4話 魔法使ってみた!

(クロウ生後14日目)


身体は小学生低学年より少し大きいくらいまで成長した。普通の天使や悪魔は成長が早いらしいが、俺は特に早いらしい


俺は完璧に言葉を話せるようになったし、歩いたり走ったりも出来るようになった


そして以前として両親は嫌いだ


今日は久しぶりにエヴァンスが家にやって来た


俺に魔法を教えてくれるらしいが、ぶっちゃけ嫌だった。俺が魔法を覚えたら天才魔道士とやらにに近づいてしまう


生後7日目に反抗期を迎えた俺は両親の思惑から遠く離れた、出来の悪い息子になってやろうと考えた。


魔道士にだってならないし、何なら人間になってやろうとも考えた。それ程アイツらが嫌いだ


「クロウ、今日は初歩的な魔法を使ってみよう」


最早エヴァンスしか俺の頼みの綱はいないんじゃないかとも思う。でもそうすると父親に従う事になる


「この杖を右手で持って、炎が左手から出るイメージを作って」


言われたようにやってみることにした

でも、多分出来ないと思う。前世はただの一般男性だったし


ボゥッ…火が出た。出しちまった


「クロウ、今呪文は唱えたか?」


呪文?何だそれ。やっぱりそんなのが必要なのか


…え?


「ほほう…流石だ」


俺の後ろに父親が足を組んで椅子に座っている

何だあの態度。イケメンだから許されるとは言うが本当だな


どうやら俺は呪文を唱えることなく魔法を使ったらしい。他にも水、電気と色々な魔法を試した


…全て呪文無しで出た


「素晴らしいよクロウ」


父親が手を叩きながら寄ってきた

俺は父親に自分の魔力で生成した矢が飛んでいく様子を想像した。すると


「おっと、危ないよ?」


出た。しかし流石はサタン、10本くらい飛ばしたのに全て避けてみせた


エヴァンスは言葉を失っている

当然だ、生後14日目で、しかも呪文も唱えずに魔法を使っているんだから


「それは才能だよクロウ、誇りに思っていい」


いつの間にか後ろにいた父親に頭を撫でられたので俺は即座に振り返って振り払う


「反抗期かい?可愛いねぇ」


父親は笑っている。いつか笑えなくなる程強くなって貴様を倒してやる、なんて今言ったら返り討ちにあいそうなので辞めた


「どれ、私も少し手本を見せてあげよう」

父親は右手をかざした。すると


ゴゴゴゴゴ…と地面が盛り上がり、ゴーレムが現れた!


「ほら、倒してみなさい」


この悪魔、酷なことを言う…

魔法を覚えたばかりの息子にこんな奴を召喚するか普通!最初はスライムとかだろ!


俺は地面から刀が飛び出し、ゴーレムの身体を粉々に切り裂くところを想像した

するとゴーレムの足元から黒い刃が6本出て想像した通りになった


「ハッハッハッ、素晴らしいじゃないか!まさかここまでとは、想像以上だ!」


父親はまたも拍手をしながら近寄ってきた

近寄るなと言わんばかりに父親の身体が燃える様子を想像した


「だから言ってるだろう」


気づくと父親の声は真後ろから聞こえた


「危ないってば…ねぇ?」


俺は動けなかった。魔法を使われた訳では無さそうだが、父親の本来の姿が垣間見えた気がした


…俺はこんな奴に将来勝てるだろうか

きっと今のは普段の魔力の何%かだろう。だが俺はしっかりと、魔力のオーラの様なものを見た


「じゃあエヴァンス、後は頼んだよ」


父親はいつもの薄ら笑いに戻り何処かに消えた


「教える事無さそうなのですが…」


今まで空気のようだったエヴァンスの声は多分父親には届いていなかった

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