14話 盗賊か!

洞窟の中に入ってどのくらい経ったのだろう、未だ奥が見えない


「休憩するか?」


レイは俺にそう聞いた


「いえ、大丈夫です。レイさんは?」


俺は彼の事をレイさんと呼ぶことにした。深い意味は無い、ただの尊敬に近いものだ


「必要ない。行くか、クロウ」


「はい!」


俺は昨日初めて彼と会った時よりも仲良くなれた気がして嬉しかった

昨日は何も反応してくれなかったし…


洞窟の中はだんだん暑くなってきた、周りに何も無いのに何故だろうか


「この辺は源泉が流れているから暖かいんだ。もう一度聞くが、休むかい?」


俺は歩いてきた疲労と洞窟の暑さにやられ


「いいですか…?」


と言い、その場に倒れ込んだ


「水いるか?」


レイは自らの魔法で水の玉をいくつも空中に作り出した。でも流石に申し訳なかったので遠慮して自分で同じものを出そうとした


「あれ…?」


何度試しても大きな水の玉を1つしか作れない

確かタライの中に作った水も同じ方法で生成したはずだ…


「まずは指先に1つ1つ作るイメージで」


そのアドバイスを聞くと一度にに5つの水の玉を作ることに成功した


「上手だ、今度はそれを増やすイメージを持て」


すると小さくはなったが水の玉を10数個作ることが出来た


「おおっ、ありがとうございます!」


「いや、君の要領が良いんだ」


レイに頭を撫でられた。両親がするのとは違ったが、2人にされるよりは何倍も嬉しかった


「それを口にしたら行こう」


俺は言われた通りにし、歩きながら水の玉を作る練習を続けた


「練習熱心なんだな」


レイにそう言われ、俺は照れくさくなった

…彼は今、どんな顔をして言ったんだろうか


レイは依然として黒いローブを身に着けたままで未だ顔を見れていない

顔に傷でもあって、それで見せたくないんだろうか…


「もうそろそろだ」


そう言われるまでには俺は水の玉を一度に20個くらいは作れるようになった



「これは…」


洞窟の最深部に紅く、燃えるように光る石が埋め込まれている


魔法の結晶だろうか、父親が生成した物しか見たことがなかったのでよく分からない


「中々の物だ、取るのを手伝ってくれ」


レイの呼びかけに俺はドリルが結晶の周りを綺麗に削る想像をした


「離れてください」


と伝えるとレイは後ろに下がった


ガガガ…ドリルが現れ、想像道り結晶を削り始めた


「凄いな、どうやったんだ?」


レイが驚いているのを見て俺は嬉々とした


「ドリルが結晶を削る想像をしました。そしたらこの通りです」


俺は満面の笑みでそう言った


「これは黒魔法の1種だ、想像したものを創

造したり、出現させたりする…特級魔法」


…特級魔法?

俺は今までそんな物を使っていたのか?


「君のお父様が得意としている魔法だ、これを扱える人は中々いない」


お父様…その言葉を聞くと気持ちが沈んだ

特別そうに聞こえたその魔法は、ただの遺伝・譲り受けた物だったのだ


「大切にするといい」


レイにそう言われても、やっぱり嫌だ


「レイさん、僕は…」


すると突然、俺達の来た方向から10人くらいの集団がやって来る音がした


辺りに隠れる場所もなく、迎え撃つしかない!


「おや、先客か」


先頭の筋肉隆々の大男がそう言った


「後ろにある削り途中の結晶を渡してもらおう」


盗賊だろうか、コイツらの狙いは父親に頼まれた魔力の結晶のようだ


「クロウ、下がっていなさい」


レイにそう呟かれたがそうはいかなかった


「僕も戦います」


俺は杖を握り直した


「レイさんと一緒に結晶を守ります」


そう答えるとレイは少し笑った

と同時にレイさんは黒いローブのフードを取った


後ろからだったので顔は見えないが、綺麗な黒髪に白いメッシュがところどころ入っていて、後ろを結んでいるという事は分かった


「私の魔法に巻き込まれないように気をつけなさい」

「どかないなら容赦しねぇ」


レイと大男が同時に口を開いた


大男は言い終えた途端レイに剣を振りかざしたので俺はレイの前に大きな剣が現れるのを想像した


キィィンと剣と剣が交差する音が洞窟に響いた


大男が後ろによろけるとレイは大男に人差し指を向け、指先から炎の玉を連続で出現させ飛ばした


すると後ろにいた女がバリアを作り大男には当たらなかった


これは長くなりそうだ、ここにいた全員がそう思った

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