煙を噴き上げていやがる。


 だが、これで終わりではないッ!


 続けてウェイター撃てェェェェエシィィィィセェェン!!


了解ヤボォル続行ウァイダー──続行ッヴァィダァァ!』


 ドォン!!────ボォォォン!!


 砲塔を旋回、次弾も同じ!

 徹甲榴弾を続けて発砲ッ。


 パンター戦車の頼もしすぎる主砲が、正門だけでなく左右に並ぶ出城を次々に射撃。


 その上半分に大損害を与える。


 だが、まだ塔はそびえているッ! 魔法防御とやらは伊達ではない様だが────……長砲身75mm砲の敵ではない!


撃てフォイア撃てフォイア撃てぇぇぇフォィァァアア! ぶっ飛ばせぇぇぇアッパァゼェェェン!!」


 ナセルの言われるまでもなく、パンター戦車に慈悲などない。

 心もなければ憐憫の情などない。


 そして、

 容赦もなければ、外す弾もないッ!!


「──撃てぇぇぇえフォィエェェェル!」


 それから数発の射撃で正門と、出城は殆ど全壊。

 あとには、その残骸を晒すのみ──。


目標ズィエル撃破ッニィダラァグ


 その報告とともに、

 カラガラガラと崩れていく城門。


 かつては城の玄関口として豪勢な門構えを見せていたそれが、ドッパァァァン!!──と、掘に着水しブクブクと沈んでいく。


 さぁ、まずは入口を更地にしてやったぜ。

 お次は渡河をしてから、内部の清掃開始だ。


 砲兵だの航空機でぶっ飛ばすのもいいが、やはりここはナセルと愉快な仲間たちの軍靴で蹂躙してやりたいものだ。


 その前に、まずは────、

渡河デン フルース 準備ウバァキィハン!! 工兵インジィニァ前へフォマァア!」


『『了解ヤボール!!』』


 城壁の敵を駆逐完了。

 渡河点における敵の全ての抵抗を排除────!


 では、はじめようか。

 渡河作戦の開始────!





 さぁ、

 ────工兵の仕事だ!!!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る