第34話:魔王の座
中に入ると暗くてよく見えなかった。
目が慣れるのを待っていると徐々に、みんながそれぞれ四方に散らばり警戒していた。
「ほう、いきなりここを訪れ我々を探し当てるとは感がいいな。」
聞いた事がない声が正面からした。
みんな武器を構えると四方の壁に炎が灯って、部屋の中が薄気味悪く明るくなった。
やがて目が慣れると、部屋の中央に大きめの豪華な玉座に腰を下ろしている人とそれを取り囲むように10人ほど・・・全てぼくと同じNPCだ。
あの玉座はこの部屋の奥中央にあるって事は魔王のものだろう。
太々しく座っている男がこちらをじろっと見つめる。
チョットづつ目が馴染んでくると、その風貌は囚人服。
だけどものすごく、威圧感を出している。
「元盗賊団の党首だった、ゴールデン・マネーサックスですね。」
ウォーレンさんが手元の指名手配書を見ながら言った。
てことは、他の人達がやっているハズのイベントにあたったわけだ。
僕は少し警戒したけど、他の人は全く違った。
「なんだ、ハズレだ。」
「がっかり〜」
「がっかりとはなんだ!がっかりとは!!」
先程と違って座っていた男が憤慨しながら立ち上がり僕たちを指差した。
「俺たちはいつになったら刑期開けるのか、わからないまま地下牢に放置され、やっとの表に出られて必死の思い出逃げてきたってのに、あっという間に見つかっちまうってどう言うことよ!」
「こんな分かりやすい場所にいちゃぁねぇ。」
「そりゃ見つかるわ。」
「あ〜そうかもなそうかもな、だからせめて大物の悪っぽく振る舞ってみたっていうのにぃ!」
唾が飛ぶほど早口で喋る彼は、話終わると息を切らした。
「うるさいなぁ。」
「こっちはそれどころじゃない。」
「ゲス相手にする暇はないんだよ。」
そう言われて一刻、沈黙してしまった。
目の前にいるゴールデンなんちゃらはワナワナと震えた。
「お前ら・・・そこまで、コケにしてくれるか・・・」
「いや、言ってるのは女子だけだから。」
ドゥベルさん、ミハエルさん、ホーウェンさん3人が無い無いと手を振る。
「兄貴、奴らが余裕こいていられるのも今のうちでっせ。」
「そうだな兄弟」
ゴールデン・マネーサックスは急に余裕を取り戻し背中を玉座に預けた。
「お待ち下さい。彼らの武器・・・」
ウォーレンさんが注意して彼らの手にしているものに注目した。
「よく気が付いたな。」
そういうと彼はいやらしい表情を浮かべ、頬擦りをするように剣を舐めた。
「これは、あの伝説の武器!エクスカリバーだ!!」
クランメンバーみんなが目を煌めかせた。
「奴らが、この短期間に手にできるような物じゃない。」
「誰かが手引きをしたか?」
「レア武器を?トレード禁止武器だぞ?」
「ぱっとみても全員持っている。あれ、関連する敵を倒すのは苦労しなくても、素材取得に手間掛かるだろう?」
「まーいいじゃん。どうせうちらは使う事ないんだし。」
「いや大事な事だ、冒険者Aに繋がっているかもしれん。」
「だが、何かのアレで換金できるなら・・・」
クランメンバーのみんなの瞳が色めき出した。
「倒して奪って売っ払っちまってお金にしよう!」
ヒソヒソ話でマネーサックスに聞かれないように話をまとめた。
まるで逆強盗な会話・・・
「ジョナサン、あれ買い取って貰うと幾らぐらいになりそうだ?」
「ええとレア装備のエクスカリバーは、通常はトレード禁止武器なので売れません。」
「そうだよな。」
「売れるとしたら?」
「僕のところでは買取はしていないのですが・・・相場として。」
みんな集まって話を聞きに来る。
ドゥベルさんと皆んなに耳打ちで価格を伝える。
「んじゃ、さくっと済ますか。」
急にやる気になってくれて何よりです。
「あくまで参考価格ですよ。」
「カネェ!!」
「オォカネェ〜!!」
心の叫びが声になって女子陣から漏れています。
その声は聞こえていない様だけど、マネーサックスもこちらがやる気になってくれたのを少しは嬉しく思っているようだった。
みんな自分の武器を取り出して構えた。
「まて」
アナハイムさんがみんなを制止した。
「え〜なんで〜早く済まそうよ〜」
「時間かける必要なんて無いじゃん。」
ブーブー言う女子陣にアナハイムさんは落ち着いて話し始めた。
「ああ、時間をかける必要がないし、うちらが戦ってもよいが・・・」
急に僕の方を向いた。
みんなの視線も僕に集まる。
やな予感。
「ジョナサン、お主、経験を積むために一人で倒してくるんじゃ。」
やっぱりぃ!
