第28話「ドラゴンの群れvsMG34(後編)」


 ──お、……多すぎる!?



 悲観を口にした瞬間、上空のバンメルが配下のドラゴンの群れに突撃の号令を下す。


 ドラゴン召喚士特有の魔力の動き感知するナセル。

 だが、その量は桁違い……。

 くそ! なんなんだ、バンメルの奴の魔力の量は!?



 ヴォォババババババババババババ…………!



 ……ッ!?


「やばッ!」


 快調に射撃を続けていたものの、ナセルは危機を感じ素早く砲塔に潜り込んだ!


 その直後ッ────。

 ナセルの頭上を真っ赤に燃え盛るブレスが降り注いでくる。


 僅かながら手を焦がしながらも、ハッチを閉塞する。

 残念ながらMG34の回収はできなかった。

 


 キュボォォオオオオンン!!

 ──グァボォォオオアアアア!!

 ────キュボォォォオオオオオ!!



 ハッチを閉塞した後、ジリジリとした熱を感じるに、ブレスの一斉射撃を浴びているのだろう。


「くそ! 物量で来やがった──」

反撃しますギィン ナァングリフ! ただムット主砲とハゥト ウント同軸機関銃 マシンゲヴェーアでは対空射撃イッヒ カィンカァンは向いておりませんフルゥクアヴシーセン


 砲手がヘッドセットを通じてナセルに報告してくる。


「いい! とにかく追い払ってくれ!」

了解ヤボール!』


 クゥィィィィーーン……。


 ペダルを踏めば電動駆動で砲塔が滑らかに動く、砲手は旋回ハンドルと仰角ハンドルを駆使して微調整し、仰角を最大に取ると照準器を覗き込み──発砲した。


 ズドォォォン!

 

 砲塔内に砲煙の噴き戻しが起こり途端に空気が悪くなる。

 しかし、ハッチを開けることができないので換気装置の排気を待つしかない。

 

 だが、その排気を待つことなく装填手は新しい砲弾を装填し、その度に砲手が空に向かって発砲する。


 ドカンッ!


 ──ドカンッ!


 ────ドガァン!


 50mm砲のつるべ撃ちだ。

 車内に、どデカイ空薬莢がゴロゴロ転がる。


 そこから発せられる硝煙の臭いが戦車の中に充満する。さらには、余熱が燻り一気に温度が上がり始めた。


 ──暑いな……。


 油脂の臭い、

 硝煙の臭い、

 軍人の臭い、


 最悪の環境だ────。


 戦果を確認するためナセルはキューポラの視察孔から外を確認するが、その結果を知って愕然とする。


「くそ! 当たってないのか!?」


 ドカン、ドカン! と盛大に主砲が空を撃つが上手く当たらない。


 それどころか勢いを失って放物線を描くのみ。


 ババババババババン!! と、50mm砲の間隙を埋めるべく、同軸機銃のMG34が空を薙いでいく。

 多少は効果があるのか、ドラゴンの群れに突き刺さる手応えを感じる。

 とはいえ、主砲よりもまだマシな気もすると言う程度──それくらいだ。


 空を埋めつくすドラゴンは未だに健在!!


 くそッ!

 打って出るか?


 ──だが、相手はドラゴンだぞ?

 MG34の7.92mmが強力とは言え一発程度ではどうにもならない。


「なにか……何か手は!?」


 ナセルにも打つ手はないが、それはバンメルとて同じだろう。


 それどころか常識に置き換えるなら、

 多数の召喚獣を出している以上、たとえ何らかのアイテムを使っていたとしても、魔力が尽きるのはバンメルの方が先だと思う。


 ……思うが────既に、バンメルの魔力量は常識の範疇から外れている。


 現状、打つ手なし……か。


 やはり、バンメルの魔力切れを待つ戦いは除外すべきだろう。


 ナセルも魔力量は、平均よりもかなり多いはずだ。

 ドイツ軍を召喚して以来、ナセルの召喚獣Lvは次々に上がっている。

 その影響から、ナセル自身のLvも上がっているだろう。


 ドイツ軍Lv0の時にナセルの魔力量はドラゴンLv5を召喚できる程度だったとするなら、実際には今の魔力量はドラゴンLv6~7くらいはあるのではないかと思う。

 

 つまり、ナセルにはⅢ号戦車をまだまだ顕現させることができるし、あと1、2体なら召喚獣を呼びだせる。──はず。


(Ⅲ号戦車をもう2、3体呼びだすか……? それとも歩兵小隊に弾幕を張らせるのも…………いや、歩兵とドラゴンでは分が悪すぎる)


 くそ……。時間を稼ぐしかないのか?

 

 悩むナセルの鼻が異臭を捉える。


「なんだ?」

『……車内温度がテンパガラトゥガァ 上がっていアウトゥシュチュグ ますモタァこれ以上は計器類インストロメント が持ちませんしブロトゥングアップエンジンが爆発ダンモタァ カンする恐れがあります サヴラァヒィン。……砲身も熱をダスハス フゥド持ち始めました オゥス ハゥド


 砲手からもたらされる情報の半分も理解はできなかったが、爆発と聞いて驚くナセル。


「な!? バカな!」


短時間程度のカン コンツゥ 火炎放射ファスティンなら耐える ファィァ ことはできますがシュタンインタンゥこうも──長時間のゾゥ エン アンガ 火炎攻撃はフラメンアングリフ……』


 そりゃそうだ。

 鍋だってちょっとくらい火に少しかけたくらいじゃ熱くならない。


 だが、長時間熱すれば……どうなる? そりゃれ真っ赤に焼けてくるだろう。


 今まさにその状態と言うわけか!


「クソ! ……もう一体戦車を出す! 攻撃を分散させるしかない────出でよ、」 


 召喚獣ステータスに浮かぶⅢ号戦車。

 そして、


ドイツ軍Lv3:

※  ※  ※:

ドイツ軍Lv0→ドイツ軍歩兵1940年国防軍ヴェアマハトタイプ

    Lv1→ドイツ軍歩兵分隊1940年国防軍型、

       ドイツ軍工兵班1940年国防軍型、

       Ⅰ号戦車B型、

    Lv2→ドイツ軍歩兵小隊1940年国防軍型、

       ドイツ軍工兵分隊

       Ⅱ号戦車C型、

       R12サイドカーMG34軽機関銃装備

    Lv3→ドイツ軍歩兵小隊1942年自動車化

       ※(ハーフトラック装備)

       ドイツ軍工兵分隊1942年自動車化

       ※(3tトラック装備)

       Ⅲ号戦車M型

       メッサーシュミットBf109G戦闘機

 (次)Lv4→ドイツ軍装甲擲弾兵小隊1943年型

       ※(ハーフトラック装備)

       ドイツ軍工兵分隊1943年型

       ※(工兵戦闘車装備)

       ドイツ軍砲兵小隊

       ※(10.5cm榴弾砲装備leFH18/40

       Ⅳ号戦車H型、

       ユンカースJu87D急降下爆撃機

    Lv5→????

    Lv6→????

    Lv7→????      

    Lv8→????

    Lv完→????


 …………。


 ん?


 ま、

 待てよ────……。

 もしや、これって……。


 ナセルは召喚獣ステータスを呼びだして、確認する。


 歩兵、

 工兵、

 戦車、


 そして……。





 そこには────。




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