第33話:大きな扉

翌日、僕と冒険者クランの皆さんと一緒に魔王の間へ行くことになった。

先にいくつかのクランが場所を調べていたが、何も出てこなかったと話は聞いる。

だけど、自分たちの目で確認して見る事にした。

例の魔王の部屋の扉の前。

紋章官ウォーレンさんの手持ちの魔法石アイテムで再びここに来た。

改めて見ると荘厳で重圧な扉で、何か押し返されそうな雰囲気がある。

冒険者Aの時は吸い込まれそうで、ここは押し返されるか。

「そういえば紋章官ウォーレンさん。一つ聞きたい事があったんです。」

僕は何気なく紋章官ウォーレンさんに気になっていた事を聞いてみた。

「ジョナサン・グリーンリーフ。今は共に旅をする仲間です。ウォーレンと気安く呼んでください。私もジョナサンと呼ばさせてもらいますよ。」

「はい。ウォーレンさん。」

正直、呼び捨てなんかして粗相を起こさないか自信が無かったけど、本人がそう言っているの無下に否定してもいい印象を持たれない。

ここは素直に好意に『さん』付けで呼ばせてもらおう。

「それで何でしょう?」

「えっとですね、冒険者Aとの対峙した時、いろんな物が闇に吸い込まれてましたけど、衛兵さん達はそんな気配がありませんでした。あれは一体・・・・」

「ああ。あれはですね、特攻をかける前に衛兵に対重力魔法を掛けていたのです。

貴方が身を呈して、冒険者Aに気を引きながら近付いてくれたお陰で、その事に気がつき、我々も準備を整えて攻撃を仕掛けられたのですよ。」

「なるほど。」

僕はただ恐怖に怯えながら話し掛けていただけなのに裏では、いろいろ準備していたのですね。

でも相手との距離を見誤ったら憲兵さんたちあのまま闇に引き込まれていたんじゃないかと思った。

皆んな尽く法務局の建物のように消されていたかもしれない。

そう思うとゾッとした。

「重力魔法使えるのか?」

「ええ、身内に掛ける分には出来ますよ。」

「っ身内限定かぁ!」

残念がるホーウェンさん。

「普通に敵に使えたら拘束は簡単だったのにのぉ。」

「そりゃ、敵に出来たら相手を押し潰すことも可能だものね。」

「でも、冒険者Aに衛兵さんが近づく為には有効だった。」

僕はその魔法を有効的に使えないか考えてみた。

「世の中そう簡単にはいかないか。」

「冒険者Aの拘束方法は別で考えなきゃな。」

確かに前にとらわれた時は自分から捕まってくれた感じがある。

今度もそうなるとは限らない。

「さて、皆んな準備はいいか?」

ドゥベルさんが皆んなに声をかけた。

「おう。」

「おっけー」

「万全だ。」

「ミハエルは?」

「今トイレからもどった。大丈夫だ。」

最後にドゥベルさんは僕を見た。

ぼくは頷いて返答を返した。

誰もいないはずの魔王の間に行くにしては準備はしっかりしている。

油断はしない。

それがこのクランの強みなんだろうなと思う。

「それと、後で政府から発表があるけど、各位、自分のアバターは大事にしておいてくれ。」

「それは元の世界のお仕事場からの発表か?」

「いや、もっと上からの発表になる予定だ。」

「なんか大事そうだな。」

「かなり大事だ。」

「ドゥベルの口からは直接言えないって事だな。今は内容に気にしててもしょうがない。あとで詳細を聞くとして・・・」

「さて、行くか。」

僕は、この中での記憶がもう殆ないのと、ここから離れると結構強いモンスターがウヨウヨしているので、全く緊張が解けなかった。

少しは強くなった実感はあるものの、まだ僕にはこの場所は早いって事は、よくわかる。

何よりもこちらが扉前から出てくるのを待っている口を開けてヨダレを垂らしているモンスターが・・・

「ひっ!」

あの鋭く尖った牙たちに頭挟まれたらひとたまりもない。

置いてかれないように皆んなについていった。

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