第53話:効かない刃
「ご褒美を意図して、求められるように出来ているのが、生物としての意識・・・」
ミランさんがブツブツ言いながら、魔法を唱える。
「AIもご褒美・・・リザルトとなる起点が意識と言われてもいるがノォ、作った人の意図にもよるワイ。」
アナハイムさんも魔王対処をしながら、何かを考えているようだった。
「出たよ、システムの根源となる部分を分析して、攻略方法を練る。呟きミランと小声のハイム。」
「そんな悠長に二人を見ていると、精神力、回復薬空っぽになっちまうよ!シャナン!もう少し丁寧に攻撃避けな!」
「え〜結構これが精一杯だよ!」
シャナンさんが魔王の攻撃を寸のところで避けてはいるけど、少しずつ体にヒットしている。
少しが度々重なる度にキョウコさんが回復魔法を唱え治しているけど、頻度が多くキョウコさんが攻撃に参加できていない。
「ダァ!!!ジョナンサン!前みたいにサクッと倒してこっちに加勢に来てくれ!」
ミハエルさんの声は魔法石からもガラスの壁の向こうからもよく聴こえる。
対する僕は、手応えの無い攻撃を繰り返している。
「そうは言われましても・・・」
前はどう対処したんだっけ!?
カィーン!
魔王の体に剣をぶつけても悲しく弾き返される鉄板を打ち鳴らすような音が返ってくるだけだ。
「シャドウエクスカリバーが攻略のコツってわけでも無いみたいだね。」
「その前に目の前にいるのは、本当に魔王ですか?全然攻撃が通らないのですけど。」
汗を拭いながら、息が上がって来た息を整えた。
「弱くなってるけど、間違いなく魔王だね。3等分されたからかな。。。。」
「1/3になっても俺たちの戦力が1/5だから逆に辛い!」
「しかも私達、倒せて無いし!」
「それ言うなぁ!」
「言っちゃいやん!」
シャナンさん、ホーウェンさん、ミハエルさん、が魔法石から、ヤヒスさんの言葉に突っ込んだ。
「ここで唯一倒した経験があるのは、ジョナサンだけだ。期待しているぞ!」
プレッシャーが重くのしかかるだけ!
「ジョナサン!」
再びローリアさんが注意を促してくれたけど、今度は間に合わなかった。
ドグッ
鈍い音がして、体全体的に衝撃的が走った。
人の3倍はある魔王の拳が体全体にヒットした。
幸い当たる事を意識していたので、ヒット直前に受け身はとれたけど痛い!!
本日2度目のふっ飛ばされる大ダメージ。
着地だけでもちゃんとしなきゃという意識がなんとか、地面にぶち当たる事を回避した。
もう少し油断していたら、捻挫もしていたかもしれない。
「ジョナサンこれで回復!」
キョウコさんが、ガラスの小瓶を投げ渡してくれた。
僕はそのキャップを取り一気に飲み干す。
空の瓶は景気づけに地面に強く叩きつけるが、ガチャンとガラスが割れる音が聞こえた所で、意識がふらついた。
「あっ・・・キョウコさんこれ・・・・」
「カレンから持たされた、ジョナサン特製の回復薬よ!」
カレンちゃぁぁぁ〜〜ん!!
明らかに回復薬ではなくて、アルコールだった。
しかもアルコール度数が高い。
カレンちゃん特製回復薬と聞くと子供の頃、臭ダンゴムシやら、腐敗液やら混ぜられた物を作って飲まされそうになったのを思い出した。
それと比べるとマシなんだろうけど。
翌日匂いを嗅いだだけでも気持ち悪くて寝込んだなぁ。
と、戦闘中に昔話に浸るのはマズイ!!
ヒック!
「あっだめだ、これ。」
呼吸も意識も整えられない。
「アルコールは20歳になってから」
「ここにいる全員20歳以上だから大丈夫じゃ。魔王は知らんが」
いや、そういうことじゃなくって。
突っ込みたいけど面倒で、声に出せなかった。
「スーパージョナサンモード発動!」
「そんな、乱暴な・・・ヒック!」
みんなの目が期待に満ちていた。
そんなに期待を向けなくても、やりますよ!
僕はふらつく足に、集中力を精一杯乗せ魔王に向かって駆け出した。
魔王も僕の突進に気が付き、対抗して、剣を振り下ろす。
僕はそれを精一杯ジャンプして交わしてそのまま、腰の位置に・・・
さっきより高く飛べている!
これはいけるかも!
そう思いながら、精一杯剣を振り下ろた。
カィーン!
「あれ?」
この乾いた音は良くない音の気がする。
ふわつく意識のせいで良くわからないけど、体が魔王から離れていく方向へ飛ばされた。
あっ、効いていない!
いや、魔王が少しひるんでいる。
斬り傷は多少は付いている。
着地をして、少し様子を見てると魔王もすぐに体勢を整えて攻撃体勢に戻った。
「まぁそんなに簡単に上手く行くとは思ってなかったよ。」
「ズミバセっっ・・・ヒック!」
謝罪の言葉もままならない。
でも、魔王の攻撃が止まるわけでもなかったので、気にしている暇もなかった。
「どんまいジョナサン!あきらめないで!」
ローリアさんからの励ましの言葉をもらったけど、挫折感の方が大きいちょっと立ち直れなさそう。
「カレンを連れてくればよかったかしら?」
「特製回復薬が不良品ですよって苦情いれる・・・」
「ダメっです!!彼女を危険な目に合わせたく・・・ヒック・・・無い!」
カレンちゃんの事を気にしつつ、目標である冒険者Aを見るが表情が全く変わっていない。
でも、僕を見下したように見えるのが気に喰わない。
あそこまで遠いいけど、どうにかして行かなきゃ・・・
「ジョナサン左から剣!あうっ!」
フォローの声と同時に触手に締め上げられるローリアさんが苦しそうに悶えた。
「テメェ!ローリアさんに何してる!!」
自分でも普段使わない汚い言葉を使ったと思ったら左手に持っていた剣に力が入り、注意を促された、剣を持つ魔王の手首に切りつけた。
その時何故か、魔王の攻撃は体を動かして攻撃を避けようとは思わなかった。
魔王の手首がもげた拍子で、僕の体の横をもげた手と剣が頬を擦り後ろに放り出された。
風を感じてしばらくすると頬が熱い。
剣もいつもより重たく感じる。
そうだモタモタ魔王と戯れあってなんていられない!
早くローリアさんを助けないと。
再び僕の足は前に駆け出していた。
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