26話 俺の才能を!

(試験開始から15分後)


3体のうち1体を倒したが、あと15分で2体は厳しい… どうしたものか…


「主様、私めに提案がございます」


バンパイアが俺に近寄った。 一方ガーゴイル達はゴーレムを足止めしていた


「耐熱性のレンガか何かで奴を囲み、押しつぶすのはどうでしょうか」


このバンパイア、なかなか鬼だな


でもそれは1度レンガで囲んでしまえば安全な作戦だろう、俺はその案に承諾した


「ガーゴイル達にそれを伝えろ、俺はレンガを作る」


バンパイアはガーゴイル達に伝えに言ったが…


「あっ、まずい! 帰ってこいバンパイア!」


手薄になった突進ファイアゴーレムが俺に向かってきた!


「大丈夫ですか、契約主」


ガーゴイルが間一髪ゴーレムの突進を防いだ


「ありがとうガーゴイル、バンパイアが来るまで耐えられるか?」


俺がレンガを作りながら尋ねると


「ご安心を」


とだけ答え、ゴーレムを押し返した


「済まないガーゴイル!」


バンパイアがガーゴイル達を引き連れ手助けをしに来た


耐熱性のレンガが俺の足元に増えていく…

突進してくるゴーレムが押され気味だというのに最後の1体はまだ動かない


「出来た! 離れろ!」


そう叫ぶとゴーレムへの道が開いた


「行っけぇ!」


俺は左手の杖をゴーレムの方に向かって振る

するとゴーレムの姿がレンガに囲まれ見えなくなった


ゴーレムがレンガを壊そうとしているんだろう、地震のようなものが発生している。 一刻も早く押しつぶさなければ…!


「壊れろっ!」


俺は開いていた右手をレンガの山に向け、強く握った


ガチャンっとレンガとレンガがぶつかり合う音がした。恐らく完全に潰れただろう

俺がレンガを消すとゴーレムは粉々になっていた


あと1体…5分でやれるだろうか


最後の1体は…っ!

今まで動かないでいたゴーレムは消えていた。 何故だ、さっきまでそこに!


突然足元が揺れ始めた、何だ…?


「主様!」


バンパイアが俺を抱え上空へと飛び上がった


すると足元からゴーレムが出てきた。 恐らく地面と一体化したんだろう、さっきよりも大きい


「これは…どうしましょう」


バンパイアの不安げな声が後ろから聞こえた。 俺だってどうすればいいか分からない


動かないからといって油断していたが、コイツを先に倒しておけばよかったと後悔した


あと4分半、コイツを倒さなければ俺は試験に合格出来ないかもしれない!


「くそっ!」


もう俺には特級魔法しか思い浮かばない。だが使ってしまったら不正か何かになるんじゃ…


「主様、私にもその方法しか…」


このデカブツはもうその位しないと倒せないとバンパイアも察しているようだ


「使うか… 俺の才能を」


父親の力とは言わなかった。 言いたくなかった

マスターが俺の特級魔法を才能と言ってくれたから、俺はそう言い切ることが出来る


俺はバンパイアに抱えられながら目を閉じ、ゴーレムが巨大な隕石に押し潰される想像をした


目を開くとゴーレムが巨大な隕石を両手で押さえていた


「行け…」


もう叫ぶ気力が残っていない。 恐らくバンパイアにさえ聞こえていないだろう


「潰れろっ!」


気づくとガーゴイル達も隕石がゴーレムを押し潰すのに加担すべく、隕石を押している


ゴーレムとガーゴイル達が隕石を押し付けあう謎の図が目の前に広がっていた


「下ろせ」


俺はバンパイアにそう命令し、地面に降り立った


ふぅと息を吐き、目を閉じる。そして


「バリア」


俺は隕石に、ゴーレムが触れている所にバリアを張った


ゴーレムが一瞬隕石から手を離した


「今だっ!押せっ!」


ガーゴイル達が最後の力を振り絞り隕石を押した


ドカーンッ!と隕石が地面に落下した


今までゴーレムがいた場所には大きな窪みが出来ている。 恐らく隕石が作ったんだろう


「勝った…」


俺はそう呟き倒れた


視界がぼやけ、バンパイアが何か言っているがよく聞こえない。 死ぬのか…?


すると試験監督者だろうか? 人が目の前に沢山やって来た。それを見た俺は完全に気を失った

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