第28話「ドラゴンの群れvsMG34(前編)」
『
ズドンッ────!
砲手の号令と共に発射されたのは、Ⅲ号戦車搭載の長砲身50mm砲から発射された徹甲榴弾。
本来、地上の目標を撃破するためのもので、航空目標を狙うようには出来ていないが……。
向こうから一直線に突っ込んでく来てくれれば別らしい。
着弾の衝撃でビクリ! とドラゴンの体が震える様までまざまざと見えた。
超至近距離でぶっ放した50mm砲弾は適確にドラゴンを貫き、口から尾まで抜けきり──、一撃で滅却してしまう。
あのレッドドラゴンが、だ。
「すげぇ……」
Ⅰ号戦車やⅡ号戦車もすごかったが、こいつは桁違いだ。
砲塔に搭載された同軸機関銃に大砲──。
おそらく、これが戦車というものの真の姿なのだろう。
ッ!!
いや、──今は感心している場合じゃない!
ナセルは頭上をスッとんでいったバンメルと目があったとき、いやな予感がした。
すぐに奴の姿を目で追うと────。
「何だと!?」
そこには、青い体とシャープな顔つきの巨大なドラゴン……フロストドラゴン(大)がいた。
いや、それどころか、空中に多数の召喚魔法陣が現れてゾクゾクとドラゴンが産み落とされていく。
その数────無数!?
「ばかな! バンメルは召喚Lv6だろう!? な、何でそんなに一気に召喚できる!」
人間は魔力量が限られている。
だれでも無限に魔法が行使できるわけではなく、当然ながら連続で使用すれば枯渇するものだ。
唯一の例外は、伝説の
もちろん、バンメルは
奴はかつてのナセルと同じドラゴン
ならば、いいとこ──ナセルよりも少しばかり魔力が多い程度だろう。
魔力も体力と同じで年齢によって増減するらしいことを考えると、召喚士Lvとバンメル自身のLv、その両方がいくら高くともあんなに召喚できるわけがない。
しかも、ナセルはレッドドラゴンを撃破した。
──つまり、バンメルが自ら召喚を解いたわけではないので、レッドドラゴンを召喚した魔力は霧散しているはずなのだ。
ならば、フロストドラゴン(大)を召喚する魔力などあるはずが────!?
レッドドラゴン(大)と同程度の魔力を必要とするフロストドラゴン(大)──。
これらを召喚しようとするなら、
すくなくとも、ある程度のリードタイムは必要になる。
個人差はあるとは言え、数分や数秒で魔力が元に戻るものではない。
ナセルでも、ポーションなどの援助がなければ半日から丸一日使えないこともある。
もっとも、この辺は非常に
だとしても、バンメルのように直ちに召喚できるなど──ありえない!?
「くそ!」
だが事実は事実。
バンメルは未だに余裕を崩さず、召喚術を行使し続けている。
それをおいても、バンメルの魔力量は異常だ。
「くそ──マジックアイテムか! ……魔法兵団の元帥だ。いいもの使ってるんだろうさッ」
何かしらカラクリがあると見て、判断を切り替える。
ゴロツキ冒険者から剥ぎ取った装備のナセルとは大違いだ。当たり前のことだが────くそ!!
バンメルの無力化には、魔力切れを待つ手はない。
最悪、無限に産み出せると判断すべきかもしれない。
実際に、Lvは様々だが色んな種類のドラコンが空を舞い狂っている。
──まさに、群れだ!
「これが
多数のドラゴンが舞っている空は、真っ黒に埋め尽くされていた。
それ等の多くは、小型や中型が占めていたが──それでも圧巻だ。
その群れを統率するように悠々とフロストドラゴンに跨がるバンメル。
ニヤリと顔を歪めていやがるのが、ここからでもわかった。
「ちぃ! いい気になるなよ──全部、叩き落してやるッ」
手元の銃架には、対空機関銃用の照準器が取り付けられたMG34がある。
弾はさっき撃ち尽くしたので再装填中だが、コイツの連射力は群を抜いている。
ガシャ、ジャキ──。
ドイツ兵にレクチャーを受けたというのもあるだろうが、自分の召喚獣のためだろうか……。
MG34──、
初めて触れたというのに、なんとなく扱いが分かるのだ。
それはドラゴンに対して、以心伝心──ナセルの意思を……種族を越えて伝えていた、かつてのあの時の感覚に近い。
流れるような動作でメタルリンクで連結された250発の金属ベルトリンクを装填し、コッキングレバーを引く。
ガシャキッ!!!
円環型の照準器の中に無数のドラゴンを捉え──。
そして、銃床を肩に付けると空に向かって咆哮した!
────墜ちろぉぉぉぉおおおおッ!!
そうとも!
MG34とともに吼えるのだ!
なんか、こう──すごくテンションがあがるのだ。バリバリ撃っているとぉぉぉおお!
ッ、
発射ぁぁあ────!!
ヴォバババババババババババババババババ!!
まるで、獣の咆哮にも聞こえる連続発射音。
時々混じる曳光弾が光の矢の如く目標に向かっていく。
「うぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
空を埋め尽くすドラゴンの群れ。
これならどこを狙っても当たりそうだ。
実際、小型竜などはMG34の対空射撃によって何頭も仕留めているらしく、櫛の歯が欠ける様にドラゴンが光の粒子になって消えていくが──。
ぐ───!
「お、……多すぎる!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます