mission2  Escort

有能な隊員 (余計なことすんなよ…)

パトロールから少し後…




「シャーロット。新しい任務だ。」

午後のパトロールから戻り、自分のデスクでティータイムを楽しんでいた私に、ジェシー二正が声をかけてきた。

「はい、なんでしょうか。」

「ここ最近のお前の隊の行動が評価されていてな、新しいミッションを私達と合同で行うことになった。貴族の娘の護衛ミッションだ。」

「!ちょっと待ってください!?私、何もして無いんですけど!?パトロールぐらいしか!?まだ軍での経験半年ぐらいの人にやらせるミッションですか!?」

「いやー…お前の隊のがなにかしてるみたいだ…。それも聞いてきたらどうだ?」

これは早急に確かめる必要がある!


「それとだな…シャーロット…耳を貸せ。」

「?なんですか?」

「今回のミッション…かなりやばいぞ。」




「ノア!あんた最近何かした!?」

私はノアが魔法部での仕事時以外は入り浸っている研究部に殴りこんだ。

研究部ってだけあって最新鋭の機器がそろってー、いや!そんなときじゃない!

ノアは白衣を着て黒縁の眼鏡をかけ、なにやらリボルバーの様な銃をいじっていた。

そしてリボルバーから眼を離さないまま、会話を続けた。


「どうしたの?シャーロット?」

「私達の隊が貴族の令嬢を護衛するミッションをジェシー二正たちと合同でやることになったのよ!これは異例よ!」

「?よかったじゃないか。僕達、大出世だね。」

ノアがリボルバーを机に置き、初めて私の方を見た。

「よかないわよ…このミッションにはとてつもないが伴うわ!」

「?どうしてだい?」

「護衛対象があの

「!なんだって!」




護衛対象を聞いたとき、私の顔から血の気が引いていくのが分かった。

「ジェシー二正!この子…。」

「そうだ…あのの令嬢だ。」

ミシェル家、ジャルニ国建国当時から存在する貴族家だ。表向きは普通の貴族なのだが、武器商人としての顔も持つ。現に軍で支給される重火器のほとんどがミシェル家から仕入れたものだ。また、軍の新兵器開発もミシェル家が主導で行うことも多い。

「ミシェル家は軍需産業で儲けてるからな…令嬢が身代金目的で誘拐されるかもしれない。現に一昨日、誘拐されそうになったところを非番の兵士が止めたそうだ。」

でも…それだけでは…。


「別に格段危険なミッションというわけではなさそうですね。身代金目的の不貞な輩なんて大した強さではないでしょう。」

ジェシー二正は「これだから子供は…」と言ったような顔をして、

「感のいい奴なら一発で分かるんだが…仕方ない、一から解説してやろう。」

私はこの台詞に少なからずむっとした。

「今、うちは鉱山資源をめぐって北で隣国のガーロと戦争してる。ここまでは知ってるな?」

私は黙ってうなずいた。


「ただ、うちはミシェル家のおかげで武器が強力だからな。そして、ガーロは技術がそこまで発展してない。だからこの戦争は近いうちに終わるんだが…やっかいな事が起きちまった。」

「その厄介なこととは?」

「ガーロがうちに訓練されたスパイを送って、技術や新兵器の奪取を狙っているという情報が諜報部から手に入った。さて、問題だ。お前がスパイならどこを狙う?」

「!ミシェル家…!」

ジェシー二正が手を叩いた。

「そう、うちは良くも悪くもミシェル家にほとんどを委ねちまってるからな。

そうすることによるメリットも勿論あるが…。今回は悪いほうに出ちまった。

相手は技術を奪いに軍の研究所に襲撃してくるだろうが…あいにく警備は堅い。

だからミシェル家の令嬢を人質にしてくる可能性も十分ありうる。」

「それで…護衛ミッション…。」

「ああ、私も断りたかったが…よりにもよってからの命令だ。断れるわけが無い。シャーロット、24時間以内に隊員全員にこのことをしらせて装備を整えろ!明日の6時に城門前だ!急げ!」




「…なんてことだ…それは本当にまずいぞ!」

ノアがいつもとなく、焦った表情をしている。

「あなたなら余裕じゃないの?」

「ガーロは技術はそれほどだけど、魔法がかなり発達してる。そこから送られてくるスパイなら…確実に腕利きだろう…。」

「!」

このミッション…かなりやばいのでは!


「ノア!あんた本当に何したの!?」

「大したことはして無いよ!ただ…」

「ただ?」

「魔力を充填した弾丸を撃てるリボルバーを開発した。」

…わーお。




「最近したことですか?…ああ、パトロール中にカフェに入って一息ついてたら指名手配中の強盗団を見かけたので昼食のついでに捕らえました。」

「ちょっと!私のことも忘れないでよ!」

「すみません…シェリー一士もいました…。」

「私の後付け感!」

私は開いている作戦室を借り、そこに隊員であるノア、コリン君、ティファニーちゃん、そしてシェリーを呼び集めた。

「つまり…ノアはトンデモ兵器を作って…コリン君とシェリーはA級指名手配を捕らえて…ティファニーちゃんは?」

「あ、あはは…ちょっと恥ずかしいんですけど…酒場で一人飲んでたら…ごつい男の人が私の隣に座って胸を触ってきたので…酔った勢いでボコボコにしたら…ギャングの親玉の右腕でして…はは、頭痛い。」

ああ、だから青い顔してるのね…二日酔いか…。ティファニーちゃん酒乱なのね。


(ジャルニ国では飲酒は16歳から可能だが、飲める量に制限があり、制限以上を販売した場合、店と購入者が罰せられる。22歳から無制限になる。

なお、たぶんティファニーは嘘をついて制限以上を飲んでいる。)


「なるほど…ティファニーちゃんはギャングの右腕を逮捕…そらこんなミッション任されるわ!」

ミッションのことは最初に全て話した。コリン君は真剣な表情で聞いてたけど、他の二人は…。

「何?それの何処がまずいの?」

「シェリー!話を聞け!」

あと私上官!


