11話 本を返しに行ったら驚いた!

エリーに本を返す当日、俺はひたすら困惑していた。…いつ返しに行けばいいんだ?


確か先々週の約束では時間までは決めていなかったはず、いつ頃図書館に向かえばいい!

午前中か?昼か?15時くらいか?


両親にはこんな事相談したくもないし…

そこで俺は使い魔のバンパイア召喚することにした。アイツなら多分良い意見を出してくれるはず


「お呼びでしょうか、主様」


バンパイアは少し大きくなっていた


「以前知人に借りてもらった本を返しに行かなくちゃいけないんだが時間が分からん、何とかしろ」


バンパイアは「は?」と言いたげな顔をした


「あ、主様…?それ、私めに聞くことでございますか?」


「ああ。だから質問に答えろ」


ええ…という声が聞こえたが、聞こえなかったフリをしてやった。優しいな俺は


「じゃあ、昼頃に向かい来るのを待ってみてはどうでしょう」


何?そんな面倒くさい事が出来るか


「待っている間に錬金術や色々な魔法の本を読めば魔法の強化にも繋がりますぞ」


ふむ、このバンパイア中々良い意見を出す


「分かった。じゃあ読んで待っている間、お前は現界し続けてもらうぞ」


「ええっ…はい…主様の魔力が続く限りお供致しましょう」


俺はバンパイアと図書館に向かった


そういえば錬金術がどうとか言っていたなと思い出し、俺は錬金術の本を探した


「主様、こちらです」


バンパイアが錬金術の本を見つけてくれたので探す手間が省けた。何だか面倒くさがりになってきている気がする


本によるとまたも魔法陣がと書いてある

魔法陣ってそんなに大事な物なのだろうか、特に描かなくても魔法は使えるが…


「主様が特殊なのです」


バンパイアは俺が何も言っていないのにそう言った。コイツ俺の心を読んだのか?


ほほう、草からパンや水などを作れるのか

あーでも草の味するんじゃないか?

…俺には錬金術は向いていないかもしれない


他にも黒魔法や緑魔法、赤魔法の本などをバンパイアは見つけて来てくれた


中でも俺は緑魔法に目をつけた


「これを上手く扱えるようになると白魔法の強化にも繋がりますぞ」


…?どういう原理だ


「白魔法は自然の力などによって効果が上がるのです、なので緑魔法を強化すれば一石二鳥かと」


この使い魔、頭も良い


「じゃあ黒魔法の効果が上がる魔法もあるのか?」


「はい、青魔法がオススメですぞ」


とバンパイアは青魔法の本を探しに行った

…アイツ常に俺の傍に置いておこうか


「こちらです」


青魔法、水や氷を操る魔法。俺はどちらかと言えば赤魔法で日を出したりする方が好きなんだが


「理由は解明されておりませんが、有力な説では水などが闇の性質を持っているそうです」


ふむ、なら緑と青、両方読んでみるか


俺はあらゆる本を読み続けたがエリーは来ない

時刻は13時、かれこれ2時間くらいはここにい続けているようだ


14時、15時になってもエリーは来ない。俺は赤、青、緑、黄など大体の初心者用の本を読み終えてしまった

明日は今日読んだものを実践してみよう


16時

「主様、あの少女は?」


バンパイアが外を指差すとそこにはエリーがいた


「これありがとう」


俺は図書館から外に出てエリーに話しかけた

と同時にバンパイアは気を使ってか姿を消した


「ゴメンね遅れちゃって、まだ読み終わって無かったから急いで読んでたの」


だろうな、辞典くらいの本を5冊くらい抱えているんだから


「あ、お父さん!」


エリーが俺の後ろを見てそう言うので振り返ると


「クロウ様!」


…え?エヴァンス?


「エヴァンス、久しぶり」


俺はエヴァンスには礼儀正しく話した事はないから、普段の会話もこんな感じだ


「どうしてここへ…?」


まあサタンとラファエルの息子が図書館にいるなんて誰が想像するんだろうな


「エリーに本を返しに来た」


事実だ。しかしエヴァンスの顔は青ざめていった


「娘が何かご無礼をなさりませんでしたでしょうか…!?」


ここで俺が肯定したらきっとコイツの首は飛んでしまうんだろう、サタン(父親)の手によって


「いや、特には」


事実だ。まあ多少遅刻されたが来てくれたのだから別に問題はない


「良かった…」


俺は首が繋がってか?と聞きたかったがやめた


「そういえばサタン様が」


死んだか?


「息子が反抗期で俺を避ける、と言って凹んでおりました」


…はい?何なんだあのクソ親父、ガキか!?


「そうか」


俺はそれ以上何と言ったらいいか分からなかった。いや、むしろ答えを教えてくれ、何と言うのが正解なんだ!


「じゃあな」


俺は家に帰った

エリーの「バイバイ」という声が聞こえたので振り返らずに右腕を上げ手を振ってやった


あのクソ親父め…気持ち悪いんだよ!

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