39話 あなたって!

(模擬戦終了後)


「失礼します」


俺はシャーノを抱き抱え保健室へ入る。 すると


「い、今は先生いないよ…って、シャーノ君どうしたの!?」


前の席のサリアが椅子に座っていた


「ちょっと模擬戦で」


俺はシャーノをサリアの横に座らせた


「サリアは何かあったの?」


「ちょっと手を切っちゃって…」


手を切ってここにいるということは白魔法が使えないんだろうか


「手見せて、治してあげるよ」


俺がそう言うものの、サリアは一向に手を出さない


「そう、わかったよ」


俺はシャーノの腹部の治療を始めた

思い返せば入学してから白魔法を使うのは始めてだな…


「お前白魔法使えたのか?」


…え?


「俺はてっきりお前は悪魔かと」


やっちまったか…?


「うん、わ、私も悪魔だとばかり…」


まずい、なんて言って誤魔化そう…!


「近所に天使のおばさんがいて、その人に教えてもらったんだ」


通じてくれ…!


「優しい人だな、その人」


通じた! シャーノが天然で良かった!


サリアは少し悩んでいる。 教えてもらったからといって白魔法を使えるようになった悪魔がいると聞いたことがないからだろう


「す、凄いねクロウ君」


どうやら上手く(?)誤魔化せたようだな


「はいシャーノ、終わったよ」


ちょうどシャーノの治療が終わったので、もう一度サリアに治療は必要かを聞いた


「じゃ、じゃあお願いします…」


とサリアは右手を出した。 中々酷いな、切ったと言うより斬られたようにも見える


「ウトウトしてハサミか何か手に落とした?」


俺が小さく笑うと


「そ、そうなの…」


サリアが小さく震えだした。 何かに怯えているのか…?


「そっか、じゃあ気を付けないとな」


それ以上は可哀想なので聞かなかった。 と言うより聞けなかった


「あ、ありがとうクロウ君。 それじゃ…」


サリアは治し終えた途端に去って行った


「さっきの傷、ナイフか何かで刺されないと出来ない物だ」


シャーノは小さく呟いた。 勿論俺にだって分かっていた、でも彼女の様子からしてそんな事は言えなかった



「み、見つけました。彼がそうみたいです…」


「随分と発覚するのが遅かったな、何をしていた?」


「い、いえ。 申し訳ございません…」


「まあいい、あとは私が接触するだけだ」


「はい、どうかご無事で…」


俺達の影でこんな会話が繰り広げられていたことを、俺達は早く知るべきだった

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