第49話「激突ッッ」
リズ………………。
すまなかった。
今なら、俺はお前を救ってやれる。
召喚術Lv5──────。
ドラゴンよ…………。
俺は、またここに至ることができた。
ドラゴン達が再び俺を励ましてくれた。
例え『ドイツ軍』であっても、Lv5の境地に達し、失った物を取り戻したと思ったときに……──────ようやくお前を思い出したよ。
絶対に忘れない! そう、誓ったはずなのにな……。
怒りと復讐の味に溺れていた。
そしてあろうことか、お前のことを……。
愛しき家族のリズ──────お前を忘れていた!
「すまん………………」
すまん、リズ!!
…………行く。
すぐに行くッ。
救いに行く。
助けに行く!!
だから、もう少しだけ待っていてくれッ!
アイツらを、おもいっっっっっッッきり、ぶん殴ってから行くから!
絶対に行くから待っていてくれ。
お前を探す、見つける。助けるッ!!
だから──────!
────いでよ!
中空に輝く召喚魔法陣があらわれ、巨大な鉄の豹が顔をだす。
ズゥゥウンン!!
長砲身75mm戦車砲。
傾斜装甲を採用した、スマートな車体と砲塔。
前方と砲塔、そしてキューポラにそれぞれMG34を三挺。
幅広い履帯と分厚い転輪。
……これが、ドイツ軍の後期を支えた中型戦車、
では、
「リズの居場所は国王陛下、|御《お
ん》自らの口から聞くとしようか……!」
バリケード前にあらわれた美しい形の戦車に乗り込むナセル。
パンターは、今までの武骨なイメージのドイツ軍戦車とは一変しているが、それでも強者たる風格は変わらない。
『
工兵小隊長が敬礼。
彼が
なんでも──彼が言うには、工兵が仕掛ける地雷原には通路があるのだとか。
「頼む」
言葉少な気に伝えると、ナセルも意気揚々とパンター戦車の乗員と意志疎通を図る。
乗員から受け取ったベッドセットを装着すると、拳銃、短機関銃を装備し、キューポラから上半身を乗りだす。
一端の戦車長として、乗員の顔を確かめると力強く頷いた。
「
ドルルン……!!
マイバッハ製のV型12タイプの700馬力のエンジンが唸りを上げる。
ギャララララッララララ!!
Ⅳ号戦車よりも遥かに重々しい重低音。
そして、それを支える鋼鉄の履帯が王都の石畳を砕いていく。
「目標──敵指揮官ッ。国王座上の重騎馬戦車!」
『『『
戦車の中から乗員が答え、砲塔後方から工兵小隊長が答える。
そして、ナセルは打って出る。
陣地の保持を擲弾兵中隊に任せ、歩兵と騎馬隊の掃討を彼らに引き継がせると、ナセル自ら国王と対峙する。
なんとしても、奴が地雷を踏む前にナセルが仕留めるのだ。
「
『
操縦手がギアを上げて増速する。
その動きに合わせて工兵小隊長が的確に地雷原通路へと戦車を導いていく。
「がはははは! 出てきたか、異端者ナセル・バーーーーーーーーージニアぁぁぁ!」
「おうよ! 勝手に死なれちゃ困るんでなぁああ!!」
戦場で向き合う両者!
さて、行くぞドイツ軍よ!!!
増速!
榴弾装填!
機銃、弾ごめぇぇぇえ!!
ガチャガチャと音を立てて同軸機銃と前方機銃に機関銃弾が装填されていく。
『
そして、
『全速前進! 最大速度ッッ』
ギャラララララララッラ!!
操縦手がギアをガコガコと動かすたびに増速していく戦車。
そして、地雷原に飛び込もうとしていた国王の前に躍り出ると────。
「ナぁぁぁぁぁセぇぇぇぇぇぇぇルぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
憤怒の表情で国王が突進してきた。
「突撃じゃぁぁぁあ!」──と、威勢だけは良いが、重騎馬戦車の乗員は結界を張る魔術師だけ。
他に乗っていたはずの護衛や弓手はとっくに逃げてしまっている。
さすがに、付き合いきれなくなったようだ。……あわれな魔術師だけは国王にガシリと抱え込まれて、無理やり防御魔法を使わされているらしい。
「貴様だけは、ぶっ殺す!!」
国王が重騎馬戦車に鞭を入れさらに加速させる。
奴のスキルは馬にも作用するのか、あり得ない程の加速力を生み出す、馬が4頭!
