タイトル未定。クラス転生物
平原
見渡す限りの平原が俺たちを包む。周りにはクラスメイトのみんながいる。
クラスメイト……だよね?
「えっと、その髪型……秋人(アキト)だよな?」
その反応から見るに、というか聞くに俺はそこそこ変わっていそうだな。
後ろから声を掛けてきた人に、振り返りながら俺は言った。
「そういう冴原(サエハラ)は何も変わってなさそうだな。他のみんなは……」
みんな、変わった姿になっていたりしていた。
「いや、秋人。お前も結構変わってるからな。」
そう言われてようやく自分の体を見てみると、まず服がかなり変わっていた。
黒い服だしマントもついている。
しかし、なぜ?
いや、考えてもわからないだろう。
ラノベ読み過ぎの佐久間(サクマ)は転生したとか召喚されたとか叫んでいるが、その可能性は進んで肯定はしなくても否定もできなさそうだ。だって自分が読んでいたものでも似たようなものがあったわけだし。
「とりあえず全員いるか確認しよう、みんな集まってもらっていいか?」
ざわめきつつも大体が揃った。人数と顔を確認していると、一人足りない。
「あれ、透(トオル)がいないな。みんな、どこにいるかわかるか?」
みんなが周りを確認したりしていると、不意に俺の服の袖が引っ張られた。
振り返ってみるが、誰もいない。
気のせいかと思ってみんなの方に向き直ったが、また引っ張られる。
今度は振り返らなかった。
そして3度目。後ろは向かずに反対側の腕で殴ってみた。
確かに当たる感触があった、と思い後ろを向くと、下半身が消えかかっている透がいた
いや、消えかかっているというより見えるようになっている…?
「いったいなぁ秋人。本気で殴ることないじゃないか……」
「いや、お前どこから……?」
「うーん、なんというか。僕透明人間になっちゃったみたいなんだよね……。どうやら衝撃で解けるみたいなんだけど。」
……透明人間?
改めてみんなの方を見てみると、俺は気付いた。
そう、ほとんどがゲームやアニメでよく見るような亜人ともいうべき姿になっていたのだ。
「え……これ、どうなってるんだ?」
「どうもこうも、この感じだと佐久間が言ってるみたいな異世界転生が一番濃厚なんじゃない?」
……透はなんでそんなに落ち着いてるんだよ。
「なんでそんなに落ち着いてるんだ?って感じの顔だな。当然だろ、こんな展開に憧れてたんだから!」
へぇ、いっつも勉強ばっかりしているイメージだった透とは思えない発言だな。
そんな風に思っていると、今の発言を聞きつけたのか佐久間が寄ってきた。
「透、今まで勉強しかしてなくて他の楽しみを知らないような馬鹿だと思っててごめん!どんなのが好きなんだ?!」
「佐久間君……僕が好きなのは転生ものの中でも、王道を行く無双系の転生……って言ってる佐久間君と違って最弱から成りあがる方がタイプが好きなんだ!こっちこそ同じ趣味で同じくらい好きなのに成績にありえない差がついてる馬鹿だと思っててごめんね!」
……仲良くなれてるのか、この二人?
まぁそんなことはどうでもいい。いやいや、どうでもよくはないけどそれより大事なことがある。
「とりあえずみんなの無事が確認できたところで、言いたいことがある!」
今まで仲のいい人たちと話していた人たちもこっちを向いてくれている。積み上げたものっていうのは大事だな。
「ひとまず、こういう時に大事なのは団結だと思うんだ!ここでバラバラになって帰れなくなるっていうのも困るだろう?」
隣にいる冴原は同意を示す頷きをしている。
「確かに、そういうのは困るだろう。だから、ここはひとまず我らが学級委員である秋人君にリーダーになってもらおうかな」
「うっ、言いたかったことではあるけど、人に言われるとちょっと照れるな……」
だが、みんな概ね賛同とまではいかないものの拒否をしているようにも見えない。これでよかったのだろう。
「じゃあ、申し訳ないけど俺がリーダーとさせてもらおう。もちろん、意見などがあればいつでも聞くから、みんなよろしくな!」
冴原が筆頭に、みんなが拍手してくれた。ちょっとこそばゆいな……(照)
「まだ落ち着けていない人もいるとは思うけど、ここが仮に異世界とかだとしたら外で見晴らしのいいここはひょっとしたら危ないかもしれないから、とりあえず移動をしよう。」
その発言に、透と少々睨み合っていた佐久間が賛成の声を上げた。
「ラノベとかではこういうところは魔物がいるのが定番だからな!明るいうちにどこか安全なところに行かないとだよな。」
と、言ってみたはいいものの……
「だけど秋人君。もう一人の学級委員である萌(もえ)から言わせてもらうと」
彼女は萌、学級委員という通り俺といつも一緒に仕事をする仲だが……
「辺り一帯草しか見えないようなここから、どこに移動をするっていうの?」
いつもこうやって隙を見つけては棘を刺すようなことを……いや、今回はそれを言われるのをわかっていたが。
「確かに、そこは誰もが疑問に思うところだと思う。ついでに言うと、辺り一帯何も見えていないっていうのは訂正してもらおう」
そういうと、萌が何が間違いなのよ、という抗議の目を向けた。
「あそこを見ろ、あんな山があるんだ。あそこを目指せばいい。」
今度はみんながみんな、一斉に抗議の目を俺に向けた。お、俺そんなにおかしなこといったか?!
「みんな、確かに距離がありはするけど多分数時間歩けば何とかつく距離だ。それに山っていうのは大抵川があって、その川を生活の要とする村や町が付近に出来やすい。」
おぉ冴原、ナイスアシスト!ぶっちゃけそこまで考えてなかったけど助かった!
ひとまず、みんなでその山を目指して歩くっていうのが目標となった。いつも運動をしていない佐久間を筆頭としたインドア派は非難の目を向けるが、俺だって運動が得意なわけではないんだ、許せ。
なんだかんだ言いながらみんなが歩き出して、恐らく数十分が経った。
最初はブツクサ言ったり異世界ガーって言っている人も多かったが、今ではまるで遠足をしているかのように賑やかだ。
そうして歩いていると、不意に大きな影が地面を走った。
みんなが驚いて上を見る。俺ももちろん例に漏れず空を見上げた。
するとどういうことか。空には逆光で見えづらいがものすごく大きな何かが飛んでいた。
唖然として上を見上げている人が多い中、数人が思わず悲鳴を上げた。
その瞬間、大きな何かが空中で静止し首らしきものをこちらに向けた。
「っ!みんな、かがめ!」
咄嗟に大きな声を出してしまったせいで、大きな影は完全にこっちを見つめたが、ここに生えている腰ほどもある草のおかげで、大きな何かはどこかに飛び去って行った。
「あ、アレはなに?!」
クラスの数人が騒がしくなる。俺だって怖い。
いや、怖さよりももっとまずいことに気が付いた。地球にあんな生物はいない……
あえて言う必要もないだろう。みんなもうすうす分かってはいたことだった。ここが地球じゃないなんて。
それが、さっきのなにかのせいで確実になっただけだ……
しかし、仮にも俺はリーダーになった身だ。どうにかしないと……
「みんな!どうやらここはほんとに異世界とかそんなのかもしれない。けど、戻れないってわけでもないんだ!ひとまずはさっきまでみたいにあの山を目指そう。」
「あ、あぁ、そうだな。まだ太陽も高いようだが早めに移動するに越したことはないからな。」
冴原も少し取り乱してるな、まぁしょうがないよな……
それから、覚束ない重い足取りではあったが少しずつ山に近づいて行った。
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