ギャル卒業の日
私、生まれ変わる
この高校はかなりの敷地があり、中庭や校庭もそれに比例して広い。私が去年の末にここに入学を決めた要因の1つでもあるので、とても気に入っている。
今日もお昼を中庭のベンチで食べようと思い、ロッカーから行きしなに買ったパン等を持って廊下を歩いていた。
ふと耳に高い声が入ってきて購買の方を見た。
「ギャハハ、それマジ―?」
「マジマジ。もうマジ卍~!」
彼女達は、いわゆるギャルだ。
そして、去年までは私もあんな風だったなぁと私はしみじみ思う。
―――――――――――
「高校なんて適当でいいっしょ(笑)」
中2にしてギャルになっていた私は、クラスの人にも担任にも、そして両親にもそう言っていた。
コンビニでたむろしたりゲーセンに行ったりと、親にも迷惑をかけてしまっていた。
本当は、あまり人に迷惑をかけないようなことをしたかったが、他の子もいる手前そんなことでは何を言われるかわからない。そうして行為はエスカレートしていった。
そしてある時。校内でも苛められていた男の子のカバンを隠すよう囃し立てられた。それに対して私も「しょうがないなぁ(笑)」なんて言った。言わないとどうなるのか、そう考えることすらもやめてしまいそうになった。
4時間目が終わった昼休み。
その子のカバンを、本人がトイレに行っている間に盗ってそのまま普段誰も来ない図書室に行った。
入り口からは本棚が邪魔して見えない位置にある机にカバンを置き、その手前にある椅子に座った。
そして当然のようにカバンを開け、中身を漁り始める。
中には教科書や筆箱などが入っていたが、財布などはない。
そして、1冊の本を見つけた。
タイトルは「変わりたいあなたへ」。
まるでいやいやギャルをしている自分を、自分の弱さを見透かされたかのように思い、思わず本を手に取って読み始めた。
本には、当たり前だろうといいたくなるような事ばかりが書かれていた。
やれ嫌なとこを見つけてみろ。いいところを考えてみろ。そして自分の心に正直になれ。
私は気が付いた。あの子は変わりたかったんだと。いじめられない自分に。そして、私も。
その本を読んでいる間に2時間近くが経っていたようで、6時間目の授業の終わりのチャイムが鳴った。
私は、本とカバンを持って教室に走った。
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