そいつらの脇から生える様に騎馬戦車の骨格と一体化した
あれでパンター戦車を貫こうというらしい。
「ははは! ぶっ殺す、だぁ?」
ぎゃははははは!!!
言うじゃないか、国王陛下どの!!
そりゃぁぁ、
「──────こっちのセリフだぁぁあ!」
リズの居場所を聞き出したらテメェは用無しだ!────その後で、ぶっ殺ぉぉぉおす!!
激突10秒前ッッ!!
「逃げるな貴様らぁぁあ! それでも
対戦車地雷からのパンツァーパトローネのつるべ撃ち。騎兵たちは全滅に近い損害を受けている。
もう、それだけでも戦意を喪失するには十分すぎる。
しかし、ここで巨大な戦車が突如出現。
猛然と突撃して来たならば────もはやこれまで。
普通は逃げる。
誰でも逃げる。
これをチャンスと見ているのは国王くらいなものだ。
反転し逃走を図る騎馬戦車が10台。騎兵隊はもっと早い。こいつらは魔法防御がないまま突撃しているため、ドイツ軍の射撃によって半数が壊滅。
残り半数も地雷原に迷い込み爆散。
僅かな生き残りは国王の命に従い突撃するも、ナセルと工兵小隊長によって短機関銃射撃を受け、あっという間に排除されてしまった。
「不甲斐ない、不甲斐ない、不甲斐ない!!────使えんクズどもが!!」
うがーーーーーーーーー!!!
と一人唸り声をあげる国王。それでもまだ10数台の騎馬戦車が従っているのだ。
スキルの効果もあるのだろうが、腐っても国王ということか。
カリスマ性は多少なりともあるのだろう。
もっとも、
「何人来ようが、ドイツ軍の戦車に敵うかよぉぉおおお!!」
榴弾ッ!!────テェェ!
『
チュドーーーーーーン!
至近距離でぶっ放されたのは、長砲身75mm砲から発射された榴弾!
そいつが騎馬戦車の群れに飛び込み爆裂し、直撃を受けた車両を含む数台を大破炎上せしめる。
「「ぎゃぁあああ!!」」
「ぐぉ!? ひ、怯むなッ────ブチカマセぇぇぇえ」
国王の気合の一声と共に、ギラリと光る
どっちもお互いに突進しているため、相対速度からあっという間に距離が縮まる。
「うぉぉぉぉぉおおおおおおお、クソ国王がぁぁぁあ!!」
「ぬぐぅぅぅぅおおおおおおお、クソ異端者めがぁぁ!!」
衝突3秒前ッッ!!!!!
国王と正面から向かい合うナセル。だが、そこに馳せ参じた護衛の騎馬戦車どもが横合いから突っかける。
ガラガラガラ!──と、耳障りな車輪の音が実に邪魔臭い。
「ちぃ──! 邪魔をするなぁあ!!」
歯牙にもかけたくないとこだが……!
「前方──騎馬戦車、蹴散らせぇぇえ!」
『
正面装甲前面から覗く機関銃の銃口がギラギラと輝き7.92mm弾をこれでもかと前方に送り込む。
防御魔法に阻まれ、銃弾が耳障りな反跳音とともに弾きかえされる。
その響き渡る音も、銃弾を悉く弾き返すも、──ついには射線にいた不運な騎馬戦車が連続射撃を受け転倒。
さすがに突撃中の連射は効いたらしい。
いくら魔法防御で防いでいても、着弾の衝撃までは消せないのだろう。
ドカーン!! と、破砕音を立てて後続を巻き込み数台が大破。
だが、まだまだ残敵はいる。
──しゃらくせぇえ!
ナセルが憤怒の表情で喚くと、
「まとめて掛かってこいやぁぁぁあ!!」
国王も負けじと怒鳴り返す。
両者ともにアドレナリンが出まくりで恐怖心など微塵も感じていない。
「やかましい!! 異端者は死ねぇぇぇええ!!」
激突──────────寸前ッッ!!
パンター戦車の正面装甲に、国王座上の重騎馬戦車の
「貰っっっっったぁぁああああああ!! ただの
死ねぇぇええ──────!!
ゲハハハハと勝ち誇った国王。
しかも
これなら、どんな頑丈な城門でもぶち抜くだろう。
さながら、それは高速で走る破城追のようなもの。
そいつが、パンター戦車の正面装甲80mmの装甲板にぃぃぃぃいいい────!!
ブワァァアッキィィィィィイイイン!!!
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