10話 本当にごめんなさい!

父親に手を繋がれ家に帰る俺は気づいたら泣き止んでいた


ふと俺は父親に手を握られ続けていた事に気づいた。いつもならとっくに振り払っていたのだろうが…


「召喚術の練習をしていたらしいな」


父親は俺が泣き止んだ事に気付きそう切り出した

でも俺は答えなかった、こんな時でさえ反抗しようと考えていた


「お母さんがクロウは凄いって褒めていた」


…またか、お前も俺を惨めに思って慰めるのか


「お父さんは…大人になるまでバンパイアなんて召喚出来なかったよ」


…は?何を言ってるんだコイツ、そんな嘘ついて何になるんだ


「だからクロウの話をお母さんから聞いて、心の底から尊敬した」


父親の話はまだ続くようだ


「クロウ、天才魔道士になる特訓をするのは良い。でもお父さんとお母さんに心配をかけるようなことはしないでくれ」


俺はその言葉を鼻で笑った


「俺が破滅の卵だから?」


言ってやった、俺はとうとう言ってやった

しかし父親は何も答えなかった。ただ父親の俺の手を握る力が少し強くなったのを感じた



「ただいま」


俺は雨でビショビショのまま家に上がろうとした、すると


「おかえりなさいクロウ」


母親が濡れている俺に抱きついた

…またしても俺は振りほどかなかった。いや、振りほどけなかった


「ご飯の準備をしておくから着替えて来なさい」


母親はいつも通りだった


着替え終わってリビングへ行くとダイニングテーブルにケーキが置いてあった


「何これ」


「今日で生まれて1ヶ月だから」


母親は笑顔でそう言った


「産まれてきてありがとう」


そう言うと父は小さいな箱を机の上に出した

俺は何て言えばいいか分からなかったので


「ありがとう」


そう呟いて箱を開けると銀の指輪が入ってきた


どうやらこれは身体の成長を止める指輪らしい、両親も付けていることに今気づいた。それほど俺は彼らを殺す対象としてしか見ていなかったのだろう


俺の身体は既に高校3年生くらいまで成長していたので付けることにした


この指輪は俺の大嫌いな人達からの贈り物だ、しかし俺は一生大切にすることを心に誓った

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る