第39話:女性の気分

光の筋は見たと言う情報はいくつか出て来たけど。それが冒険者Aにつながるかどうか怪しい情報ばかりだった。

「ちっ三流冒険者ね。装備の見た目はいいけど、もう少しイベントフラグに意識持てないのかしら?」

「最近の若い子はデートのお誘いも、全部ネットで攻略法を追いかけているだけ。」

「私たちの為にもう少し足を運んで調べてくれるような人はいないのかしらねぇ。」

「ジョリーン?も、もう少し愛想良くしなきゃ。」

「無理がありますよ。」

そう僕ジョナサンは今、女装している。

しかも女性名に変えられた。

多分冒険者さんは調べればすぐに本名と違うと気がつくとは思うんだけどそれでも、呼ばれ方ですぐにばれるよりましだということで今の僕はジョリーンになりました。

ローリアさんとカレンちゃんには見られたくないなぁ。

「残念ねサイズ、あわなくて。」

「残念じゃないです!」

一応カレンちゃんと下着屋を出た経緯は話したので、持っていた下着の事は理解して貰えたようだ。

でも、サイズがあっていたらきっと女装と同時に身に付けさせられて変態扱いされていたことは間違いない。

・・・これをカレンちゃんが試着してたら・・・

・・・

「おわっ!」

沈黙した僕をシャナンさんがジッと見ているのに気が付いて焦った。

「顔を緩めて何を考えていたのぉ〜?」

シャナンさんはツバ付き帽子を深く被って顔を誤魔化している僕の表情を覗き込んだ。

「緩めてません!!」

そのまま鸚鵡返しで返答してしまった。

「ふ〜ん。」

何やら微妙に不純な事を考えてスミマセン・・・

「ジョナサン女装に目覚める・・・次の見出しはこれで決まりかな。」

「見出しって何ですか!?」

「やー冗談だよ冗談!!別に情報サイトを作って広告収入を増やそうだなんてこれっぽっちも考えてないよ!」

「やけに具体的じゃないですか。」

「さぁ何のことかな〜。」

シャナンさんはそう言うと後ろを向いて口笛を吹いた。

誤魔化しているのがさらに不安になる。

自分の恥を拡められても困るんですが、今はここで男性陣とも遭遇しない事を祈るばかりです。

「程々にしなよ〜。」

「はぁ〜い」

キョウコさんが言うとシャナンさんも大人しくなる。

片っ端からNPCや冒険者さんに話かけて情報を探って位入るモノの、意外と僕が追っかけ回された人だと、気が付かれてない。

そう言った意味では、女装は成功ではあるんだけど。

「普通に歩き回りたい。」

スカートの下から吹き込む風で股下がスースーする。

それに腕をあげにくい上に、腰も窮屈。

コルセットは苦しくて死にそうだったので全力でお断りした。

女性はよくあんな物を身につけて平気でいられるんだろう!?

そりゃ綺麗な女性はいいとはおもうけど、

カレンちゃんはともかく、ローリアさんもウエスト閉めたことあるんだろうか?

そんな事を考えていたらキョウコさんがいきなり足を止めて、建物の間を凝視した。

「ねぇ、ここの通りの奥から変な声が聞こえる。」

キョウコさんの目線の先は、いかにも何か出てきそうな暗い通りだ。

「こう言ったところにイベントって隠れているのよね。」

普通の女性だったら恐いから近寄らないと思うんだけど、さすが冒険者さん。

ズケズケと入っていく。

二つほど曲がった奥の小道からその声がした。

「オラァ!さっさと言わねぇかぁ!」

少し滑りのあるような男性の声。

冒険者さん3人が足を止めた。僕は歩き慣れない格好をしているせいもあり、キョウコさんの背中にぶつかった。

「すみません。」

キョウコさんは何も言わずに手を挙げて気にしていないと合図した。

立ち止まって奥の様子を伺っている。

声だけだと、かなりヤバそうな雰囲気何だけど。

僕は3人の女性の隙間から前を見た。

・・・3人の男が裸で絡まっている!

「ほらぁ、お前のピーがこれを欲しがっているんだろう?」

「ああっそれは!!」

「これがあれば美しいお前のピーがツヤッツヤのビッグで張りがでるぞ。」

「ぐっでも・・・」

男性はその取引は苦悩の表情をして悶えている。

「きっとお前のピーを見てみんなが羨ましがる事間違いなし・・・でもな・・・」

影でよく見えないけどそう言う男は、言葉を溜めて勿体つけた。

「そこの男、けぇ〜こう!気が短いんだ。」

煽っている男性2人が壁際に立っている黒いサングラスを掛けた男を指さした。

何かの闇ブローカーの格好をしたドゥベルさんだった!

襟のたったシャツに黒い背広で、ヤバイ人になっていた。

更に目を凝らして見ると、上半身裸で尋問しているのは、ミハエルさんとホーウェンさん!!

