8話 俺を馬鹿にするな!

(クロウ生後27日目)


俺の魔力量は確実に増えていた


2日前に呑み込んだら父親の魔力の結晶の効果が出てきたのだろうか。しかしクロウは気に食わなかった、それは結局父親の力を借りて得たものだったからだ


「きゃあっ!」


と母親の声が聞こえて俺は母親の声の出処へと急いで向かった


「大丈夫!?」


母親は包丁で手を切った様子だった


「大丈夫よ、心配かけてゴメンなさい」


いや、心配した気はなかった。むしろ死んだかどうかの確認をしに来たのだ


だが母親の傷は深いようで血がまな板にぽたぽた垂れている


「貸して」


クロウは母親の手を取り白魔法を使った


ハッとした。何故俺は母親を助けているんだろう、コイツは俺を平和への礎として活用しようとしているんだ、殺しておいた方が良いのに…!


「ありがとうクロウ」


俺は返事もせずに部屋に戻った


…何故だ、何故俺は母親の元に向かった?

アイツの血か…? クソ、気持ち悪い

今すぐにでもこの血を丸ごと誰かの物と取り替えたかった


「クロウ、入りますよ」


母親がノックをして入ってきた。


「クロウ、バリアって使える?」


…バリアか、使えるようになったら便利だな


「教えてあげましょうか」


母親に教わるのは癪に触ったが、バリアがあればミカエルの攻撃を防げる事に気づいた


「はい、両手を前に出して下さい」


何だかそういう教室に来たみたいだった


「そしたら広範囲に魔法を広げる感じで…」


コイツは何を言ってやがる、そんなもの急に言われてもわかんねぇよ!


するとパッと小さな壁のような物が出来た。しかし銃弾1発分くらいの大きさだった


「もう少し練習すればきっと出来るようになりますよ、慌てないで」


うるせえな、そう言おうとしたがミカエルが飛んでくると困る。確実に消される


「ふんっ!」


と力を入れると徐々にバリアは広がってきた


「凄いわクロウ」


母親は嬉しそうに拍手をしたが俺は無視をした


次第に俺の身体を正面ならカバーするくらいには広がった。いいぞ、これで身体を覆えれば…


すると


「片手で出来た方がいいかも知れないわね」


と母親は自分の身体をすっぽりと覆うバリアを片手で作り出した


一昨日は父親に、そして今日は母親に力の差を見せつけられた。すると母親は


「えいっ」


と言い自分を覆うバリアを5つくらい一瞬で作り出した


この親共め、化け物かよ…


「分かった」


といい俺は部屋に戻った


ムカつく、父親はわざとだろうが母親は無意識に自分の魔力を見せつけてきやがった…!


母親はクロウの部屋の扉の前で1人落ち込んでいた。自分は無意識のうちに彼を傷つけてしまったのではないかと…

しかしその思いはクロウには届かない


俺を馬鹿にするのもいい加減にしやがれ!今の彼の心の中はそれだけだった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る