35話 馬鹿なのか創設者!

オリエンテーションは初日で終わらない生徒を考慮し2日間行われるが、俺達は終わってしまったので2日目は暇を持て余していた


「これ読んどけって、先生が」


椅子に座っていたシャーノが俺にプリントを投げた


「再来週体育祭だって」


ほう、そうか…来週!?


「誰がそんなの決めたんだよ!」


生徒でいる期間がいくら1年だからといえどオリエンテーションの2週間後に体育祭やるか?


「創設者」


あのクソ親父だったか…


「それで出る種目決めろって」

種目か、えーっと…


①借り物競争


②騎馬戦


③棒倒し


④大玉転がし …⑩障害物競走 のうちから2つ選んで下さい


…めっちゃくちゃ普通じゃねぇか! むしろビビるわ!


「クロウはどれ?」


うーむ、どれと聞かれても…


「シャーノは?」


シャーノと同じやつにしようかな、それだと特殊なルールがあった時に困らない


「クロウと同じやつ」


あれ、これ無限ループになるんじゃ…


結局俺達は借り物競争と騎馬戦を選んだ



時は流れ体育祭当日


今日は特別に親の来校が許されている日なので普段より人が多い。 にも関わらず俺の左の席のキリカは座り眠っている


「頑張ろうね!」


エリーは家族が来ているからだろうか、いつもより元気だ


「おう/ああ」


シャーノは知らないが俺の両親は来ないだろう。 というより来たら会場が大パニックになるだろう


「選手入場」


アナウンスとともに開会式が始まる。 準備体操をし、校長の話、選手宣誓が終わる。 さあたいじょ…


「創設者のお話、サタン様お願いします」


父親来たわ…

俺は父親の長くつまらない話を聞き流した


「ご両親にいい姿を見せましょう! これで私の話は終わります」


いい姿…? てめぇに見せるいい姿なんて無い。 とっとと帰れ


「クロウ、借り物競争がはじまる」


退場してすぐシャーノにそう言われ、俺達は集合場所へと向かう


これで俺の特級魔法を使えたら絶対1位なんだけどなぁ… まあチートみたいな物だからしょうがない


俺は10レース目、シャーノは13。 俺の方が早く座席に帰ることが出来る


俺はふと父親が帰ったか気になった。 生徒の所にはいないし、保護者席にもいない… 帰ったか!


よっしゃ!帰ったぞ! と思っていたら俺のレースの番が来た。 ふふふ。クソ親父がいない今、俺に怖い物なんてな…


スタートの銃を持っている奴を見たら、その後ろに来賓席が見えた。 その最前列… サタンが手を振っている


…マジか


パァン! と銃が鳴った


俺、これ負けたら殺されるんじゃないのか!?

嫌だ、まだ死にたくない!


俺は全力で走り、借りてくる物を見た。 だが…


「創設者のネックレス」


…ふざけやがって! アイツがここに居るのはそういう意味だったのか!


俺は嫌々父親の元へ走った


「ネックレスを…頂けませんか…?」


周りの目も気になるので俺は一応敬語でそう尋ねた。しかし父親は


「ネックレスだけじゃなく、私ごと行って差し上げましょう」


俺の手を繋ぎゴールへと走り出した


早くこの手を振りほどきたい…!

チラリと父親の顔を見ると満面の笑みだ、反抗してみなさいと言わんばかりの!


「いやぁ、息子と手を繋いで走るなんて中々出来ないからねぇ」


すっげぇ満足そうでムカつく!


俺と父親は1着だった。 いや、そんな事はどうでもいい。 一刻も早く手を消毒したい…


「じゃあ、頑張ってね」


父親は俺に手を振り来賓の席にワープした

あの野郎… と思っていると


「一緒に来て!」


シャーノに手を繋がれ、俺は再びゴールへと走った

…何だ!?


シャーノも1着でゴールしたが、俺丸ごと借りてきたんだ。 何を頼まれたんだろう…


「シャーノ? 何が書いてあったんだ…?」


俺の息は上がっていた


「友達」


そう答えるとシャーノは去った


特に悪い気はしなかった

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