「わかった、わかったから、それを早くくれ!もう我慢出来ない!」

「情報が先だ。」

「本当に教えればそれをくれるんだろうな?」

「内容次第だ。」

「くっ。」

男は荒い息で苦悩の表情を見せた。

「そうか、いらないか。じゃぁ、ここまでだな。」

「まっまってくれ!言う言うから・・・」

そう言うと男は苦虫を潰した様な顔で口を開いた。

「アンタたちが探している光の筋だが、確かに見た。スラムの3番街道沿いの空に西へ向かって一直線にとんでいったよ。道がちょうど東西に向いている通りだから間違いなく西だ。ただ・・・」

「ただ?なんだ?」

「その光が通った後、3番街の宿に何かが落ちて来て天上に穴が空いたんだ。」

「ただのボロ宿が壊れただけじゃないのか?」

「いや間違いない、俺がこの目で直接見たんだ。実際に気になってすぐに、その宿屋にも行ってみた、店主は驚いて腰を抜かしていたが、その落下物は3階建ての天井床を突き抜けて

1階のカウンターまで突き抜けていたんだ。」

「ほう」

相槌はうったが、興味はそこそこと言った様な返事をホーウェンさんはした。

「落下物を見たら光を全く通さない真っ黒な長太い針みたいのが天井から1階まで突き刺さってて、政府が進める新しい区画整理を始めたんじゃないかと噂になり始めている。この都市の環境課があそこを整理をしたがっていたのは知っているからな。」

「その黒いものには触ったのか?」

「ああっ得体のしれないものだったから手持ちのフライパンで突いたら、感触もなく吸い込まれそうになったから、慌てて引き戻したら、吸い込まれそうになったフライパンの箇所が見事に欠けて無くなってた。」

ここいいる全員がその話を聞いてうなずいた。

間違いなく冒険者A関連だ。

「その宿の名は?」

「オフラスハイム、店主はオックスフォード」

「スラム街の店主にしては、いい名前ね。」

シャナンさんがそう話すとやっと、男性3人は僕達が近くにいたのに気がついた。

「もういいだろ、情報はこれで全部だ。」

そう言うと男は手を差し出した。

「ほら、報酬だ。明日、同じ時間にもう一度ここに来い。あとの半分は、情報が正しかったらくれてやる。」

ドゥベルさんから缶をうけとると男は顔を歪ませた。

「ふへへっ!これで俺もこれで俺も・・!」

そう言うと不気味な言葉を残して、走って言った。

「側からみると、まるで変態チンピラだね」

先にキョウコさんが曲がった通りの先にあるものを一瞥してそう言った。

いや、あれはまるでじゃ無くてただの変態にしか見えなかったです。

「あえてピーっていうから怪しさMAXだけどわざわざそういう必要があるのかい?」

「気分だよ気分、普通にプロテインと言っても面白くないだろう?」

「それに特製のプロテインだよ。筋肉の張りツヤをいい感じに見せてくれるボディービルダー用の品だ。」

「何もこんな世界にもプロテインなんて作らなくても良いのにね。」

「気分を盛り上げるには大事な嗜好の逸品だ!」

「ところでそこのお嬢さんは?こんな怪しい通りに来るなんて危ないですよ。」

「僕がそこまで送っていきましょう。ついでに、お名前と連絡先を・・・」

そう僕にミハエルさんとホーウェンが近寄って掴まれと肘を出してきた。

「・・・いつもこんな感じでナンパされているんですか?」

「ん?ん〜〜〜〜?ジョナサンか!」

「今はジョリーンですので、ヨロシクお願いいたします。殿方。」

やけになって少し女性らしく、スカートの裾を持ってお辞儀をしたら、ドゥベルさん、ホーウェンさん、ミハエルさんの目が点になった。

「ん〜ちょっ無理があるぞ、ツバ付き帽子被っとけ?」

顔覗くまで気が付かなかったのに、もう興味を失ったようです。

「それよりも、スラム街3番街だっけ?」

「ちょうどワシらもそこの情報を手に入れた所じゃよ。」

クランの連絡魔石から声がした。

「じゃぁ合流して一緒に行くか。何が出るかわからないし。」

「そうだカレンちゃん!」

「安心して、こっちで合流しているよ。あ〜でも彼女をスラム街へは連れていけないかな。」

ミランさんが、ここのスラム街の酷さを想像して彼女に気にかけてくれた。

「嫌よ!汚いし、油断すると何されるかわからないし。」

「という事で、大人しく宿に連れて行くよ。僕はこの街で用意した素材でスキル上げをしなきゃだし。イベントは大人しくこの魔石と過去振返り映像(イベントログ)で追ってくよ。」

「よろしくお願いいたします。」

僕は彼女の事をミランさんに託すと、じぶんも女装の格好じゃ何をされるかわからないからすぐに男性の格好に戻った。

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