「無理です!無理です!僕は戦闘経験そんなにないのに。」
かなり精一杯拒否してみた。
「そうだな。」
諦めてくれたかな?
ドゥベルさんは武器を収めて話を続けた。
「基礎はあるとしても、戦闘経験を増やすにはいいかもな。」
肯定の方でした。
併せて皆さんも武器を収める。
ちょちょちょ!本気でやらせるつもりですか?
「確かに、早いところ僕らと同じところまで上がってくれないと、ジョナサンの防衛戦にしかならないね。」
完全に僕の意思はスルーされた。
「ほらほら、手持の武器も格上だし。」
シャナンさんが人差し指を僕の胸に滑らせて耳元で悪女の様な撫で声で囁く。
キョウコさんもシャナンさんの反対側から僕の方に腕をのせ耳元で囁く。
「は・や・く、つよくなって(ハート)」
人差し指を僕の胸の上で転がし、最後に胸をトンっと弾いた。
シャナンさんには悪いけど、キョウコさんの大人の魅力の破壊力は凄かった。
強くなるどころか緩んでしまいそう。
でも目の前にいる身長の低い幼児体型のヤヒスさんが棒キャンディを舐めながらジーと見ているので、我に返される。
子供の前で青年男子の威厳をここで失墜させるわけにもいかないので背筋を伸ばして気を引き締めた。
「なんだそいつ、誰かと思ったら、オーフェンベルクのしがない武器屋の主人じゃないか。」
マネーサックスの周りの部下が言った。
しがない武器屋の主人で悪かったね。
「そいつが相手かよ。」
「まぁこいつの試し斬りにはもってこいだな。」
おやっ?試し斬り?
まだエクスカリバーを使った事が無い?
「じゃぁ、後宜しく〜」
そう言うとシャナンさんが僕の背中を押して彼らの前に送った。
ちょっとバランス崩したけどすぐに体勢を整えた。
本当ですか?マジですか?一人で戦うのですか?
ちょっとそこまでお出かけって感じで送り出されたけど、どうなんですか?
「えへへへ」
当たり前だけど、逃亡犯一団に愛想笑いをしても、彼らの武装が解除される様子は無い。
「あの〜おとなしく捕まってくれませんか?」
「あ〜〜ん?」
「馬鹿かお前は?」
「やっと自由になったのにハイそうですかと言って捕まる馬鹿が何処にいる?」
そうですよね。
「では武器は、何処で?」
ウォーレンさんが眼鏡を光らせ聞いた。
ファンタジーゲームでは、最強の武器の一つそれが、マネーサックスの後ろにたっている周りの取り巻きも全員手にしている。
皆んな完全に優位に立っているという、悪い目をしている。
「知りたいか?」
僕たちは返事をせずに、沈黙で返答を返した。
「そーかそーか、お前たち俺たちの武器がどうしたか聞きたいってよ。」
振られた周りの取り巻きはフヒヒヒと不気味な笑いで返した。
「俺たちに勝ったら教えてやらないでも無い。」
周りの取り巻きも早く武器をふる痛くてうずうずしているようだった。
「だが無理だな。これだけの装備これだけの人数相手にお前たちが勝てる道理がない。」
「つまりお前達は知る術もない、どうせここで死ぬんだから同じか!」
完全に武器の優位で押し切る気だ。
だけどこちらの冒険者さんには余裕があった。
戦わないからでもあるけど・・・
「長いなぁ。」
「飛ば(シナリオスキップ)したいわぁ」
「雑魚がよく言うセリフ。」
なんか目の前のマネーサックスの肩が震えている。
「そう言うお前ら!こう言うイベントは大好物だろ!?」
マネーサックスが剣で僕たちを指して吠えた。
「むさ苦しいだけのイベントはどうでも〜。」
ミハエルさんはこれ以上相手にしたく無い様子。
「ちゃっちゃと倒して吐かすか。」
「ジョナサンがんば!」
ちゃっちゃと倒さなければいけない条件(ミッション)までついてしまった。
「何をぶつぶつ言ってやがる!!怖気付いたか!!」
ええ怖気付きましたよ。今まで冒険者さんがいるから何とかなると思っていたけど・・・
カレンちゃん、クラリスさんお店の事は頼んだよ・・・
「ひやっ!」
いきなりマネーサックスの取り巻きの一人が斬りつけてきた。
僕は大勢を崩さずかわしたが、いきなりだったので、心の準備が追いついていない。
