13話 洞窟へ探索に!

母親から状態異常の回復魔法を習った翌日、俺は黒魔法の強化のため青魔法を練習していた

しかし


「はぁー、気持ちいいですぞ」


バンパイアめ、水浴びを始めやがった

俺が家にあったタライの中に水を生成した瞬間、コイツは中に飛び込んだのだ


最初はタライをひっくり返してやろうかと思ったが俺は…タライを氷漬けにした


するとバンパイアはすごい勢い飛び出したので俺はそれを見て大笑いした、バンパイアが寒い寒いと凍えているのが滑稽だった


「クロウ、魔力を強化してあげよう」


家から出てきた父親が俺に歩み寄った。いつもは気がつくと後ろにいたりするのでむしろ怖かった


「魔界の洞窟に邪悪な気配を感じるから見に行って欲しいんだ、多分魔力の結晶か何かが出来たんだろうけど」


魔力の結晶と聞いて、俺は先日に父親の魔力の結晶を呑み込んだことを思い出した


もしかすると行った報酬としてその結晶が貰えるかもしれないと思い、俺は快諾した


「良かった、じゃあパートナーと一緒に行ってきておくれ」


パートナー?バンパイアの事か?


すると父親の後ろから俺よりも背の高い、黒いローブを着た人が出てきた


「初めまして、クロウ」


声の低さからすると男の人っぽいが…

顔も見えないし、髪の毛さえ見ることが出来ない


「彼は堕天使のレイ君だよ、仲良くしてあげてね」


堕天使…?とすると元は天使だったのか


「よろしくお願いします」


と俺は手を伸ばし握手を求めたがレイは動かなかった。何だコイツ…


「あはは、レイ君はちょっと人見知りなんだよ」


少し気に食わなかったが彼は何か理由があって堕天したのだ、心の闇も深いはず


「そうなんですか、急に握手なんてしようとしてすみません」


何故俺が謝っているんだ…?

レイは俺の謝罪になんの反応も示さなかった



翌日、俺とレイは洞窟へ入った

辺りはとても暗く、ジメジメしていた


俺は父親が勝手に持たせたランプを癪に障るが使ってやる事にした


「君は…サタン様の事をどう思っている」


突然レイが質問をしてきたので俺は困惑した

質問の内容も内容だったし…


「良いお父さんですよ、たまに怖いけど」


そう、たまに怖い。アイツの正体(サタン)の姿が垣間見得る時が本当に恐ろしい


「そうか、なら良かったな」


この人は父親と何かあったんだろうか?でも聞けなかった、聞いてはいけない気がした


「…私は」


そうレイが言いかけると目の前にゴブリンの群れが現れた!


俺は魔法を使おうと右手に持っていた杖を強く握り直したが…


「邪魔だ」


レイがそう言い手をゴブリンの群れの前に出すと電気が出た。するとゴブリン達は去っていった

…凄い。何が凄いかってこの人は今、杖を持たずにそれをやってみせたのだ


「杖を持っていると機動力が落ちてしまうからな」


レイはそう呟いて再び歩き始めたので俺もついて行く


「あの、さっき何か言いかけませんでした?」


レイの「私は」の先の言葉が気になっていた


「私は力が欲しくて堕天をした、家族を守るためにな。そう言おうとしただけだ」


この人は俺と正反対の考えを持っている。俺は両親を倒すために強くなろうとしているのに、この人は…


転生前、「世界にはいろんな考えを持った人がいて、どの考えも正しいのだから否定するのは間違っている」と誰かから聞いた気がする。転生した今ならその意味がよくわかる


「堕天をして、何か変わりましたか?」


俺は気の利かない質問をしてしまった気がした

しかしレイは


「家族を守れるようになった。だがその代償に家族から見放されてしまったよ」


皮肉だろう?と言いたげな様子だった

彼は笑い話のように話したが、俺にはちっとも笑えなかった


…彼は人の為に自分を犠牲にしたのに報われ無かったのだ。むしろ守りたかった人達に恩を仇で返されたのだ


「堕天して…後悔しましたよね?」


「ああ」

と返ってくると思ったが


「いいや、してないさ。サタン様や君に会えたんだから…いかん、これでは天使のようだ」


と彼は小さく鼻で笑った

…レイは不器用だが根は優しい人なのだろう


俺はレイと共に洞窟の奥へと足を進めた

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