第3話:王都セレブレーション広場 - 公示

『あの日』の前のとある日。


「王都セレブレーション広場にて通達事項が在る。街の冒険者は集合せよ」

そんな張り紙を店に貼り冒険者に配ってくれと、王都広報部からチラシを貰った。

広報の人も、こんな小さな武器屋に来るのはどうせランクの低い奴だろうと、たかを括ったようなあらか様な態度。

だけど、そこは商売権利書を発行している王都に悪い評判は持たれたくないで、快くチラシを受け取りいつもの通り配布を引き受けた。

こう言った通達は、内容は全く示さず当日現地で内容を発表するのがお決まりだった。

僕のやることは、武器を求めに店に訪れた初心者の冒険者にチラシを配り情報を伝えるだけ。

こういったイベントは、初心者の冒険者さんが『なぁなぁ』で参加すると痛い目に遭う。

なので、気分を悪くしない程度に、『そんな事もありますけど、強くなるまでは雰囲気を楽しみ、様子を見る程度がいいですよ。』とアドバイスをしつつチラシを配る。

でも僕は参加する冒険者と、その結果(ランキング)報告はいつも見に来ている。

どのイベントでも、僕がお世話をした事のある冒険者が成長(ランクアップ)して名を馳せているのを確認するは僕の趣味の一つなんだ。

みんな不幸なトラブルに合わず、成長した姿を見ると仕事の甲斐が少しはあったなぁと、実感が持てる。

そんな機会を持てるのが、このイベントの通達事項だった。

だから今回も様子を見に、セレブレーション広場に訪れた。


「傾注!」

王都の広報文官が、文官らしからぬ背筋の通った体格の良い身体を反らせ、ざわざわと話をしている冒険者さんに負けじと声を張り上げ、その場にいる皆の注目を促した。

「これより王オーフェン・ベルツ三世、自らのご記載頂いた冒険者への依頼を読み上げる。心して聞くように!」

そういうと文官は咳払いを一つした後に、目の前に書簡を広げ読み上げた。

「冒険者の皆には日頃より私の為、引いてはこの街のに住む者達の為に、貴重な時間と身を刻むような戦いの日々を過ごしている事だろう。

今の王都の繁栄は我がオーフェン・ベルツに所属する皆の献身的な働きであると、王都に住む住民と共に、感謝をしている。

だがついこのほど、近隣諸国の無謀な国土権利の主張により、我々が築いた富と平和を脅かされる事態となった。」

その不穏な言葉にその場にいた冒険者がどよめいた。

「国家間レイドバトルか!?」

「ついにPK導入か!」

僕は何もない平穏が1番だと思っている。

けど、冒険者のみんなは世界の混乱に乗じて自分達の功績を上げるチャンスらしい。顔から期待に満ちた表情が見て取れる。

「はやるな!まだ続きがある!」

文官が怒鳴るように言うと咳払いを一つすると言葉を続けた。

「だが、諸君も隣の街に家族や知人もいよう。

皆の人間関係及び生活の事も踏まえ、各々が所属する都市国家にて、モンスターを倒した数でどの国家が優秀か決めることとなった!

また、報酬はそれぞれの国家取り決めた内容とする。

冒険者の諸君。私は皆が同じものを欲しがるとは思わない。

そこで、見事この戦いにもっとも優秀な成績を残した者に、各々が思う褒美を可能な限り叶えてしんぜよう!」

「ちっ!ランイベ・ランキングかよ!」

「試験と被ってそんなに参加できんのだけど~」

「走るのだりーなー」

冒険者は口々なな不満をいった。

いつものイベント内容の告知。

みんな楽して儲けたい気持ちがあるので、夜通し働ける(遊べる)人が有利になる。

いつもだいたいこんな感じで不満を漏らしながら、冒険者さん達はイベントをこなしていた。

そんな愚痴が聞こえたけど、文官の説明に報酬を曖昧にしていたのが気になる。

そんな疑問は、ある一人の冒険者が手を挙げ、僕の変わりに聞いてくれた。

「街の娘(NPC)との婚約の取り計らいもしれくれますか?」

失笑が会場に沸いた。

「おまえ、ばかじゃないの?そんなの(システム的に)許してくれる分けないじゃん」

「それより必要なのは強い武器防具だろ?」

言った本人もあげた手を恥ずかしそうに下げようとした時に、その広報官は咳払いをし胸を張り答えた。

「今回、私には冒険者の望みを聞き、取りはからう権利も与えられている。よかろう。おぬしらの内、誰よりも優秀な成績で目的を達成したのなら我々はその思いを叶えてしんぜよう!」

その言葉の後、一瞬静けさが漂った。

僕はこの一瞬の間に、周りを見渡し、一人一人の冒険者の顔を見てしまった。

目が血走っている・・・

そう見て取れた瞬間、けたたましく喚起の声が沸いた。

「まじか!」

「なにそれ、最高の報酬じゃん!」

「記念イベント乙!」

「なお、このイベントには騎士の諸君も参加する。報酬を全て持って行かれないよう奮闘するように。」

その後の言葉は冒険者にはほとんど聞こえていなかった。

そもそも王都の騎士はそんなに優秀じゃなく、いつも冒険者さんの方が圧倒的にスコアを稼いで終わる。

でもそう言う理由とは別に、僕には他の事が気になった。

ある一抹の不安。

そう、カレンちゃんが報酬のターゲットにされないかどうか。

この荒くれの冒険者に奪われて、結婚してあられも無い姿で初夜を迎え、冒険者のピーで手込めにされて・・・

それで・・・それで・・・

僕の知らない所で子供ができて、夫婦つつがなく幸せな生活を!!

僕の中で今まで考えたことが無かった不安な感情が一斉にあらぬ妄想と共にわき上がった。

いつも、彼女を見送っている小さな幸せな毎日が無くなる。

いや、でも落ち着け僕。

この街には綺麗で見栄えも良く正直カレンちゃんよりも性格が良い子は沢山いる。

清楚だたしく気品が有り、家庭をしっかりと支えてくれる、表裏なく心の底から女性らしい娘は知っているだけでも・・・

・・・僕は、何気にカレンちゃんがそうではないと言っているような・・・。

でもまぁ彼女を率先として選ぶ僕のようなモノ好きは居ないだろう。

そう根拠の無い結論で妄想を締めくくり、僕もイベントのお手伝いを横でしながら行く末をソワソワしながらイベントの結果を待った。

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