「ガーナだかボーロだかって所から送られたスパイをぶちのめすだけでしょ?」

「あのね…あなたなら出来るかもしれないけど今回は護衛対象もいるのよ!」

「めんどくせえ~。」

ハンク一正…こんなのを妹に持って…大変だろうな…。


「ただ…今回は私たちだけじゃなく先輩方との合同任務だから…少しは安心できるけど油断は禁物よ。それにシェリー!」

「?なによ?」

「その言葉遣い直さないと…に…これ以上は野暮ね。」

それと同時にティファニーちゃんとコリン君が真っ青な顔になるのが見えた。

そうだよね…あの人、魔法部と工作部の人だもんね。


「あ、あの…一応聞きたいことが…先輩方って具体的に誰ですか?」

ティファニーちゃんが恐る恐る聞いてきた。

「えーと…ジェシー二正と、ハンク一正と…メイソン一正ね…。」

…自分で言ってても足の震えが止まらないわね…。


「コリン君の心拍数に異常が見られるね。」

「あの金髪ロリも精神状態が不安定よ。」

ノアとシェリーが私達をみながら会話をしていた…おかしいのはお前らだからな!


「だ、大丈夫よ二人とも…。ティファニーちゃん…コリン君…?」

あれ?コリン君、どこ行った?




大体同じ時間の軍のカフェテリアにて


大体この時間にあいつはカフェテリアで昼食をとる。

…いたいた左目に黒い眼帯に暗めの青い長髪。あいつだ。

あいつは近づいく俺に何の反応も示さず、俺が同じテーブルの席に座っても澄ましたで紅茶を飲んでいる。


、新しい任務だ。貴族令嬢の護衛だ。俺も参加する。司令部からの命令だから拒否はできないぞ。しかも護衛対象はミシェル家だ。」

「あら、貴族出身の坊ちゃんにできるかしらね。ハンク。」

…相変わらず嫌味な奴だ。


「…言わせて貰うがこれでも一正だ。能力はあるぞ。」

「ふん…貴族出の一正と実力の一正はだいぶ違うものよ。」

「…そうか…確かにあるだろうな…。」

実際、貴族出身は出世スピードが速いと聞いたことがある。なので俺は…自分の実力に自身を持てずにいる。

方やこいつは普通の家の出で、俺と全く同い年。彼女の方が半年生まれが早いので今は一つ差があるが、同期入隊で全く同じスピードで俺に追い抜かれることなく、出世してきた。もしこいつが貴族出身なら…もう追い抜かれていただろう。


「分かればいいわよ。」

片方だけの緑の目で、メイソンはじっと俺を見つめ、ニヤニヤと笑っている。

…普段はなるべく感情を表に出そうとしない努力をしてる俺だが…こいつと妹には…もう言葉に出来ない感情を抱くことがある。


「全てをそこに全振りしてればな!喪女!」

この言葉を言った瞬間、メイソンは凍りついた。そして、普段のクールな表情はどんどん剥がれ、顔を真っ赤にした。そして…ゆっくりと眼帯を外した。

「…殺されたいようね。」

露わになった赤い右目にはが描かれている。

あ…判断間違えた。いくら腹が立ったからとはいえ、感情に動かされるべきではなかった。彼女が眼帯外した時は戦闘時か…ぶち切れてるときだけだ。


彼女の右目の六芒星中にある六角形に

「私の目を…良く見なさい…。」

メイソンが俺の頬のあたりを両手の手のひらでがっつりホールドし、俺が彼女の目を見ないようにすることを出来なくした。

傍から見たら俺が今にもメイソンにキスされるような状況に見えるかもしれないが、俺は正直言って彼女に思いっきり怯えていた。


…これダメだわ…。またやっちまった。こんな事、軍に入ってから何百回もやってるのに…俺、バカだな…。





「今日はメロンパンの日だったな…。」

毎週金曜日のカフェテリアのパンはメロンパンの日だ。

そんな時は普段一緒にいろとハンク一正に言われているティファニーさんから離れて、カフェテリアで一人ランチタイムを過ごす。


それにしてもやっぱり変だよね…僕はまだ一年目の臨時隊員に過ぎないのに、一部の人は僕に一正を使うし、ティファニーさんも「あなたを守るのが仕事です!」とか始めてあった時に言ってたし…なんでだろう?


「…やめたやめた。答えなんて出無いんだから。」

カフェテリアに入ると…あれ?目の錯覚かな?

ガスマスクをつけたハンク一正を引きずっていくメイソン一正を見た。

ハンク一正の顔に被さっているガスマスクは誰かが無理やり被せたようで、おかしな方向を向いていた。

「!」

メイソン一正が僕の方に気づいた。こういう時は…気の聞いたコメントを…。


「あ、あーお二人は…なるほど…はいはい…お似合いなんじゃないでしょうか…。」

だーもう!上手く話せない!

「コリン…。」

「な、なんでしょうか。」

メイソン一正が僕に顔をずいっと近づけた。…心臓に悪いよお。

「お前はここでなにも見なかった。分かるな?」

「はっ、はい。」

「そうだ、何も見なかった。」

そういうとメイソン一正はハンク一正を引きずっていった。


怖かったよおおおお!眼帯外してたのもおおおお!

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