「ひるむなぁ〜!ジョナサン!」
「腰入れてかかっていけ!」
まるでカウチポテトでコロッセオ闘技を観戦会をしているようにクランの皆さんは早速後ろに下がって応援の声を投げてくれる。
だけど、僕は戦う体勢を取る前に確認したい事があった。
「ちょっとまって。あなた方、ローリアさんってヒーラーの冒険者さんはしっていませんか?」
こんな時にも僕は丁寧語使っている自分自身に、腰の低さを実感した。
「あ〜ん。」
全員、頭悪そうなアホ面で僕を牽制する。
「それも俺たちに勝ったら答えてやるよ。」
そーですか、そーきますよね。
しょうがない。
覚悟を決めて対峙しますよ。
きっと何かあったら後ろの冒険者さん達が助けてくれると期待してます。
僕は、シャドウエクスカリバーを構える。
「ほう、良さそうな武器を持っているな。」
武器だけは強くても、って奴ですよ。
きっと、目の前の一団は、この武器が格上の武器である事を知らない。
武器も格上ではあるんだけど、扱う人が僕なので性能を十分には引き出せていない。
でも牢屋にずっといた彼らにとってはこの武器の事なんて知る由もないはず。
マネーサックスが闇王の椅子から立ち上がり肩を回しながらやる気を高めた。
「先に一人血祭りだ!」
その声で一斉に彼らは攻撃を仕掛けてきた。
僕は敵の攻撃を交わしながら、まずは戦い方の基本を思い出そうとした。
Lesson 1
・武器は縦に振ると相手に隙が大きくなるので、なるべく中心から横に振りましょう。
縦振りは確かに力が入り見栄えが良いですが簡単にかわされます。
最適な構えは剣先を相手に向けて、相手の剣を払えるようにしましょう。
Lesson 2
・刺してはいけません。
刺した敵の体に剣が挟まり抜けなくなります。
頑張って抜こうとする間に次の敵の攻撃が来ます。
Lesson 3
・足も上手に使いましょう。
踏み込んで相手にかかる事で、腕で押した時よりも力がかかります。
相手の動きの隙を突いてかかれば、大きな相手でも押し込む事ができます。
Lesson 4
・・・なん・・・だっけ?
思い出そうとしたところ、10人の敵が絶え間なく僕へ攻撃を仕掛けてくる。
剣で受けて避けるので精一杯!
なんとか倒れないように必死に攻撃をかわした。
背中から落ちたら絶対押し殺される。
攻撃に転じる隙を全く与えてくれない。
クランの皆さんにしてみれば、多分簡単に倒せる相手だとは思う。
僕は後ろのみなさんと違って百戦錬磨ではない。
攻撃をかわしながら心の中で、基本、基本・・・という言葉を連呼した。
ここで倒れたら、ローリアさん救出できない!
でも・・・
そっ・・・ろそろっ!ヘルプを・・・
ちらっと、クランのみんなを見たら、円になってピクニックを始めている。
アルコールの匂いもちょっと漂っているじゃ無いですか!
「ちょっちょっと!」
呑気に歓談を始めているが、こちらはめちゃくちゃ打ち込まれている。
ヤバイ、ヤバイ・・・
相手の剣の打ち込みは、とっても重い、一撃一撃を剣で受け止めていたら、こちらの上腕筋がもたない。
それに相手に掴まれたら一巻の終わりだ。
「おいおい、ジョナサン」
「ちょっとあの戦い方は無いわね。」
うしろでそんな声が聞こえたけど全く耳に入ってこなかった。
「ウォーレンは手を出すなよ。」
捕まえるはずの相手が目の前にいるのに、もどかしい戦い方をしている僕に有り、難くも加勢したい気分なんでしょう。
「ええ。解っています。」
ウォーレンさんは眼鏡を上げ直して、ハヤる気持ちを抑えていた。
「ジョナサン!戦い方が、初心者のモンスター向けだ!」
後で応援してたホーウェンさんが叫んだ。
いきなりそんな事言われても・・・
「えっ!えっ!どうすれば?」
クランのみんなは顔を一度見合わせるとこちらに振り向き各々言った。
「気合だ!」
「センスだ!」
「筋肉だぁ!」
相手の足捌きで倒れそうになりながら僕は叫んだ。
「むりっ!無理!!ですぅ!!」
いきなり、気合にセンスに筋肉言われてもわけわからないです。
腕を少し切られて血が吹き来だした。
つっ!!
