第15話 Devil or God_細部に宿る

細部で悪魔が嘲笑うのかそれとも神が微笑むのか

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【ヘンリク・シェンキェヴィチ】

 『クォ・ヴァディス: ネロの時代の物語(Quo Vadis: Powieść z czasów Nerona)』


【スタンダール】

 『赤と黒(Le Rouge et le Noir)』 


【ジェームズ・ヒルトン】

 『鎧なき騎士(Knight Without Armor)』


【川端康成】

 『禽獣きんじゅう(Of Birds and Beasts)』


【三島由紀夫】

 『午後の曳航えいこう(The Sailor Who Fell from Grace with the Sea)』


【大江健三郎】

 『万延元年のフットボール(The Silent Cry)』


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僕は信念の為に生命を賭して闘う気高く美しい王女リギアに恋した。堕落したローマ帝国市民の享楽の為に気高く誇り高く美しい王女リギアの衣服を剥ぎ取り、ライオンに喰らわせ贖罪のスケープゴートとした皇帝ネロと、キリスト教徒を迫害する市民を憎んだ。僕は晒された王女リギアの姿に歯軋はぎしりして涙を流した。神の国に行くのだと信じて彼女は死んだ。Quo

vadiskigou(何処へ) Domine?(主よ?)その瞬間、僕はカトリックだった。そう信じるしかなかった。


僕はジュリアン・ソレルだった。勃興するブルジョア階級に属して英雄ナポレオンを崇拝していたが生まれてくるのが遅かったのだ。そして、町長の夫人のルイーズを愛した。ルイーズと僕は愛し合っていたが、二人の不倫は町中に知れ渡り、腐敗したカトリックの支配下の町から僕は出るしかなかった。その後、侯爵令嬢のマチルダと激しい恋に落ちマチルダは妊娠した。それでもルイーズはジュリアンを愛し続けていた。だがルイーズは腐敗したカトリックにマインドコントロールされていた。洗脳状態のルイーズの書いた手紙のせいで、熱狂する遅すぎる革命を熱望しながら、ルイーズとマチルダを愛した僕は死んだ。


僕はA・Jだった。戦乱のロシアでボルシェビキから逃げ、ロシア人として生き延び、赤軍と白軍が殺しあうシベリアの大地を逃れ、悲運に翻弄されながらも健気に少女を守る、美貌のアレクサンドラ・ウラディノフ伯爵夫人を愛した。貴婦人を守る鎧なき騎士のような逃避行だった。日露戦争前後の時期、日本がロシアの革命家と労働者に資金を提供した事もあり、結果として、ニコライ二世も彼の妻も五人の子供たちもボルシェビキに殺された。アレクサンドラ・ウラディノフ伯爵夫人たちと僕はヴォルガ河の川船で暮らすタタール人に匿われた事もあった。逃亡生活を続けるなかで、アメリカへ亡命する前に、僕の愛したアレクサンドラ・ウラディノフ伯爵夫人は死んでしまった。そして彼女と僕が守った少女とアメリカに渡り……、後に僕も死んだ。


私は嫌悪していた。この世の全てを、そして、なにより自分自身が嫌いだった。幼い娼婦の無邪気で悲惨な姿に惹かれ心中しようとした事もあった。その後その女はハルビンに渡り公演し巡業する名のしれた踊り子となっていた。私は死にいく動物を愛護し虐待するような男だった。退廃的に踊る踊り子に対してもどこまでも非情な男として私は死んだ。


僕は残酷な少年となった。一人私室で手慰みベッドを静かに揺らす女性。ヨコハマのハイソサエティのブティックを経営する美しい未亡人を好きになった。その人は僕の母親……。母と交際していた海の男。或る日の午後、残酷な首領たちはその男を殺したのだ。


僕は悩んでいるばかりのようなインテリになった。妻は障害のある子供を産んで悩み育児放棄し心が壊れてしまった。僕は帝国の為に戦い帝国に命を捧げる意志があったのだが間に合わなかった。僕はジュリアン・ソレルのように遅れてきた青年だった。帝国は滅亡し人民の新しい国家を建設し民主政府を樹立する青年たちの企ても潰えた。壊れた妻は僕の弟と不倫の関係となった。僕はそれを見て浅ましく苦悩するだけで妻と弟に毅然として立ち向かう事もなかった。弟は町を半ば支配する有力者と戦う運動を始め、そして妻と私の関係は救いのない幸福のような結末となった。


Devil《 悪魔》 or《も》 God《神》_細部に宿る

悪魔も神も細部に宿る。

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【ヘンリク・シェンキェヴィチ】【スタンダール】【ジェームズ・ヒルトン】【川端康成】【三島由紀夫】【大江健三郎】この六人の作家たちは全部を細部まで緻密に描写し文学史に残る偉大な作家となったのです。殆ど全ての作家が何かに突き動され趣味として書き始めるのだと思います。趣味も極めれば名作を産み出す事も可能となるのです。

細部を疎かにして顧みない作家がもしいるとすれば、その人は大成する事はない。そう断言できると思う。ノーベル賞を頂かなくても細部から全体へ全体から細部まで繰り返し注意を払い書き上げていく。努力を積み重ねていくなら創作技術は向上していきます。悪魔が嘲笑あざわらうのか或いは神が微笑むのか。私たち次第だと思います。


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偉大な作家たちの名作を読む感動を伝えたかった。未だ読んでいない人に是非とも読んで欲しい。

それがこのエッセイを書いた主要な動機なのです。

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