ダメだ、そう思いつつ一旦距離を置くと敵も様子を見にきた。
マネーサックスは、多分まだ本気を出していない。
自分の持っている剣を持ち上げ刃こぼれを確認した。
「ん〜この武器、噂で聞いてたほど強い感じしないな。」
ん?
やっぱり、エクスカリバーの特性を知っていない?
そういえばみんな、馬鹿みたいに振り回しているだけだ。
てことは、こちらの勝機があるとすれば・・・
再び敵が一斉に攻撃仕掛けにきた。きっとここまで何もしていない筈。
攻撃をかわしている様に見せかけて、一人を誘い込むように一瞬後退して見せた。
案の定、一人だけすぐに僕に付いてくる。
そいつが、わかり易く武器を振り下ろした瞬間。
「ここっ!」
ぼくはスキをついて、そいつのエクスカリバーの柄を握った。
僕と対峙している敵一人の体に痺れが走る。
と同時に切りに掛かった相手がエクスカリバーを手放した。
隙を与えず僕はそれを拾うと、体が光ってさっきの痺れが薄れ、逆に体が軽くなった。
痺れが落ち着くとクランメンバーのいる方へエクスカリバーを投げた。
「お〜」
クランんもメンバーがうしろで拍手をした。
「くっ!おっお前何をした?」
僕は何も答えずに怯んでいる他の敵に攻めに転じた。
痺れている男に対してぼくは剣を突きつけた。
人を切るなんて嫌なので、一人ずつ行動不能にしないと・・・
切るというより剣で叩きつけその反動で柄を彼の顎にヒットさせた。
あと9人!マネーサックスを入れると10人!
他の相手も力まかせで剣を振り僕はそれを剣で受けつつ、体の横に受け流す。
「エクスカリバーのスキル向上(バフ)効果か。」
「あの武器、トレード出来ないものだったらジョナサンが逆にペナルティ食らってピンチになっていただろうけど。勝負に出たね。」
「あ〜そういや、アレ、付与直前に、麻痺効果があったな。」
「なるほど、それを利用したのか。」
「ジョナサンは力より知識と技能で攻めるタイプみたいだね。」
「馬鹿は戦闘に向かん。」
「そう、パワーだけで頭を使わない馬鹿は。」
「一番、頭を使わなさそうな二人が何を言っているよ?」
「失礼な!」
「ただ知識も経験につながっていないから、最初のような戦い方になると不利になる。」
ぼくは同じように他の9人も強制的に麻痺効果を狙った。
麻痺は自分になるべく掛からないようにして、その後のスキル強化だけを自分が受ける。
強化スキルを重ねがけで、最初の一人より随分スムーズに対応が取れるようになった。
そして2人目のエクスカリバーを剣で弾いて奪った。
ついで7人が同時にかかってきた。
最初より強烈な強化スキルのおかげで簡単に交せ、隙をついてジャグリングする様に両手から剣を手放し2人の相手の剣の柄から、麻痺を発動させ、反動の強化スキルを自分だけうけとる。
麻痺を受けた2人が僕の盾となりほかの5人の死角から、同じように麻痺効果を狙う。
盾になった2人は麻痺をあとからうけた3人の肘鉄を喰らい呻いて倒れる。
その肘鉄を喰らわせた3人も僕の空中に上げた剣を地面に落ちる前に拾い、刃ではない方で叩きつけ気を失わせる。
もう一人も同じ様に麻痺をさせるとそいつは自分でエクスカリバーの重さでその柄に倒れ込み溝落ちに深く食らった。
強化スキルの9度がけ。
動体視力、俊敏、防御力、攻撃力、体力、パワーにおまけに運。
それらが全てのステータスが上昇した。
ここまで上書きされると敵の動きはかなり遅く感じる。
普通にもう一人を鍔迫り合いで、相手の剣を力で弾き飛ばすと、そのまま拳を溝落ちに喰らわせ倒れた。
最後のエクスカリバー1本はクランメンバーの方には投げずに自分で持った。
息を整え、2刀流の構えをして見せた。
正直2刀流は武器の重さに振りまわされ大振りになるので隙が生まれやすいから上級者はみんな、倦厭しがちだ。
体力も奪われる。
ただ、マネーサックスを威嚇するには、僕は出来る男で通さないといけない。
「お前一体何をした?」
「このエクスカリバーは戦いながら剣にストレスを与え、それが一定値溜まると、力を付与してくれる魔法スキルがかけられるんです。ただし・・・」
エクスカリバーの切先で倒れているマネーサックスの部下を指した。
「初期効果としてここの皆さんが体感した通り麻痺が一瞬付与されます。」
麻痺が付与される瞬間、武器から手を離せば、自分は動ける。と言っても少しは痺れを受けています。
しかも結構痛い。
こんな状況じゃなければ、叫びたいぐらい。
でも、そのあとの強化には麻痺を抑える効果もあるから必ず武器を手放さず効果を受けなければいけない。
その事を口にすると敵に余計な攻略法を探られる可能性あるので麻痺までしか言わなかった。
さて、残るはマネーサックスただ一人。
彼も10人分のエクスカリバーの強化スキル効果を受けた僕の相手は分が悪いと気がついているとは思う。
視線を僕から離さず、相変わらず鋭い眼光でにらめつけると、溜息をついた。
本気で、やる気を起きた様子。
ゆっくりと立ち上がると・・・
・・・・・・
エクスカリバーを僕の前に放り出し、土下座した!
「スミマセン!スミマセン!出来心です。調子に乗っちゃいました!」
僕は面を食らった。僕以外もそうなのかもしれない。
「おとなしく捕まります!なんでも聞きたいことがあるならお答えします!」
頭を床に擦り付け。ジョリジョリと音を鳴らす。
「だからだからどーか。どーかこの場は非暴力的にご対応
まるで自分が『暴力』が嫌いで、それを振るわれているかのような言い分。
僕は呆れたけど、この状態では僕も戦う事は出来ない。
「どっどうしましょう?」
僕は剣の構えを解いてクランメンバーに向いて問いかけた。
「スキアリ!!」
っそう言うとマネーサックスは目の前に放り出した武器を手に取り、僕に向かって剣を突きつけ突進してきた。
完全に不意をつかれた。
ほんの僅かな距離を彼の鋭い切先が僕に向かって突進してくる。
ヤバイ!完全に油断した。
体勢を整える間はなく、僕の首めがけて剣は伸びてきた!
「あっ!」
情けない声を出してマネーサックスはこけた、足を何かに引っ掛けたようだった。
転がり僕の足元に頭からつんのめりで倒れた。
完全に顔面を地面で削り取っている。
・・・・・
しばらくそのまま静寂が場を包み込んだ。
そして、マネーサックスも落ち着いたか、ゆっくり、ゆっくりと顔を上げた。
「はっ・・・」
顔に冷や汗が湧いている。
「はははは。」
笑ってごまかしているが、手からは武器が放り出されているし、完全に戦意喪失している。
「そーいえば、過去のイベントでも、同じような事をやっていたよね。」
「こいつ、昔の事なんて覚えてないぽいな。」
マネーサックスはやっちゃったみたいな戯けた顔を晒して、無理して笑った。
僕は可愛そうでもない、この相手をする気も失せて剣のミネを彼の後頭部に力一杯振り下ろし気絶させた。
「私には手を出すなと言って、ちゃんとフォローするんですね。」
ウォーレンさんはマネーサックスがコケた原因の石を拾い、他には聞かれないようにドゥベルさんに渡した。
「まぁ、あのお人好しには爪が甘そうだったからな。」
「ええ。でも、これで自信をつけて戦闘にも積極的に参加出来るようになれば、貴方達クランのお役にも立つのでは?」
「そうでなくちゃ困る。」
ウォーレンさんはクスリと笑うと、マネーサックスが転んだ原因の短刀を彼に渡し、昏倒している逃亡犯を一人ずつ拘束具を付けていった。
シャナンさんはエクスカリバーを腕一杯にかかえ上機嫌だった。
「乾いた手にエクスカリバーとはこの事だね。」
「乾燥肌は女子には大敵だけど、まぁ濡れ手でも粟でも無いからそんな所かな。」
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